読売-4月27日付 編集手帳

27th
4月
2012

読売-4月27日付 編集手帳

posted by 今日のコラム

4月27日付 編集手帳

 白はめでたいしるし、(ずい)(しょう)とされる。奈良時代には白いキジが献上されたのを喜び、「白雉(はくち)」と年号を改めた例もある.

キジがめでたいのだから白いカラスも…と思えば案外で、江戸期の随筆集『甲子夜話(かっしやわ)』によると〈城、枯らす〉で忌み嫌う武家もあったという。白ければ万々歳、でもないらしい.

こちらの「白」はさて、瑞祥か、凶兆か。元秘書のひな鳥三羽ガラスはすでに有罪の黒判定を受けているが、親鳥は白の判定である。政治資金規正法違反に問われた民主党の小沢一郎元代表に、東京地裁で無罪が言い渡された.

感激に水を差すつもりはさらさらないが、小沢氏はこれまでただの一度も国会の場で疑惑の釈明をしていない。国会は政治家の神聖な「城」だろう。疑惑には、刀と(よろい)の代わりに弁舌をもって身の潔白を証し立てる“問答有用”の伝統がある。「問答無用。法廷がすべて」式の前例が国会の自浄能力を損ない、〈城、枯らす〉懸念は拭えない.

復権の足場を得た小沢氏は、国会に紅白の幕でも飾りたい心境だろう。死語になりゆく「政治的・道義的責任」を弔うには、白と黒の鯨幕が似合う。

(2012年4月27日01時43分  読売新聞)
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