大阪府堺市北区のうどん専門店「どん太郎」に24日未明、刃渡り14センチの文化包丁を持った男が押し入った。男は包丁を手に「うどん食わせろ」などと店長の男性(36)を脅したが、居合わせた男性客が「たばこでも吸えや」と“誘惑”。男が包丁を離したスキに取り押さえた。大阪府警北堺署は強盗未遂容疑で、同区の無職・平井大二容疑者(35)を現行犯逮捕。店員や客にけがはなかったが、取り押さえた男性客は「警察が嫌いや」と捜査協力を拒んだという。
包丁を持ってうどん店に乱入、うっかり気を許したスキに御用―。吉本新喜劇の本拠・大阪で、新喜劇のシナリオそっくりの強盗未遂事件が発生した。
平井容疑者は24日午前1時ごろ、包丁を手に入店。店長によると、平井容疑者は向かいの立ち飲み屋でも包丁を振り回していたという。入るなりカウンターに何度も包丁を突き立てながら「殺すぞ。うどん出せ。酒出せ。天ぷらうどんでも冷やしうどんでも何でも持ってこいや! 俺は神や」などと店長を脅した。店長は1分後に110番通報。北堺署員が5分後に到着した時点で平井容疑者は取り押さえられていた。
機転を利かせたのは、先に入店していた男性客。「ええ時計しとるやんけ」と別の客に因縁をつけ始めた平井容疑者に、その男性客が「たばこでも吸えや」と勧めたところ、平井容疑者は右手に持っていた包丁を手放した。男性客は間髪入れずに包丁を店外に放り投げ、平井容疑者に飛びかかって制圧。他の客4、5人も加わり、取り押さえた。平井容疑者は観念したのか、署員が駆けつけた際には、たばこを勧めた男性客1人に押さえつけられていたという。
当時、店内には店長に加え、従業員1人、客8人がいたが、全員にけがはなかった。店長によると、平井容疑者は液体入りのペットボトルを持っており、何度か口に含んでシンナー臭を漂わせていたという。同署によると、平井容疑者の所持金はゼロ。「包丁を出して脅したのは間違いない」と容疑を認めている。
一方、惨事を未然に防ぐファインプレーを見せた男性客だが「わしゃ警察が嫌いや」と名前や年齢を一切明かさず、同署への同行も拒んだという。年齢は40歳ぐらい。男性客が協力を拒んだ理由ははっきりしないが、同署は「絶対に協力しないというものを無理やり頼むわけにもいかず…」と困惑の様子だった。