つながる:ソーシャルメディアと記者 「共に考える」活動支え=石戸諭
毎日新聞 2012年04月28日 東京朝刊
ソーシャルメディアの面白さは出会いのハードルを下げることにある。つながりが目に見えるようになり、インターネットから現実の生活に直接影響を与える動きが活発になっている。
私が特に注目しているのは、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故に向き合う福島県での取り組みだ。科学者と地域住民が協力し合い、放射能汚染後の生活をどう再建していくかを考える「エートス」という活動が、同県いわき市などで始まっている。活動を支えるのが、ツイッターだ。
エートス発足のきっかけとなったのは、地域で林業や畜産業を営む人ら約25人が集まって開いた学習会。その活動を、参加者が発信するツイッターで知った京都女子大の水野義之教授(核物理学)が講師として参加、協力を続けている。学習会では「家庭菜園のものを食べていいのか」「肉牛が出荷制限を受けた。防ぐ方法はないのか」といった生活に根ざした率直な質問がぶつけられた。水野さんは周辺の放射線量やその数値の読み解き方を話し、最後は住民に決定をゆだねた。