岩手のニュース
先代の味守る 被災の人気そば店、仮設で再開 陸前高田
 | そばをゆでる雄一さん(右)と従子さん。震災から1年余で、念願の店再開にこぎ着けた |
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東日本大震災で全壊した岩手県陸前高田市高田町の人気そば店「やぶ屋」が24日、仮設店舗で再スタートを切った。店主の及川雄一さん(44)が、津波で亡くなった父信雄さん=当時(70)=の味を引き継いだ。初日は多くの常連客が県内外から訪れ、再開を喜んだ。
午前11時前、新しいのれんが店に掛かると、次々と客が訪れ、41席の店はあっという間にいっぱいになった。天盛りを食べた気仙沼市の高木滋さん(64)は「先代の時と味が変わっていない。また足しげく通いたい」と話した。 雄一さんは、信雄さんと20年以上一緒に働いてきた。震災直後は、保育所に預けた子ども2人を車で迎えに行き、妻と片付けに店に戻ったが、信雄さんに「津波が来るから逃げろ」と言われた。 子どもが待つ車に乗り込むと、波はすぐ後ろに迫っていた。信雄さんは店とともに波にのまれた。「父が身代わりになってくれた」と、雄一さんは振り返る。 中小企業基盤整備機構の事業に昨年6月に申請し、店はようやくことし3月、元の店から約1キロ離れた仮設店舗の一角に完成した。規模は約半分に縮小した。 1961年創業の店は、さば節をたっぷり使った甘めのつゆが好評だった。雄一さんは「いずれ店を継ぐつもりでいたが、こんなに早まるとは思っていなかった。父にいろいろ聞いておけばよかった」と悔やむ。信雄さんがつづった料理のノートも流されてしまった。 自慢のつゆを再現できるかどうかが心配で、開店を前に胃潰瘍になった。だが、母従子さん(69)と何度も試行して完成させ、常連も納得のいく味となった。雄一さんは「なじみの客が喜んでくれたのが本当にうれしい」と笑顔で語った。 営業は午前11時から午後3時。月曜定休。連絡先は0192(55)2053。
2012年04月25日水曜日
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