問題はただ一つ、野田が衆院解散・総選挙に同意するかどうかにかかっている。自民党内では森喜朗元首相や大島理森副総裁ら長老組が、解散の約束と引き換えに増税に賛成する「話し合い解散」を模索している。これは財務省にとって、頼りになる援軍である。
だから、財務省にとっては自民党の「話し合い解散勢力」と呼吸を合わせて、野田に解散を約束させられるかどうかが最大の獲得目標になる。野田が解散さえ決断すれば、自民党の賛成をとりつけ、民主党内の小沢グループその他が造反しようと、衆院も参院も可決し法案成立を展望できる。逆に言えば、それでも可決できないようなら、初めから増税は無理という話である。
いまの政局の基本構図はここだ。財務省が野田を羽交い絞めして、話し合い解散に同意させられるかどうかである。
与野党ともに役者が不足
民主党内はどうか。
確かな筋によれば、民主党側で大島のカウンターパートになっている1人は、岡田だそうだ。これを聞いて、私は「この話はまとまらない」と思った。およそ総理の解散権をしばる「話し合い解散」ほど、したたかな政治的手腕を必要とする話はない。正直に表に出していい話といけない話を使い分け、ときには平気で嘘もつく。それくらいでなければ、まとまるはずがない。
岡田はあまりに正直だ。政治家として率直であり、原理原則に基づく考えも大事にする。だが「言っている話は正しいのだが、いまなぜこのタイミングで言うのか」と思う例が多々ある。最新の例は、先のコラムで書いた最低保障年金の棚上げ話である。
外相時代には、沖縄・普天間米軍飛行場の移転をめぐって早々と嘉手納基地への統合案を持ち出し結局、断念に追い込まれた例もある。辺野古移転が難航し、いままた米国側で嘉手納統合案が浮上しているのだから、岡田の先見性が評価されてもいい。だが、いかんせん、話を出すのが早すぎた。
そんな岡田が最高難度の政治的アクロバットである「話し合い解散」をまとめられるかどうか。岡田に代わって自民党との交渉相手が務まる人材がいるかといえば、それも見当たらない。前原誠司政調会長? あるいは仙谷由人政調会長代行? 野田がもっとも信頼する岡田を外してだれかが話をまとめようとしても、野田が話を信用するかという問題もある。
自民党側にも似たような問題がある。谷垣がもっとも信頼する相手は川崎二郎元厚生労働相や田野瀬良太郎幹事長代行といわれている。大島とは若干の距離があるようだ。
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