解説:配慮欠く訴訟指揮
2012年04月28日
福岡地裁久留米支部は、暴力団におびえるがゆえに訴訟を起こした住民に、別室からモニターを通して証言する「ビデオリンク」を採用せず、暴力団幹部の目の前で尋問させた。裁判は公開が原則だが、審理に支障がないことを前提に十分な検討をしたのか、裁判所の姿勢に疑問が残る。
ビデオリンクが民事裁判に本格導入されたのは08年。「圧迫を受け精神の平穏を著しく害される恐れがあると認める場合」などに認められる。犯罪被害者が法廷で加害者と顔を合わせずに証言できるなど、当事者の心理的負担を減らすメリットがある。
過去には鹿児島市や静岡県で暴力団追放運動に関わる住民らが襲撃されている。今回のような暴力団事務所の使用差し止め訴訟は和解決着することが多く、ビデオリンクの採否が問題になったケースは少ない。それだけに、暴力団員の前で尋問に答える審理方法が定着すれば、今後提訴に(躊躇ちゅうちょ)する人が増える可能性がある。