オートポリスでサーキットデビューし、富士スピードウェイで走っていたころ。
ちょうど今くらいの季節だったかなぁ。
活動資金の捻出ができず、ピットから誰もいないグランドスタンドを見ながら考えていた。
地方選手権ではお客さんも少なく、数十人程度。
それを見ながら、いつかスタンドがいっぱいに埋まったサーキットでレースを魅せたいとがんばった数年間。
貯金もなく、収入のほとんどをレースにつぎ込み、借金も限界にきていた。
大きなチームにいる人や、スクールに入れるセレブな人たちもいたけど、負ける気なんてまったくなかった。
企画書を作ってスポンサー探しもしたけど、個人で旧式のマシンじゃ、話を聞いてくれるだけでうれしかったっけ。
最後の走行のときは、スタンドがいっぱいになってる幻想さえ浮かんできた。
精一杯頑張って、できることは何でもして、必死にすがり付いていたレーシングドライバーへの夢。
チェッカーを受けて、パドックでヘルメットを脱いだら、雨が降ってきた。
絶妙なタイミングのおかげで、泣いてることはばれなかった。
きっと、「あふれる才能が埋もれていくのをfiscoが泣いて惜しんでいる」のだと、勝手に言い聞かせたっけ。
あの日、富士スピードウェイにて。
僕はF1への足を止めたけど、その後に続いている人の中に、きっと夢をかなえる人が出てくると信じている。