中国が要求してくる限り参拝中止という選択はない
アーミテージ氏はさらに以下のようなことも語った。
「ブッシュ大統領が『日中関係は単なる神社への参拝よりもずっと複雑だ』と言明したように、日本側がたとえ首相の参拝中止を言明したところで日中関係は緊迫がなくなりはしない。中国は靖国を日本への圧力の手段として使っているため、日本が靖国で譲歩しても、必ずまた別の難題を持ち出し、非難の口実にしてくるだろう。現に小泉首相は前回の参拝では私人であることを強調して、中国側への譲歩を示したが、中国側はその譲歩をまったく認めなかった」。
「米国社会では殺人者でもキリスト教などの教えに従い、埋葬され、追悼される。同様に日本でもA級戦犯の死後の扱いを一般戦死者と同じにしても、いちがいに糾弾はできない。死者の価値判断は現世の人間には簡単に下せないだろう。いずれにしても日本人の祖先、とくに戦没者をどう追悼するかは日本自身が決めることだ。中国も米国も日本の首相に靖国参拝中止の指示や要求をするべきではない。とくに日中両国間では、民主的に選出された一国の政府の長が、中国のような非民主的な国からの圧力に屈し、頭を下げるようなことがあってはならない」。
「小泉首相には中国から靖国参拝反対の要求をぶつけられている限り、その要求に従って参拝をやめるという選択はなくなってしまう。そのような要求に屈するべきではない。中国は日本の現首相、次期首相の参拝中止が言明されなければ、日本との首脳会談に応じないと一方的に宣言して、自らを袋小路に追い込んでしまった。日中関係に対して米国はそもそも中立の立場にはない。日本は民主主義の価値観を共有する同盟相手であるのに対し、中国はそうではないからだ」。
いまのワシントンの有力者たちの間でも、日本へのきずながもっとも強いアーミテージ氏がこうして明言する靖国問題への見解は、日本側にとっても、きわめて心強い内容だといえよう。
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