[東京 25日 ロイター] 証券取引等監視委員会が25日、野村ホールディングス<8604.T>傘下の野村証券に対し、特定の分野に重点を置いた「特別検査」に入った。複数の関係筋によれば、監視委は野村社内で企業の増資情報などの管理体制が適切かどうかを詳細に点検する。
監視委は証券会社に対し、定期的に業務全体の適切性などを見る一般検査を実施している。「特別検査」では、業務運営の中で必要と認めた部分を重点的に点検する。
関係筋によると、監視委は今回の特別検査を通じ、野村社内の情報管理体制が適切かどうかなどを重点的に点検すると見られる。監視委は、検査に入った金融機関名を日々ホームページに公表しており、野村証券名も25日付で掲載された。同社の一般検査は今春に終えたばかりで、その終了から短期間で再び検査に入るのは異例のことになる。
証券会社をめぐっては、企業による増資計画などの情報を不適切に扱う事例が相次いで発覚している。
監視委は3月21日、旧中央三井アセット信託銀行の運用担当者による国際石油開発帝石(INPEX)<1605.T>株式のインサイダー取引で、同社に対する課徴金納付命令を行うよう金融庁に勧告した。この事案では、野村証券の関係者が中央三井に情報を伝達したことが明らかになっている。監視委は野村証券に対し任意の調査を続けていたが、得られる情報が不十分とみて特別検査に乗り出したとみられる。
これまでに監視委は、INPEXの他に、日本板硝子<5202.T>や東京電力<9501.T>などの公募増資でも市場で不適切に情報が取り扱われた形跡があったと指摘しており「別の事案で嫌疑が固まれば(処分の)アクションをとるかもしれない。この事案で終わりではなく調査を継続する」(監視委幹部)と述べていた。
野村ホールディングスの広報担当者は「検査には全面的に協力していく」とコメントした。
証券会社の情報管理をめぐっては金融庁が4月20日、SMBC日興証券の複数の役員を含む営業担当者が親銀行の増資情報を一部の投資家に公表前に伝達して新株購入などの勧誘をしたとして、内部管理体制の整備などを求める業務改善命令の行政処分を出した。
(ロイターニュース 平田紀之、ネイサン・レイン、取材協力:江本恵美、編集:石田仁志)
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