解説:原発の活断層問題とは
福井県にある敦賀原子力発電所の地下を走る亀裂が活断層の可能性があると専門家が指摘し、日本原子力発電は、改めて現地調査を行うなどして対応を検討することになりました。こうした原発周辺の活断層に関する評価の見直しは全国8つの原発で進められていて、専門家は「安全か危険かが分からないときは、「危険だ」と思って調査や評価をするべきだ」と提言しています。
■原発の近くに活断層?
「地下を走る亀裂が活断層の可能性がある」
専門家の指摘に地元・敦賀市の人たちからは、「福島のことがあったんで、怖いと思います。きちんと調べて対応してほしい」「調べて何もなければそれが一番こしたことはないと思う」といった不安の声が聞かれました。
また、敦賀原発の活断層の問題について、大阪市の橋下市長は、「もともとの調査では、『大丈夫だ』と判断したのだろうが、人間のやることなので一度やったことが未来永劫、絶対に間違いがないということはあり得ないので、間違ったら変えればいいと思う。もし活断層があるのだったら、敦賀原発を廃炉にするかどうかというレベルの問題になると思う」と述べました。
日本原子力発電の敦賀原発ではきのう、活断層の専門家や原子力安全・保安院の担当者らが敷地内の地層が露出している地点を調査し、地中にある「破砕帯」と呼ばれる亀裂の状態を調べました。
その結果、原発の地下を走る亀裂のひとつが活断層の可能性があることが明らかになりました。
それが2号機から西に150メートルほど離れた地中を走る亀裂です。専門家は「亀裂は活断層の可能性があり、敷地内を走る浦底(うらそこ)断層という活断層と連動して地震の揺れが想定より大きくなる可能性がある」と指摘しました。
原子力安全・保安院の専門家会議のメンバーで、敦賀原発の敷地を調査した京都大学地震予知研究センターの遠田晋次准教授は、「浦底断層の動きに伴って、誘発されてずれるという可能性があるということです。それをもう少し詳しくじっくり検討する必要があるのではないか」と指摘しています。
保安院はさらに、2号機の真下を走る別の亀裂についても「活断層の可能性があるかどうか調べる必要がある」として、日本原電に再調査を指示しました。
■運転再開「不可」の可能性も
国の耐震設計の指針では活断層の真上に原発の重要な設備を設置することは認めていません。このため、真下を走る亀裂が活断層だった場合、2号機は運転が再開できなくなる可能性が出てきます。
活断層の問題を指摘してきた地形学が専門の東洋大学の渡辺満久教授は「地下にある小さな亀裂が敦賀原発の近くの浦底断層という大きな活断層と連動する可能性については我々が4年前から指摘してきたことで、保安院や日本原電の対応は遅い」と批判しました。
その上で、破砕帯と呼ばれる亀裂があって岩石が脆くなっている場所に原発が建設されていることについて、渡辺教授は「活動が無ければ周辺の土は固いが、粘土が多く指が土にめり込むほどやわらかい。数万年以内の間に活動を繰り返してきた活断層であることを裏付ける証拠で、地震の振動による危険よりも土地そのものが変形したりずれが生じたりして、原発の施設や設備が壊れる危険性がある」と指摘し、さらに「これまでの原発周辺の活断層の評価は、あまりにもずさんだと言わざるを得ず、敦賀原発以外にも周辺の活断層が正しく評価されていないところは数多くある。東日本大震災以来、地震が各地で頻発していることもあり、いつ地震が起こってもおかしくないという前提で、活断層を正しく評価すべきだ」と話しています。
■「ない」とされた活断層
敦賀原発の1号機の東、250メートルには浦底断層という活断層があります。
実は昭和45年の運転開始当初は国の審査で原発の敷地内に活断層はないと評価されていました。ところがその後の調査で4年前に活断層であることが確認されました。さらに、このとき専門家からこの活断層とこちらにある敷地内の亀裂の一部が連動することで原発の施設に影響する可能性が指摘されました。
しかし日本原子力発電は2年前、「亀裂と活断層が連動することはなく原発の安全性にも影響しない」という評価結果をまとめました。そうした中で東日本大震災をきっかけに、断層の活動が活発になったことから評価の見直しが進められました。
そして2号機の近くにある亀裂については専門家が「活断層の可能性がある」と指摘。2号機の真下を通る亀裂は保安院が活断層の可能性があるかどうか調べる必要があるとしました。日本原電では改めて地層の調査などを行って今後の対応を検討することにしています。
■ほかの原発は大丈夫か
今回の調査を行った保安院の専門家会議では、ほかの原発でも原発周辺の活断層が連動した場合に想定される最大の地震の揺れを見直す必要があるかどうか、議論を行っています。
きょうは石川県の志賀原発と新潟県の柏崎刈羽原発について議論しましたが、対象となっているのは敦賀原発を含め、全国8つの原発に上ります。専門家会議のメンバーで京都大学の遠田晋次准教授は、「学問的にも進歩しているので、新たに『断層』と認めざるを得ないものも出てきている。安全か危険かが分からないときは、『危険だ』と思って調査や評価をするべきだ」と指摘しています。
投稿者:かぶん | 投稿時間:21:27
| カテゴリ:ニュース解説
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