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「将来がんになるかも」子どもに絶望感  進学、就職地元離れる

(2012年3月5日午前10時00分)

拡大 福島大の三浦教授らが開いた支援イベントに参加する浪江町の児童生徒。子どもたちの心の陰はなくならないという=福島市の福島大 福島大の三浦教授らが開いた支援イベントに参加する浪江町の児童生徒。子どもたちの心の陰はなくならないという=福島市の福島大


 「放射能でどうせ死んじゃうから、勉強しない」。昨年11月〜今年1月に福島大の三浦浩喜教授(51)らのグループが福島県の教員に行った調査報告書に、ある小学生男児から出た衝撃的な言葉が記されていた。

 「福島第1原発事故で子どもの多くが絶望感に包まれている」と同教授。学生らとともに、被災した児童らの支援活動に精力的に取り組んでいるものの、子どもの心の「陰」はなくならないという。

 浪江町から福島市に移り住み、2月に福島大で開かれた支援イベントに参加した中学1年の青田望さん(13)は「将来、甲状腺がんや白血病になっちゃうかも。普通の人生を過ごせたらいいけど…」。努めて笑顔で話してはいるが、憂いは消えない。

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 1〜3期に分けて入試を行う福島県の県立高。福島第1原発事故で、元の校舎で授業ができなくなり、中通りなどで授業を続ける浜通り6市町村の8校12学科のうち、新年度入試で募集定員に達したのは1学科のみ。残りは大幅に定員割れした。原発事故で嶺北に避難した嶺南の高校が定員割れしたようなものだ。

 8校のうち浪江高(浪江町)の1、2期の志願者数はそれぞれ2、4人。「3期も多分数えるほど。浪江に子どもはいないし、元の校舎にいつ戻れるか分からない。廃校の議論は避けられない」と山崎雅弘教頭(50)は話す。

 二本松市で廃校の小学校舎を間借りしている浪江中の生徒は現在51人。新年度の入学予定者はわずか6人で、このままだと400人だった事故前の生徒は、3年後に20人になってしまう。

 同町から福島市に避難し、市内の中学校に通う1年の松本晃太君(13)は「新しい友人ができたし、元の友達もみんな福島市にずっと住むと言っている。僕も浪江に戻らず福島市の高校に行く」。

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 卒業生200人中、東京電力に約15人、協力会社にも約20人が毎年就職していた小高(おだか)工高(南相馬市)。伊藤裕隆校長(60)が「40歳で今の私の年収を超す」と話す就職の“花形”、東電の求人は本年度なくなった。地元企業の求人も激減し、7割が県内就職、3割が進学か県外就職という比率は逆転した。

 東電が建設したJヴィレッジのサッカークラブに所属し、東電を目指していた電気科2年の深谷一文君(17)は事故後に進路変更を決め、卒業後は上京する。同じ電気科2年の高野桜さん(17)は「福島というだけでイメージが悪い。卒業後は県外に出る」。

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 郡山市に昨年12月オープンした屋内遊戯施設「ペップキッズこおりやま」。ブランコや砂場などの設備が整い子どもたちが夢中で遊ぶ。震災後、こうした施設がいわき、福島市にもオープンし、どこも連日盛況だ。

 学校の除染などで、郡山市の放射線量は事故直後から下がり、毎時0・6マイクロシーベルト前後。屋外活動制限も緩和されている。しかし「国がいくら安全といっても、保護者の安心にはつながらない」と同市教委。市内の主婦(40)は「子どもを外で遊ばせないし、テレビばっかり見ている」。長女(7)の体重は25キロから33キロに増えた。

 体力低下、色白、平衡感覚の低下に伴う転倒の増加、運動不足による肥満、ストレス性食欲不振による体重の激減…。福島大の森知高教授(63)が耳にする震災後の子どもの体力や健康の状況は深刻だ。教授は常に自問自答している。「外で遊ばせるリスクもあるが、外で遊ばせないリスクもある。どうすればいいのか。いつまで続くのか」(重森昭博)

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