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セル生産方式とは |
1-1. セル生産方式の位置づけセル生産方式の位置づけ |
生産工程をどのように設計するかという問題は、今日のグローバル経済において生き残っていくための重要な要素となっている。この生産工程のタイプは、主に次の4つに分類される。 ライン生産方式 ロット生産方式 セル生産方式 ジョブショップ生産方式 この4つのタイプの生産方式から、どのタイプの生産方式を採用するかという選択は、製品の品種数及び生産量に強い影響を受ける。その関係を図1.1に示す。 |
1-2. セル生産方式の概要 |
セル生産方式は、1940年代後半にソビエト連邦のMitrofanofとSokolovskiiによって提案されたのがその始まりとされている。そして第2次世界大戦後、東ヨーロッパ、西ヨーロッパ、インド、香港、日本そしてアメリカなどに伝わり、研究されるようになった。前述したように、このセル生産方式の基本的な考え方はGT(Group Technology)の概念に基づいており、工程系列をグーピングファクターにし、部品及びマシンをいくつかのセルに分類しする生産する方式である。このセル生産方式の導入は、自律分散型のシステムを構築することを目的としているため、結果としてそのシステムの自動化及び管理が非常に単純化される。これによりセル生産方式はシステム全体に対し以下に述べる効果を引き起こすことになる。 1996年、Wemmerlovらにより、セル生産方式を適用している249の工場に対してアンケートが行われた。有効回答数は46。主にジョブショップ生産方式からセル生産方式に切り替えた工場を対象としており、取り扱う製品は、ステンレス製台所器具、金庫、小物の革製品、ケーブル,ホースの運搬器具、医療診断器具、アルミニウム製回転ドア、空気清浄器、計算機など多種に渡る。生産管理者がセル生産方式を導入した理由について、表1.1に示す。各項目ごとに、その重要度を1から5までの点数化を行いその平均を取った。1が最も軽視しており、5が重要視しているということである。表に示すのは、その値が3を超えたものについてである。
セル生産方式適用後の成果を表1.2に示す。回答数は平均で38、数値による回答はその6割である。
参考文献: U. Wemmerlov and D. J. Johnson, 1997, "Cellular manufacturing at 46 user plants; implementation experiences and performance improvements", International Journal of Production Research, Vol.35, No.1, pp.29-49. |
1-3. ジョブショップ生産方式との対比 |
セル生産方式は、ジョブショップ生産方式の切替えで考えられる。図1.3にジョブショップ生産方式から、セル生産方式への切替えのイメージを示す。 |
ジョブショップ生産方式と、セル生産方式の違いを示すため、ジョブショップ生産方式について解説する。 ジョブショップ生産方式は、多品種少量生産において最も一般的な形態である。ショップ全体として、各製品の工程順序に合わせた機械は位置を一定に統一できない場合である。そこで、機械を機能中心に配置し、異なる工程順を持つ製品が、同一の機械を共有する。従って、各作業に際して製品ごとの段取り作業が発生し易く、それだけ機械の正味生産時間の割合が減少して、生産性が極めて低いのが問題である。また、ものの流れが錯綜していることから、一台の機械での作業の遅速の影響が及ぶ機械がその都度異なるため、管理が困難で、その結果恒に仕掛かり作業を多めに持たざるをえない。仕掛かりが多くなれば、更に管理の精度が落ちるという悪循環に陥り、製造期間(各製品のショップないていたい時間)も長くなる。しかし、品種の多様化に対しては最もフレキシビリティに飛んだ形態であり、最小の機械台数により構成することができる。 引用:長谷川幸男著 「多品種少量生産システム」s59.6.30 日刊工業新聞社 |
1-4. 部品の外注化と複製化 |
セル形成の際、完全に独立なセルを作るのは難しい。例えば図1.4の様に、部品、あるいはマシンが完全にセルに分けられればよいが、実際には完全なセルを形成できることはまれである。 |
図1.4 完全に独立なセル
セルの形成を助けるため、"部品の外注化"や"マシンの複製化"を行うことがある。部品の外注化とは、ある部品が1つのセル内で加工されずに複数のセル間を渡り歩き、セルの独立を妨げるため、その部品そのものを外注化し、その工場内生産をしないことをいう。部品の外注化を行うと、同一企業内の別工場かあるいは外部の企業に依頼するためコストが発生する。そのため、セル間を渡り歩く全ての部品を外注化するのではなく、"セルの独立性"と"外注化コスト"のトレードオフを考慮しどの部品を外注化するのか決定しなければならない。なお、同一セル内で全ての加工が行えない(セル間を渡り歩かなければならない)部品のことを"ボトルネックパーツ"と呼ぶ。
図1.5 部品の外注化例 図1.5は外注化が行われる例である。今、12台のマシンと15の部品のセルフォーメーション(部品及びマシンをグルーピングしセルを形成すること、以下CF)を行った結果、部品10に関しては、セル間を3度渡り歩かなければならなくなる。このボトルネックパーツを外注化することにより、完全に独立なセルを形成することが出来る。 マシンの複製化とは、あるマシンを"Duplicate"すること、つまり工場内で作成するか新規に発注を行い同じマシンを作る。例えば図1.6のようなCFであると、セル1に割当てられた部品4と部品6は、マシンV1を利用するためセル2を一度訪れる。この際往復で2度のセル間運搬が発生する。しかしながら、V1を複製化、つまり同じ物を購入しセル1に割り当てることをすれば、部品4と部品6はセル間を渡り歩く必要がなく、完全に独立なセルが形成される。この場合も、外注化と同様、複製化コストとセルの独立性の兼ね合いを見て複製化をしなければならない。
なお、あるマシンが、別のセルに割り当てられた部品から加工要求を受ける場合"ボトルネックマシン"と呼ばれる。図1.6の場合、V1がボトルネックマシンとなるが、同時に部品4、部品6もボトルネックパーツとなる。 |