ふとした亀裂と深まる亀裂
その訳を考えていたら、クラピカが帰ってきた。
「大丈夫か?クラピカ」
「あぁ。私に怪我は無い」
「つうか、お前に近づいても大丈夫か?」
なんて言いながら、レオリオが後ろに数歩下がる。
クラピカは溜息を吐きながら、片手で顔を覆った。
「判っていたんだがな。一目みて、たいした使いてではない事位。あの刺青も理性では偽物と判っていた。しかしあの蜘蛛を見た途端、目の前が真っ赤になって…」
必死に言葉を発しようとするクラピカを、訳は判ったと言わんばかりの表情で、レオリオが止めた。
「というか実は、普通の蜘蛛を見かけただけでも、逆上して性格が変わってしまうんだ」
あまりにも吃驚する発言だ。それに言うのが遅いっつーの。
一歩間違えば、蜘蛛を見せていたかも知れない。
危ない危ない。
クラピカは床に座り、壁に寄りかかって言葉の先を続ける。
「しかしそれは、まだ私の中で怒りが失われていないという意味では、寧ろ喜ぶべき事かな」
その後、私達はクラピカに蜘蛛は見せないと肝にめいじた。
―――――
――――
―――
第4戦はレオリオだ。
大丈夫か本当に心配なんだけど。
勝負の為、気絶してまだ倒れているマジタニを片付けろと要求したところ、それは出来ないと拒否された。
まだクラピカとの決着がついていないらしい。
勝負はデスマッチだから、相手が死なないと勝ちではないと言い出すのだ。
今度の敵は女。
屁理屈がお得意ですこと。
レオリオが決着をつけて来いよと言ったが、クラピカはそれを拒否した。
「勝負はもうついていた。あの時、既に戦意を失っていた者を、私は殴ってしまった。これ以上敗者に鞭を打つようなことは御免だ」
「ふざけんなよ!じゃあ一体どうする気だ!向こうは決着がついてないって言ってきてるんだぜ!」
「彼に任せる。彼が目覚めればおのずと答えは出る筈」
予想通りもめる2人のもとに、キルアが向かう。
行くなぁあ!私をここに置いて行くなぁあ!
「ねぇ。あんたが嫌なら、俺が殺ってやるよ」
「はぁ?キルア何言ってんのよ」
「人を殺した事ないんでしょ?…怖いの?」
キルアの問いかけに、あくまでクールに答えるクラピカ。
「殺しを怖い怖くないで考えた事はない」
手出しはするな、という事らしい。
私は最初から手出しするなんて面倒くさい事をつもりなんてないし。
レオリオは多数決でとどめを刺すか刺さないかを決めようと言い、勝手に多数決を始めた。
「とどめをさす方に賛成な人~!」
だが、レオリオ以外に誰も上げなかった。
レオリオは抗議するが、キルアもゴンも、やっぱり反対だった。
「強制はよくないぜ。人それぞれの事情や信念があるからな」
「おめぇの意見なんざ聞いてねぇ」
「おいおい。多数決は皆の意見を聞くもんだろ?」
レオリオはそう言い返され、悔しそうに「くそっ」と言い、勝手にしろ、と端の方に行ってしまった。いじけてるのかしら?
「とりあえずほっとこ」
キルアが言い、私達はそれに従う。
ゴンは体操をして、私はクラピカの隣に座った。
トンパはまた良い事を思いついたのか、にやにやと笑っている。
残り時間が60時間。
私は少し気になる事ができた。ゴンも同じことを考えているのだろう。
ずっとマジタニの方を見ていた。ねぇアイツ。もうとっくに…―――
「どうかしたのか、ゴン」
キルアがゴンに歩み寄る。うん、と呟きマジタニを指差す。
それだけで何が言いたいのか、キルアは判ったようだ。
なるほどね、と呟いてレオリオに言う。
「あのさぁ。もしかしてあいつ、もう死んでるんじゃないの?」
レオリオが寝ていた体を起こし、マジタニを見る。
その他の皆もマジタニを見た。
「随分と時間が経っているのに全然動かないなんて、可笑しいものね」
私がそう言った後、レオリオは近づけるだけ近づいて確認をする。
だが、遠くて良く判らないらしい。
「おい!そいつの生死を確認させてもらおうか!」
そう叫ぶと、あの女が出てきた。
「急になに?」
「気絶どころかとっくに死んでっかもしれねぇからな」
「さっきも言ったでしょう?彼は気絶してるだけよ」
「あれから何時間経ってると思ってるんだ!お前の言葉だけじゃ信用できねぇな!」
レオリオがそう言った後、女が笑った気がした。
あくまで気がしただけだ。
「それじゃ賭けましょうか。彼が生きているか、死んでいるか」
「一体何を賭けるっていうんだ!」
「時間よ」
レオリオと女の勝負は賭けらしい。時間がチップ代わりのギャンブルだ。
「壁のモニターを見て」
モニターには、50と50、と書かれていた。
「お互いが使えるのは50時間ずつ。ただし賭けるのは10時間単位しか使えない。
どちらかの時間が0になるまで賭け続ける。
賭けの問題は交互に出題すること。そっちの時間が0になったらタワー脱出のリミットは50時間短くなる。
私達が負けたら50年懲役が長くなる。この勝負を受けるなら彼の生死を確認させてあげる」
女は一気に説明をすると、勝負を受けるか受けないか聞いてきた。
これは慎重に決めなければならない。
下手をしたら、残り時間が50時間も減るのだから。
それとまったく同じ事をクラピカはレオリオに言った。
そう言われた事に腹を立て、レオリオは「クラピカのせいでこうなった」と言い、クラピカは「もうなにも言わない」と言って、そっぽを向いた。
まさに売り言葉に買い言葉状態。
その2人の間にいたキルアが困ったような顔をしていた。
「ほら、2人共。仲間割れは止めて」
私は2人の仲裁に入る。
だが、なぜか私にまでもレオリオの怒りが飛んできた。
「お前も面倒くさそうにしやがって!お前も気まぐれにハンター試験受けに来たのかよ!」
いつもなら軽く流すが、レオリオの言った言葉に聞き捨てならない言葉があり、時間の無駄だと判っていたが、ついつい怒鳴ってしまった。
「はぁ!?私がいつ面倒くさそうにしたっつーの!しかも気まぐれなんかじゃねーし!
私にだって理由くらいあんのよ!」
言ってしまってから重く圧し掛かって来る後悔。
私は通路の奥まで戻り、そこに膝を立てて座った。
血がでそうな位強く唇を噛み、頭蓋骨が割れそうな位強く頭を壁に打ち付ける。
私はそのまま、膝と膝の間に顔を埋めた。
――――
―――
色々と考え込んでいたら、あっという間に第4試合は終わってしまっていた。
終わった事を教えに来てくれたのはキルア。
「終わったぜ」
「そう。どうだったの?」
「負けた」
「そっか。なら後はキルアじゃない。かんばってね」
そう言うとキルアはとても驚いた表情で私を見てきた。
「…なによ」
「レオリオに怒るんじゃないかって思ってたから意外だった」
そんな事する訳ないじゃないの。
私はここでは何もしていないんだから。
そんな偉そうなことは言えないわよ。
「ほら。行ってこい」
微笑みながらキルアの頭を撫でて、力いっぱい背中を押す。
キルアは痛さに顔を歪めながらフィールドに向かった。
なんか険悪ムード…
イオの後悔とは感情を露わにした事と、
仲間に暴言を吐いてしまった事ですかね;
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