- 2012-02-06 (月) 20:16
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女性との”面談”を終えたわたしの胸には
相変わらずもやもやとしたものが燻っていた。
女性が経験してきた部落差別の厳しさは聞いたが、
わたしの講演のどこに、
その女性と息子であるという男性がひっかかったのかは教えてもらえなかった。
女性から渡された半紙に書かれていた「耳に痛い言葉」から逃げる気はない。
しかし具体的に言われなければわからない。
女性とは11月に再会する約束をした。
「今度はわたしが大阪に出るから、社納さんの仕事場を見せてね」と何度も言われた。
わたしは借りた冊子を読み、何となく心のなかで再会の準備をしていた。
その一方で、前回とは違い、気が重かったのも事実である。
「対話」が成り立っていないと感じていた。
11月に入り、大切な冊子を借りていることが気になってきた。
そろそろ連絡をとろうと思っていた矢先の11月5日、
夜遅く帰宅すると、留守番電話に女性からのメッセージが残っていた。
「本を送り返してほしい」と。
話が違うので驚いたが、
翌日、一筆添え、速達で女性の自宅に送った。
女性のほうが強く再会を望んでいたのに、どうしたんだろう。
もやもやは大きくなる一方だった。
考えた末に、自分の話した内容を確認しようと思った。
もっと早くにすべきだったと思うが、
なにしろ自分をさらけ出し過ぎて、聞き返すのがつらかったのだ。
11月9日、亀岡市教育委員会人権教育課に電話をかけた。
呼び出してもらった課長にあいさつをし、
講演のデータが必要になったが自分では録音していなかった、
録音をしていたら貸してほしいと伝えた。
すると課長は妙なことを言い始めた。
「あ、わたし共もちょうど社納さんにご連絡しようと思ってたところなんです。
実は関係機関から社納さんの講演に問題があると指摘がありまして、
ちょうど昨日、会議をもったところなんです。
本当に、ちょうど今、ご連絡するところでした。
お忙しいところ申し訳ないんですが、
一度こちらに来ていただいて、お話をさせてください」
驚いた。
このひとは何を言ってるんだ?
混乱しながら、「関係機関」という言葉にひっかかった。
「あの、関係機関とおっしゃいましたが、
具体的にはどちらですか?」と尋ねると、
課長は慌てて言い直した。
「いや、申し訳ありません。
関係機関とは教育委員会のことです。
教育委員会のなかで指摘があったということです。
とにかくですね、一度こちらへ来ていただいて・・」
何が何でも呼び出そうとする意思を感じて、
わたしは課長の言葉を遮った。
「ちょっと待ってください。
わたしの話のどこが問題だと言われているのか、
まずは具体的に教えてください」
すると課長は、
「いや、どこがというよりも、講演では十分に社納さんが
お話ししきれなかった部分もあるかと思うんです。
そこを確認させていただきたいということなんです」と、
具体的なことは一切言わないまま、「話し合い」を求めてくる。
わたしはだんだん腹が立ってきた。
「話し合い話し合いと言われますけど、
具体的にどこが問題なのかも言われずに、どんな話し合いができるんですか。
第一、教育委員会からは講演のあとに正式な礼状と参加者のアンケートも受け取っています。
わたしが伝えたかったことをきちんと受け止めてくださったことがわかる内容でしたし、
わたしは礼状を受け取った時点で教育委員会との仕事は終わったものと受け止めています」
怒りを必死で抑えながら、そう伝えると
課長は鼻先でフンと一笑し、
「礼状は確かに送りましたが、
社納さんのようなお仕事をされている方は
礼状を受け取ったから終わりというものではないんじゃないですか?」
と返してきた。
講演をした日、和やかに談笑した人とは思えない。
居丈高な物言いで、およそ筋の通らないことをごり押ししようとしていた。
つづく。
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