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Chapter2 ~追放と夢~


『おぉ、これは―――』

『あまりに強大すぎる力は災いと争いを招く……』

『お主をこれ以上この里においておく事は出来ぬ……』

『すまぬキャロよ、この里を守る為じゃ……』
 

 キャロがアルザスに帰還してから約一月、竜召喚の儀式を終えた彼女

 に待っていたのは失敗と言う事実ではなく、最高の成功と結果を収めた故

 の里からの追放と言う、悲しい現実だった。


「キュルク~」

「……ありがとうフリード、私は大丈夫だよ」


 悲しみを隠すかのように、黙々と里を出る準備をするキャロに彼女を

 慰めようとしているのか、白い幼竜は心配そうに彼女の周囲を飛び回る。


「……何時かはこの里を出て、旅をする予定だったけど……まさか

 里に戻って二ヶ月もしない内に出る事になっちゃうなんて」


 準備の手を一旦止め、肩にとまったフリードの頭を優しく撫でる。


「強すぎる力は災いと争いを招く……か、確かにそうかもしれないよね」

 思い出されるはあの世界(・・・・)での戦いの事。

 人々に英雄とまで称えられ、強大な力を持ったソルジャーセフィロス。

 そして……彼が起こし、星と人類の生死を賭る事となったメテオ事件。

 あれも、そんな災いと争いの一つなんだと。


「だけど、わたしは―――」 


 その先を言う事は無く、その想いを振り払うかの様に首を振るキャロ。

 
「……フリード、明日里を出ようね。遅くなればもっと辛くなる……」

「キュルクー」


 その決意が揺るがない内に、再び荷物整理に没頭し始めるキャロ。

 その姿はまるで、何かを必死に振り払うかの様だった。

 そして、そんな彼女の様子に幼竜はさっきの様に飛び回る事も

 憚られ、以降は沈黙と荷物整理の音のみが辺りを満たしたまま
 
 ただ時間だけが過ぎていく。
 
 その日、最後となるであろうキャロの家から明かりが消えたのは

 深夜遅くの事だった。


 …………………………

 ………………

 ……… 


 夢を―――見る。


 それは、キャロが旅を始めてしばらくした頃の記憶の夢だろうか?


 とある世界の荒野地帯の一角。

 赤土の険しい峡谷が並び立つ中、その谷の壁面に穴を掘りその中を

 住居とする住民達が暮らす一つの街があった。

 時刻は大体真夜中だろうか、空に散りばめられた無数の星が夜空を

 飾っている。

 そんな中、街の一番頂上にある展望台の一角で一人の女性が

 夜の星空を眺めていた。

 年齢は二十歳前後だろうか、碧色の瞳に茶色の巻き髪。

 そして、ピンク色のロングスカートタイプのワンピースの上に

 赤いジャケットを着ている。

 そんな彼女に、一人の少女の声が掛かった。

 
「……エアリスお姉ちゃん、こんな所でどうしたの?」

「キャロ? まだ寝てなかったの?」


 女性の名をエアリス・ゲインズブール、この世界に迷い込んだキャロを

 保護した女性であり、現在では本当の姉妹の様な関係になっている。 
 

「うん、ちょっと眠れなくて……エアリスお姉ちゃんは?」

「私もよ、明日にはこのコスモキャニオンを出てニブルヘイムに向かうから

 出る前に、此処から見える星空を眺めようと思ったの」


 そう答え、エアリスは再び星空へと視線を戻しキャロはそんなエアリスの

 隣に座って、同じように星空を眺める。  


「綺麗ね、ミッドガルじゃ絶対に見れない星空……」

「本当だぁ……綺麗です」


 夜空に散りばめられた星々の輝きの美しさに魅せられる二人。

 そのまま、しばらく無言で二人は星を眺めて……

 沈黙を破ったのはエアリスだった。


「ねぇ、キャロ」

「なんですか? エアリスお姉ちゃん」


 突然の問い掛けに、キャロは星空から目線を外してエアリスを見る

 が、エアリスは未だ星空に視線を向けたままだった。


「キャロは………どう思う?」

「―――の事、ですか?」

「……うん」

 
 それは、いまだ仲間の誰にも知られていない……教えて貰った

 キャロだけが知っている、エアリスの秘密。


「私は―――」

「―――――」

「―――」


 この時の会話での返事に、キャロは今でも後悔していた。

 だって、もしこの時―――していれば、大切なエアリスお姉ちゃんが


 ―――死なずに済んだかもしれないのだから。


 そんな想いを胸に抱くと同時に、キャロの意識はゆっくりと浮上していった。


 …………………………

 ………………

 ……… 
 

「……………、エアリスお姉ちゃんの……夢……」


 漸く日が昇り始めたという位の早朝、キャロは目を覚ますなり

 無意識にだろう、そんな独り言と共にゆっくりと体を起こした。

 枕元にはフリードが未だ丸まって眠っている。


「……どうして、今にこの夢を見たんだろう」


 そんな少女の呟きに応える者は誰も居ず、少女の声は

 虚空へと吸い込まれていった。   
 
こんばんわ、Chapter2をお届けします。
さて、ようやく次回Chapter3からキャロ(+1匹)の旅が始まります。
でも、しばらくの間はシリアスばっかり続きそうです。キャロ一人だし……
……この調子だと、ホントStS本編に入れるのは当分先になりそうだなぁ。
少し先になりますが、ようやくこのSSでキャロが扱うデバイスの設定が
固まりました!……でも、設定を見る限り、このデバイスは普通のデバイス
マイスターが作れそうなデバイスじゃない気がする……はてさて、どうしよう……

とりあえず、まずは空白期の完走目指して突っ走りますので応援いただけるとうれしいです。

それでは、そろそろお別れを……次回、Chapter3でお会いしましょう。


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