ドキュメントにっぽんの絆:3・11それから 岩手・陸前高田 「そば屋」再建

毎日新聞 2011年07月18日 東京朝刊

製麺機メーカーの担当者の説明を受けながら、麺づくりを試みる及川雄一さん(右)=仙台市若林区で、丸山博撮影
製麺機メーカーの担当者の説明を受けながら、麺づくりを試みる及川雄一さん(右)=仙台市若林区で、丸山博撮影

 陸前高田市は中心市街地が壊滅し、商店主たちは仮設店舗での再起を目指す。だが国の負担で設置できるプレハブ店舗の建設手続きは滞り、やぶ屋の開店も早くても秋。それまではアルバイトで食いつなぎ、何とか再起にこぎ着けるつもりだ。

 「震災で目が覚めたんで」。ずっと3代目の壁に直面していた。

 大学中退後、何となく継いだ店だったが父譲りの職人肌で、次第に仕事に打ち込むようになる。「天ぷらとつゆの評判ばかりを聞くなあ」。客の要望が強い黒のそば粉に変えてはどうかと、信雄さんに相談したが「白でいい」と一蹴された。

 物心がついたときには店に行列ができ、相談相手も、味を決めるのも、客の評価を受けるのも、すべて父。「やぶ屋の看板はあるけど、僕のものじゃないな」と感じていた。

 そんなとき震災に遭う。翌朝、店も父も失い、逃げ込んだ避難所でぼうぜんとしていた。「何やってんの。寝てないで行ってきなさい」。保育園に通う2人の子どもを抱え不安なはずの妻早苗さん(39)に一喝された。消防団活動に出かけた。

 市街地に残された遺体をがれきから拾ったドアに載せて収容した。リュックに大量の乾パンを詰め込んだまま力尽きた高齢女性。波にのまれた市民会館の一室では同級生や知人が折り重なっていた。「もう自分の理解を超えていました」

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