社説:小沢元代表無罪 なお政治的責任は重い
毎日新聞 2012年04月27日 02時30分
注目したいのは、判決が元代表に対して厳しい目を向けていることだ。元代表は法廷で、「報告・了承」があったことを全面的に否認した。だが、判決はこうした主張の核心部分を否定した。
元代表の法廷発言に変遷があるとして、信頼性にも疑問を投げかけた。4億円の融資書類にサインした経緯を述べた法廷発言は「不自然」とし、「報告書は一度も見ていない」との発言についても、およそ信用できないとした。
元代表は、政治資金の処理について「一切、秘書の自主判断でやってもらっていた」と法廷で発言した。秘書任せにしたことで、虚偽記載に至る具体的な事情が耳に入ることがなく、かえって刑事責任を問われずに済んだ。判決はそういった事情も書きこんだ。
だが、秘書らを監督する政治家としての責任は別だ。石川被告ら元秘書3人は昨年、東京地裁で有罪判決を受け、控訴している。今回、判決が再度、元秘書らによる報告書の虚偽記載を認定した事実は重い。元代表の道義的責任は一層、強まったといえる。
元代表は裁判を理由に国会での説明を回避してきた。指定弁護士が控訴すれば裁判は高裁に舞台を移す。だが、1審判決を機に説明責任を果たすよう改めて求めたい。
判決は、「報告・了承」など、元代表の虚偽記載への関与を一定程度認定した。4億円の出所の説明も法廷でさらに一部が変遷した。反論があれば堂々とすべきだ。