2012-04-27 日本が5兆円をこう使えば欧州危機は去るだろう、という策
前回のエントリーで、欧州危機にIMF基金を介して日本がお金を出したことについて書いた時、「欧州危機に使い道のない米国債などを充てるのなら、良いもしくは仕方がないのでは。」というご意見を頂きました。*1
筆者も危機が発生している状態(つまり火事)になれば、IMFに資金貢献する(火消しに水を使う)のも仕方がないだろうという認識はあります。
ただ、これが最善手か、といえばそこには賛成しかねています。
思いつくまま、IMFへの出資案よりも効果がありそうな案をふたつ書いてみます。
1.火種への直接消火案
まず危機の発端となったギリシャについて考えれば、「三題噺 欧州危機・アメリカ合衆国独立・日本のデフレ」にも書きましたように、右図表が示す通り、2011年10月時点でギリシャの経済規模はGDP約25兆円・債務総額30兆円と、埼玉県と愛知県の間程度の国の危機であるのに、ギリシャ危機により株式市場だけで776兆円の経済損失が発生していました。
その後、イタリア・ポルトガルなどいわゆるPIIGS諸国全体が危機に巻き込まれ現在に至っています。
イタリア・ポルトガルはギリシャに比べて債務状態はまだ健全ですので、これほど迅速に5兆円のマネーを出せるのなら、IMFにではなく、ギリシャに5兆円(債務総額の2割弱)のマネーを出したのなら、今ほど欧州危機は拡大していなかったでしょう。
更に言えばギリシャの債務損失発生は日本が保証する、と言えば完全に危機は去ったでしょう。
その債務保証額を投資とみればこれによる日本市場への好影響だけで債務保証は十分ペイしたと思います。 ただなぜ日本がそこまでギリシャに肩入れする必要があるのか、と問われれば、返答のしようがありませんけれど。
2.欧州統合促進案
上記1案では、当面の危機は回避されそうです。ただ、本質的問題は残ってしまいます。
欧州問題の本質は、例えば野村アセットマネジメントのウェブサイトの解説記事にも書かれているように、「国際金融のトリレンマ」問題なんですね。
どういうことかといえば、一般に、自由な金融政策を採っている国々で、資本移動も自由であれば、固定相場制は維持できない、ということです。 例えば1997年ころのアメリカとタイなどのアジア諸国は共に自由な金融政策を採っていました。勿論資本移動は自由です。そこにアジア諸国がドルペッグ制を採っていたため、アジア通貨危機が発生しています。
その後ドルペッグ制を止めたことで危機は去りました。 アルゼンチンも、ペソの減価・インフレを防ぐためにドルペッグをしていた結果、アルゼンチン通貨危機が発生しています。そしてドルペッグを止めて危機を脱しています。*2
要するにEU諸国は現在の枠組みそのものが国際金融のトリレンマを引き寄せる枠組みとなっている、ということです。
そこに日本が5兆円の資金で、危機脱出にどう貢献すべきでしょうか。
筆者は、日本政府が「EUの安定化のために、EU各国政府は独自の金融政策を放棄し、EU中央政府に一本化しませんか。EUが金融政策一本化をするならば、各国の金融関連組織の職員の退職金として日本は5兆円を拠出する用意があります。」と提案したらいいのでは、と思います。5兆円といえば、職員ひとりあたり3000万円払っても17万人分です。
欧州から見て東の果ての国が、欧州全体を考えて、17万人の政府職員に無償で3000万円をプレゼントする用意がある、と言えばその時、日本の世界的プレゼンスは一躍あがり、それと同時に6兆円ものカネをあったこともない17万人にプレゼントできる日本の経済危機などは誰も信じないウソであることが一瞬で世界に理解されるでしょう。
ところで日本。
政府職員が国家経済の障害となっているのは、日本の方が数段上でしょう。
4月4日、財務省の主税局長が、参議院予算委員会での答弁で、「消費税導入で税収は増えるか減るか」と問われ、「減ります」と即答していました。 国内では財政破綻・年金危機を避けるため消費税導入を叫ぶ「財務省」とは財務省全体ではなく主計局なのだということが浮き彫りになりました。
税収を減らしてでも消費税を導入したり、約5兆円でIMFにOBの椅子をねだったり…。
日本でも、1000億円をポンと出して日本を滅びに導く主計局職員などの1000人に1億円の退職金をプレゼントし、二度と国政をかき回さないようにすれば、その1000億円の投資効果はどれほど大きいかわかりません。
西田昌司「参議院予算委員会 質問 2012.4.4
自民党西田昌司議員が財務省主計局長に「消費税増税で税収は?」と尋ね、財務省主計局長が「減ります」と答えるのはビデオ46分目付近です。
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