ドキュメントにっぽんの絆:3・11それから 岩手・陸前高田 「そば屋」再建

毎日新聞 2011年07月18日 東京朝刊

製麺機メーカーの担当者の説明を受けながら、麺づくりを試みる及川雄一さん(右)=仙台市若林区で、丸山博撮影
製麺機メーカーの担当者の説明を受けながら、麺づくりを試みる及川雄一さん(右)=仙台市若林区で、丸山博撮影

 ◇これまで

 東日本大震災で岩手県陸前高田市の人気そば店「やぶ屋」が流され、店主の及川信雄さん(70)が亡くなった。結婚から45年間、ともに店を支えてきた妻従子さんは、悲しみに暮れながらも「店を続けるのをお父さんは望んでいるはずだ」と心に誓う。3代目の長男雄一さんも、店の再建に向けて動き出した。

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 ◇父の味守る、3代目の覚悟

 粉だらけの白い手でゆでたてのそばを何度も口に運んだ。7月4日。「やぶ屋」の3代目、及川雄一さん(43)は、車で片道3時間の道のりを飛ばし、仙台市内のメーカーに製麺機を探しに来ていた。実際に麺を試作して味を吟味。小麦粉とそば粉の割合にこだわった。津波に流された製麺機では作れなかった「二・八」のそばができる。「買いたい。でも被災者には高いなあ」。腕を組み、銀色に輝く製麺機を見つめた。

 夜、雄一さんは妻子と4人で暮らす仮設住宅に母従子(よりこ)さん(68)といとこを呼んだ。6畳の居間で肩を寄せ合い、ちゃぶ台の麺にはしを伸ばす。「時間がたつと麺が切れるなあ」「三・七にしたらどう」。結局、そばの出来に満足はできなかった。だが、震災後に初めて打つことができた麺を一家で囲み、これからを話し合えた喜びはひとしおだった。

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