不祥事発生の構造

 

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不祥事発生の構造

目次

はじめに
不祥事のタイプと原因
不祥事発生の構造
一度発生した不祥事を後から誤魔化すのは困難になった
個人レベルの問題から派生的に生じる現象(例)
防止対策
人口問題と不祥事
不祥事に対する対応/反応(例)
情報ソース

 

1.はじめに

2000年12月18日に「なぜ最近不祥事が多発しているのか」、について産経新聞から取材に来てもらったので、自分が考えるところを簡単にまとめて説明しました。その時に用意した資料が単純でわかりやすくできていましたので、折角だからここに載せておこう、というものです。

わたしたちは何を失ったか(9) 【責任感】 追及に戸惑う経営者「辞めれば済む」では済まされない(産経新聞 2001.01.11)

なお「ゾンビ」というのはちょっと口を滑らせてしまった失言で、政治的に正しい表現は「目的意識/志を喪失した自律的でないサラリーマン経営者/社員」です。

 

2.不祥事のタイプと原因

一見種々雑多に見える組織不祥事を落ち着いて眺めていくと、いくつかのタイプが浮かび上がってきます。これを更に原因別に括っていくと最終的に、次の2つに集約できます。

組織目的の歪み
リスク防御のための仕組み(統制)不良

組織目的の歪み

組織目的の歪みとは、組織が目指す方向性そのものが誤りであるケースです。この場合組織の努力/資源は、「成功」ではなく、「失敗」あるいは「破綻」に向けて結集されることになります。

外部ステイクホルダー軽視の組織目的/価値観設定
例)総会屋利益供与、粉飾決算、含み益経営、株式持合い、等
(悪気はないのかもしれないが、会社の維持存続のためだといいつつ、その実)経営者保身がステイクホルダーの期待よりも優先
@経営トップの甘えがトップのトーン/価値観/理念を浸潤
A経営陣に対する監視機能障害(取締役/監査役/監査委員会)
トップの暴走
例)バブルのときに不十分なリスク評価で不動産担保融資を拡大、安さにこだわり消費者ニーズの変化についていけなかったスーパー、債務者に「腎臓売れ」と迫る取り立て、交際費の個人的費消、政治家のパーティーで自分の愛人の演歌歌手のCDを配る、不良債権化防止のための追貸し、粉飾決算指示、部下への盗聴指示、等
トップの資質/能力の問題
歯止めの効かない「ワンマン体制」
@ 悪い情報が遮断され上にあがらない・・・不十分な情報に基づく誤った判断が累積していく
A 社長への権限集中により善意の勘違い/公私混同/非倫理的な意思決定に組織全体が引き摺られていく
組織的不正
例)機密費流用、国産牛肉偽装、リコール隠し、談合/ヤミカルテル、政治家への贈賄、総会屋への利益供与、狂牛病/薬害エイズ対策遅れ、集団食中毒への対応遅れ、粉飾決算、等
組織の目的/価値判断基準(倫理)の歪み
@ 実際の組織目的が「企業理念」(対外的目的)から乖離
A 経済的利益/効率優先の組織風土
B 組織的ジコチューにより社会規範を逸脱した行動に走る

リスク防御のための仕組み(統制)不良

組織目的が「正しい」ものであっても、その目的を実現する過程で遭遇する「リスク」を適切に取り扱う仕組み(リスクマネジメント統制)が確立されていない組織は、遅かれ早かれ痛手をこうむることになります。

特定実力者の暴走
例)財テクのプロ(失敗を隠蔽しようとしてプリンストン債に手を出す等)、債権ディーリングのプロ、銅取引のプロ、海外投資への深入り、政治家/暴力団/右翼団体とのつながりを一手に引き受ける、等
特定領域が聖域化・・・周囲の目が届かないうちに患部悪化が進行してしまう
社員の個人的不正
例)横領事件、医療ミス隠蔽、国家試験問題漏洩、購買請求水増し、等
個人倫理/企業倫理不良
社員のプライベートな問題行為
例)援助交際、痴漢行為、暴力行為、爆発物所持、拳銃輸入、薬物使用、等
個人倫理不良
担当者の単純ミス
例)入試採点ミス、医療ミス、裏マニュアルさえ読まずに臨界核反応させてしまう、等
外部者の不正
例)ITシステム開発委託先やハッカーによる顧客データ流出、社内データ改竄、不正送金、詐欺事件、テロ行為、等

 

3.不祥事発生の構造

不祥事発生に大きく影響を与えている要因には次のものがあると見ることができます。

不祥事はそもそもが、次の2つが重なった時に引き起こされるものです。

実行者個人の問題
不注意/思慮の浅さ
善悪判断基準不良
良心への圧力に対しての脆弱性
組織統制(チェックシステム)の不良
ガバナンスシステム
内部統制

不祥事が発生するとともするとチェックシステムを云々するだけでお茶を濁してしまいがちですが、本当のところより根幹にある実行者の問題を放置したままでの不祥事防止は画餅に帰するものといえます。(喉元過ぎたらすぐに熱さを忘れてしまう)。

実行者の問題をより詳細に見るとき、更にその根元には次の問題点があるものと指摘できます。

目的意識/志の喪失
過度の協調性、模倣癖、平等主義
価値判断基準の喪失
共感能力欠如/現実逃避
忍耐力欠如
思考能力不全

個人レベルのこうした根元的問題点は当然に組織や社会から影響を受けたものではあります。

組織からの影響
ビジョン・理念の欠如
倫理欠如
アカウンタビリティ/透明性欠如
組織同調圧力
理想の上司モデル不在
リスクマネジメント不良
社会からの影響
社会/国家ビジョンの欠如
夢を描けるリーダーの不在
大企業・経済の偏重
核家族化:子育てノウハウや価値観が伝承不能
宗教の役割小(冠婚葬祭)
知育中心で徳育/体育が無視された教育:詰め込み/規格化
未成熟な労働市場

ただ組織や社会も所詮は個人が集まって作っているもので、結局個人レベルの問題点の反映でしかありません。曼荼羅的な大宇宙と小宇宙です。

 

 

4.一度発生した不祥事を後から誤魔化すのは困難になった

仮に不祥事が発生したとしても、それを世間の目から隠しとおせたならば、組織にとっての評判リスクや役員に対する責任追及等のリスクの顕在化は抑えられることになります。

これが難しくなっているのが最近の傾向で、次の要因が影響しています。

IT発達によりユーザの連帯が容易になり企業とユーザとの力関係が変化してきている、
例:東芝暴言事件、三洋電機太陽電池事件、環境NGO等の活動
IT発達により通信傍受や情報漏洩等も容易にできるようになっている、
盗聴、盗撮、を容易とする機器
カメラ機能付きケータイの普及
グローバルにネタ集めをしているマスコミ
リストラの流行と労働市場の整備により企業と社員との関係の仕方が変化している
「定年まで安定雇用」の保証がなくなった
「おかしなことがあっても波風立てずに我慢していよう」とする動機が弱くなった
「無条件の忠誠心」は期待できなくなった
→内部告発への障壁が低くなってきている
社会の分散化が進み役所等による強権的もみ消しが通用しなくなっている

臭いものにフタを被せることがやり難くなってしまった以上は、これを根元から断つ、つまり不祥事を発生させない、ことを考えていかなければなりません。

海野祥子 USオフィス☆医療のページ
企業活動を監視する市民の目 コーポレートウォッチ
株主オンブズマン
株主オンブズマンは株主の地位を高め、企業の違法・不正な行為を是正し、健全な企業活動を推奨する目的で1996年2月に大阪市で設立された市民団体です.会員は弁護士・公認会計士などの専門家と株主および市民で構成しています.
 

内部告発が発覚の契機となった事件。

全農チキンフーズ(株)鹿児島くみあいチキンフーズ(株)による 無薬飼料飼育産直若鶏の偽装に対する経過報告と基本的な考え方(生活協同組合連合会コープネット事業連合 2002年3月9日)
  全農チキンフーズ(株)と鹿児島くみあいチキンフーズ(株)による無薬飼料飼育産直若鶏の偽装について、組合員、消費者のみなさまの信頼を裏切ることになりましたことを心からお詫び申し上げます。併せて、この件に関する経過と基本的な考え方を申し上げます。
1事実経過
@ 2月23日(土)さいたまコープのフリーダイヤルに匿名の電話があり「鹿児島の生産工場が鶏肉に輸入の鶏肉を混ぜて販売している調査してほしい」という内容でした。さいたまコープからコープネットへ調査を依頼されました。
A 2月25日(月)付で全農戸田の生協担当チームから「コープネット向け製品に輸入原料が使用されることはありません」との報告書が提出されました。
B 3月2日(土) 再び偽装の情報が寄せられたことから、コープネットは現地調査のため、職員を3日、鹿児島に派遣しました。
C 3月4日(月)鹿児島組合チキンフーズ(株)の鹿屋加工工場、及び本社を抜き打ちで調査を行い、11月と12月の共同購入の企画で「無薬飼料飼育産直若鶏手羽中スペアリブ」に輸入鶏肉が使用されたことが判明しました。疑わしい商品も含めて11月から2月までの商品の返金と今後の企画中止を決定しました。・・・
.

5.個人レベルの問題から派生的に生じる現象(例)

個人レベルの問題は様々な社会現象を結構うまく説明出来ます。

根元の問題点

表面に顕れる現象/指標

目的意識/志の喪失、日常に流されるままの生き方、責任意識の欠如、集団帰属への強迫観念、アイデンティティ障害

流行への追随、ブランド志向、指示待ち族、フリーター増加、経済偏重、大学の位置付け、将来への想像力欠如、臭い物にフタ/先送り/隠蔽行動、自分の生き様に対する自信・誇りの喪失、オヤジの地位低下、オウムその他の新興宗教蔓延、モラトリアム、サラリーマン志望、指示待ち族、自分の意見を表明しない、(いじめられたくない一心で)いじめへの加担、他国からの圧力に屈して自国教科書の自虐的記述維持継続(国民のマインドコントロール)工作する外務省

善悪の価値判断基準の喪失(あるいは経済偏重)、ゆすり・たかりの横行 

援助交際、青少年の非行/マナー等見てみぬ振り、青少年間での恐喝の横行・連鎖、おやじ狩り、産業廃棄物不法投棄、雇用関係維持のみが目的化の無能・無気力な中高年窓際族/リストラ予備軍、不祥事隠し、会社交際費での飲食・ゴルフ、645兆円もの借金財政の下でなお景気対策を要求し続ける経済団体、それに応える政治家、参院選に危機感を募らせた自民党の公的資金を使った株価対策(国を挙げての粉飾決算)案、KSD等政府関連団体における天下り官僚による公私混同行為

他者へのおもいやり/共感能力欠如 、現実逃避

いじめ、異質分子排除、動物/幼児虐待、ホームレス襲撃、17歳の犯罪、エゴ中心発想(個人と社会とのつながりに考え至らない)、引きこもり、心の病増加、悩みを相談できる友達(親、他)がいない、友人の家でテレビゲーム/漫画という遊びスタイル、屋外で集団で遊ぶことができない

忍耐力の欠如、悪戯な権利意識の膨張 

犯罪発生率増加、ストーカー増加、ジコチュー増加、キレる子供、自分が注意を受けたときの逆ギレ、学級崩壊、大学授業中や成人式における私語/ケータイ、自殺増加、暴走族悪質化、家庭内暴力、幼児虐待

思考能力不全

事の結果がどのような影響をもつか想像できない(各種不祥事)、大局観と戦略思考の欠如(ゴーンさんが来るまで自力で問題解決できない体質)、立場と面子への拘泥(民主党の憲法論議等)、サラ金/多重債務者増加、東京一極集中(高コスト/高リスク社会)、強い政治不信を示しながら投票率は低い有権者、学校教育に強い不信を示しながらPTAに参加しない親

ここにあげた種々の現象はこれら根元的問題点の存在と深刻さの程度を監視するための指標として見ることができます。

 

6.防止対策

不祥事発生原因が個人の気の持ちようの部分にあるとするなら、その防止の最善策は個人レベルの自律性向上ということになります。

社員の自律意識をサポート
教育改革国民会議
教育を変える17の提案−(平成12年12月22日)
一、新しい時代を生きる日本人の育成、伝統、文化の尊重、発展などの観点から教育基本法を考えていくことが必要 
一、小中学校で二週間、高校で一カ月の共同生活による奉仕活動を実施。将来的に十八歳以上の青年が一定期間行うことを検討
一、効果的な授業、学級運営ができない教師は配置換えや免職。校長の裁量権を拡大。教育委員会は刷新が必要
心の東京革命
毎日きちんとあいさつさせよう
他人の子どもでも叱ろう
子どもに手伝いをさせよう
ねだる子どもにがまんをさせよう
先人や目上の人を敬う心を育てよう
体験の中で子どもをきたえよう
子どもにその日のことを話させよう

組織レベルで考えた場合には、

第一にガバナンス構造を点検し、特に取締役会機能と執行機能とを分断しトップ暴走のリスクを抑制すること
次に、組織のアイデンティティ、理念、ビジョン、企業倫理を再検討した上でこれを組織内に徹底すること
企業戦略や、リスクマネジメントをこれと整合的に組み立てて相互に補強すること
上と整合的で、かつ社員の自律性を重視した人材の採用/育成戦略
組織内の透明性を高め問題行動はすぐに他者の知るところとなる仕組み(モニタリングシステム、社内目安箱、ホットライン等)
そこまでしても発生してしまった時のための危機管理対策
以上がうまく回っているかを継続的に検証して綻びを改善していく仕組み(内部監査等)

といったことになってくるでしょう。

ちなみに社会レベルの対策としては、

ガバナンスルールの整備: 適格要件厳格化、監査役の位置付け、リスク・統制レビュー、内部監査、経営者報酬プラン、情報公開
組織的違法行為に対する内部告発者を保護する制度の確立
訴訟促進策: 被害者救済の仕組み、経営者の自覚を促す、グローバル化への対応(国内企業の訴訟抵抗力強化)
経営者市場の整備: 経営者の競争の促進、不適格な経営者の交代を容易にする、国内からゴーンさんが生まれてくる土壌作り

といったことが考えられます。

最近の不祥事に関する社長の意識調査 (日本経済新聞 社長100人アンケート 2000年10月25日)
◆雪印事件や異物混入など品質管理をめぐる不祥事が相次ぐ原因
  ▼自社の技術や管理体制への過信(74.3%)
  ▼自動化による現場の経験と判断力の低下(26.5%)
◆三菱自動車リコール情報隠蔽事件等の企業不祥事の原因
  ▼経営トップへの情報伝達の不備(77.0%)
  ▼マイナス情報を開示することへの抵抗感(63.7%)
◆危機管理体制見直しを6ヶ月以内に実施したか
  ▼体制見直しを実施した(71.7%)
  ▼今後6ヶ月以内に実施予定(13.3%)
  ▼必要を感じない(6.2%)
◆危機管理体制見直し実施結果
  ▼問題はなかった(42.5%)
  ▼見直しで問題を発見した(29.2%)
◆最重視する危機管理のポイント
  ▼内部監査体制強化(38.9%)
  ▼危機管理マニュアル作成(21.2%)

危機管理のポイント。

 

内部監査の強化。

 

 

7.人口問題と不祥事

最近、不祥事発生はマクロレベルで人口問題と連関しているのではないか、人口増加が実は不祥事の重要なリスク要因/指標ではないか、と漠然と考え、セミナー等でも何回かそんな話をしているうちに、結構もっともらしく思われてきたので、このサイトでも紹介しようかな、というものです。

人類は、300万年前に2足歩行を開始して後、道具を使い、頭脳を発達させ、狩猟→農耕→産業革命→IT革命、といった「革新」を積み上げ、今や地球上の食物連鎖の頂点に君臨し、他の種が生存の場を奪われ次々に絶滅していく中、この世の春を謳歌しています。

  人口(億人)
米国国勢調査局
1万年前 0.1
紀元元年
1500年
1800年 10
1900年 17
1950年 25
国連人口基金2006年版世界人口白書
2006年7月 65
2050年(予想) 90

技術革新と高度の分業に基づいて作り上げられた洗練された社会システムが、食料を含む生産性を増強し、これだけの人口を養う基盤を提供しています。リスクマネジメントの観点から、これに関して次の2つの効果を指摘できます。

コントロール手段の強化: 1万年前に深刻な脅威であった他の動物に襲われるリスクや病気等に対する処方箋を得た。もちろん新しいリスクに対しても新しい技術を活用して有効・効率的なコントロール手段が開発されている。
固有リスクの増大: 高度に洗練された社会システムの歯車は、これがちょっと狂うことで社会面や実物面に大きな損害を生じる新たなリスクを生み出した。
高度なテクノロジーを活用すれば、一人当たりの生み出す成果は大きくなるが、日常業務において人目につかないブラックボックス領域は必然的に拡大し、これが不正・誤謬の温床となる。(総身に知恵が回りかねる)。
取引先その他のステークホルダーとの関係態様が更に細切れ複雑化し、期待に応えることがより難しくなる、信頼関係の希薄化、契約の重要性。
レバレッジの利いた生産体制により、儲けも大きいが一歩間違えた時の損害額も半端じゃなくなる。
より極端なケースとして、高度の技術や分業体制が、戦争・テロ等人間同士の対立の中で相手方に攻撃を仕掛ける手段として利用されるリスクが高まった。(人類全体レベルで見れば、自分自身の生存基盤を致命的に破壊できる道具立てを保持し、これを実際に使ってしまうリスク)。
また、生産消費活動による天然資源枯渇、製造業の環境汚染、ごみ問題、温暖化による農作物被害、熱帯雨林減少による酸素不足、等、も生活基盤に対する深刻なリスク。

最近の不祥事を眺めているとその多くが、「便利さ」と同時に出現したリスク要因(気付くのはどうしても半歩遅れになります)の顕在化として説明できます。

蒸気機関、化石燃料による人力の大幅増強
三菱ふそうトラック・バス大型車タイヤ脱落リコール事件「西部警察」ロケ現場乗用車暴走事件六本木ヒルズ回転ドア事故(2004/3)関西電力美浜原発蒸気噴出事故(2004/8)仙台スポパーク松森天井落下事件(2005/8)首都圏マンション耐震強度偽装事件(2005/11)シンドラーエレベーター高校生圧死事件(2006/6)シュレッダー指挟み事故(2006/8)
建設用機械を使ったATM機運び出し、エネルギー・物資・食糧確保への障害
原子力エネルギー
東海村臨界事故関連、チェルノブイリ、テロ標的、核汚染物質、大量破壊兵器への技術転用、北朝鮮核開発問題
原子力発電所の安全管理
ITで劇的に生産性向上
記事捏造/盗作事件知的財産権侵害社員による社内情報の外部漏洩/紛失事件社内情報の不正流用/インサイダー取引
JR中央線ポイント配線ミス丸紅ネット直販サイト新型PC価格誤表示事件みずほ銀行システムトラブル(2002/4)武富士電話盗聴事件(2003/6)ヤフーBB 450万人顧客情報流出事件(2004/2)レイクウッドゴルフクラブ スキミング事件(2005/1)UFJ銀行ATM盗撮事件(2005/10)みずほ証券誤発注事件(2005/12)東証取引全面停止事件(2006/1)NTTデータ元社員カード偽造事件(2006/3)パロマ湯沸かし器死亡事故(2006/7)ソフトバンク携帯契約切り替え業務停止事件(2006/10)東京電力大規模停電事件(2006/8)IT関連リスクの顕在化プログラムミスその他システムトラブル不正アクセス著作権/違法コピー/文書偽造ハッカー/サイバーテロコンピュータウイルス、他)
高速交通網による効率向上
航空交通管制部管制システムダウン事件JR福知山線脱線事故(2005/4)JR羽越線脱線・転覆事故(2005/12)福岡市飲酒運転追突事故(2006/8)、9/11テロ 
品質不良(交通機関)道路の安全管理
大量生産による効率向上、大量消費による豊かさの実現
石原産業フェロシルト不正処理事件(2005/11)松下電器温風器一酸化炭素中毒中毒事件(2005/11)ソニー製充電池発火事件(2006/8)
環境破壊/汚染エネルギー・物資・食糧確保への障害
資本集中による効率性向上
マブチモーター社長宅殺人放火事件(2002.8)栃木5億円強奪事件(2004/10)全国小売酒販組合中央会裏金流用事件(2005/4)ライブドア証券取引法違反事件(2006/1)渋谷区女子大生誘拐監禁事件(2006/6)
詐欺被害事件不正経理/裏金流用事件横領事件経費水増し不正違法行為を事業目的とする組織活動資産/書類の保管管理不良
都市集中による生産性向上
地下鉄サリン事件、首都圏マンション耐震強度偽装事件(2005/11)東京電力大規模停電事件(2006/8)早大生集団暴行事件(2003/6)悪質リフォーム事件(2005/5)国勢調査トラブル(2005/9)東大阪大学生リンチ殺人事件(2006/6)聖神中央教会牧師婦女暴行事件(2005/4)韓国発祥カルト教団「摂理」性的暴行事件(2006/7)大阪女性監禁事件(2006/08)
環境破壊/汚染近隣住民への影響学校の安全管理学校のいじめ問題社員の健康状態/心の病ニート/フリーター問題児童虐待事件、ごみ問題、交通渋滞、ヒートアイランド、地震、ミサイル等大量破壊兵器脆弱性、個人間の信頼関係希薄化/コミュニティ崩壊、治安悪化、賠償責任増大、新興宗教問題 
医療の高度化、便利な薬品の開発、「死」からの解放
京都府丹波町鳥インフルエンザ危機対応遅れ(2004/2)東京医科大学心臓弁手術連続死亡事件(2004/12)射水市民病院延命中止事件(2006/3)宇和島徳洲会病院腎移植臓器売買事件(2006/10)
品質不良(医療サービス)品質不良(医薬品/医療用機器)薬害エイズ、ヤコブ病、肝炎老人介護・終末医療問題政府債務残高/財政赤字
分業高度化〜様々な規制を通して弊害を除去
雪印食品国産牛肉偽装事件北海道大学医学部医師名義貸し事件日本テレビ視聴率"買収"事件府肉連牛肉偽装事件(2004/4)伊藤ハム豚肉関税不正事件(2004/5)UFJ銀行検査妨害事件(2004/9)西武鉄道有価証券報告書虚偽記載事件(2004/10)三井物産排ガス装置虚偽データ事件(2004/11)三菱地所土壌汚染隠ぺい事件(2004/11)JFE水質データ改ざん事件(2005/2)兼松日産農林建材用ビス認定書偽造事件(2005/2)いすゞ無届け公道テスト事件(2005/3)東横インホテル無断改造事件(2006/1)都市再生機構構造計算書紛失事件(2006/2)長岡郵便局別納郵便料金過小徴収事件(2006/5)村上ファンドインサイダー取引事件(2006/6)日銀福井総裁投資ファンド運用事件(2006/6)奈良市職員長期休暇事件(2006/10)高校必修科目履修逃れ事件(2006/10)
公金不正受給/不正流用事件公共部門の非効率経営/怠業放置政府債務残高/財政赤字各種法令遵守違反下請け等に対する不公正な取引、賠償責任増大

2050年の人口は90億人ということですから、組織(あるいは人間社会)は、今後更に革新を積み上げてより高度な分業体制を敷くことで、生産性を向上していかなければなりません。

これまで以上に大きなリスクを抱え込むことが不可避的だ、ということになれば、「不祥事」の発生可能性は固有リスクレベルで益々高まっていきます。

(1)ミクロレベルでの対応

ミクロレベルではつべこべ言っていても仕方がないので、各社が他社より優れたリスクマネジメントを整備・運用することで生き残りを図る競争が展開されることになるでしょう。

ガバナンス・・・リスクマネジメントの取締役会監督・監査役監査
リスクマネジメント/内部統制・・・文書化だけしていてもダメで実質的に機能するものが必要。
コンプライアンス・・・法規制がどんどん複雑化し錯綜する環境に対応し、リスクマネジメントの観点から組織活動の各局面における適用法令を識別し、遵守体制を整備・運用する

(2)マクロレベルでの対応

リスクがどんどん積みあがって民間組織が途方にくれている状況なわけですから、公共部門はまず土俵を見直し、デコボコや夾雑物を取り除き、相撲のとりやすい整理整頓された環境を用意することを考えるべきです。

リスクの識別評価・・・国家ビジョンに基づき現在・将来の社会経済や安全保障における深刻な脅威を識別評価し優先順位付けする
規制をゼロベースでリエンジニアリングする・・・規制緩和、縦割り行政見直し、ルールベースではなく原則ベースの制度構築、自己責任原則の徹底、セーフティネットの整備、諸外国の規制との平仄あわせ、他
規制の新規導入の際には無意味な負担を民間に強いることのないよう、事前に費用効果分析/他の規制とのバランス等を全体として検証する仕組みの導入・・・緊急対応とのバランスをどうとるかは微妙な問題(エンロン/ワールドコムが発生した当時は多少問題があってもSOX法を早急に仕上げなければならなかった
規制を有効性/効率性の観点から定期的に見直していく仕組みの導入

本題である「人口問題関連リスクをどこまで膨らましながら抱え込んでいけるのか」については、様々な意見がありえます。

この問題はマルサスの時代から繰り返し警鐘が鳴らされてきたが、現在までのところ何とかなっている。今後も何とかなるだろう。天が落ちてくることを心配したって仕方がない。
何とかならなかった場合のリスクシナリオは結構すごいものと予想されるので、(何せ文字通り生きるか死ぬかの生存基盤資源の分捕りあいなので・・・)、マクロレベルでも適切なリスクマネジメントは不可欠である。

残念ながら、兆候というか、そのものというか、関連する問題は既に顕在化してきています。

戦争・テロ対策
北朝鮮核開発問題
環境破壊/汚染
エネルギー・物資・食糧確保への障害

民主主義、人権尊重、自由、平等、ヒューマニズム、弱者保護、平和、といったことが絶対価値として称揚される世界で、人口問題はなんとも取り扱いの難しいテーマではあります。

人口増を抑制/間引く・・・誰を、どういう基準で、
各国の国家主権をどう制限するか
文化的・宗教的な信念との対立をどう解決するか
技術革新/分業体制高度化の再検討・・・リスクの識別・評価・管理

ただ、この問題はダチョウのように地面の中に頭を突っ込んでいれば解決するとは思えず、時間が経てば経つほど利用可能手段が限られてくるので、そろそろ覚悟を決めて何らかの具体的行動をとった方が賢明と思われますが、さて・・・。

 

参考資料

加藤秀俊 著作データベース 高密度社会の探究
  地球のうえの自然条件は、場所によってずいぶんちがう。狩猟・採集さえ不可能なところがいっぱいある。そういう地域を除外して、まあ、人間が生きてゆける、という面積から逆算してみると、地球の、ありのままの自然がやしなうことのできる人間の数は一千万人がせいぜいだ。つまり、木の実をひろい、ウサギをつかまえ−といった自然社会の段階にとどまるかぎり、地球上の人口は、一千万人を生態学的な上限とする。  わたしは、このあいだ、つれづれなるままに、人類の人口変化をしらべて方眼紙にグラフをかいてみた。かいてみて、おどろいた。一万年というスケールをとってみると、人口のカーブは紀元前六千年から紀元後千七百年まで、えらくゆっくりと上昇しているだけで、ほとんど横ばいのようにみえるのだが、十七世紀からこんにちまでの三百年ほどのあいだに、突如として急カーブになるのである。その曲がりかたは、直角にちかい。ずっとつづいた水平線が、いきなり垂直線になってしまうのである。紀元前三十世紀の人口が一億。紀元後十七世紀で五億、それが二十世紀なかばに二十五億。暇のあるかたは、千年をひと目盛にしてこのグラフをつくってみるとよい。その劇的な変化は、すくなからず感動的なのである。  もしもグラフ用紙に余裕があれば、人口学者がいまから百年後に予想している人類の人口、六十七億人をも書き加えてみるとよい。水平線から垂直線への移行は、さらにシャープなすがたをみせてくれるであろう。
近代の終焉と母殺し 1.農耕社会から工業社会へ
 人口が順調に増加してきたように見える人類の歴史だが、紀元元年にはすでに地球上の人口は二〜四億人に達していた12。人間の長い歴史から見ればつい最近まで、つまり17世紀までは五億人を越えることはなかった。60億人に達しようとしている今日から見ると不思議に思うかもしれないが、人類の歴史を100万年としても人類の誕生から17世紀までは、極めてわずかな人口増加率だったのである。気の遠くなるような長い期間を考えれば、その間の各一年の人口増加率は零だったと言っても過言ではない。つまり女性は、その一生で二人以上の子供を産んだかも知れないが、成人したのはやっと二人しかいなかったのである。
 しかし、突如として18世紀から、人口が驚異的にしかも急激に増え始めた。100万年間の人口増加をグラフに描くと、水平線からいきなり直角に上昇する逆L型の図形になってしまう。紀元以前の水平線の部分を捨てて、元年からの変化をグラフにしても、急激な変化に違いはない。表されるグラフは、離陸したジェット戦闘機の上昇曲線のように、水平から垂直へと急激に増加した図形になる13。急激な人口増加の理由は、言うまでもなく工業という新しい産業の出現によるのである。
国立社会保障・人口問題研究所
国連人口基金東京事務所
広島大学地球資源論研究室 人口問題
Historical Estimates of World Population (The United States Census Bureau)
環境破壊/汚染

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8.不祥事に対する対応/反応(例)

東海村臨界事故関連
総会屋利益供与関連
防衛庁水増し請求事件関連
雪印集団食中毒事件
三菱自動車クレーム隠し事件
三洋電機出力不足太陽電池事件
ソニーNGO“敵対視”内部文書流出事件
大和銀行NY支店巨額損失事件
住友商事銅不正取引事件
千代田生命経営破綻
北陵クリニック准看護士筋弛緩剤投与事件
奥羽大学歯学部国家試験漏洩事件
味の素インドネシア事件
外務省幹部外交機密費私的流用事件
KSD事件
日本医科大学付属病院手術事故隠し事件
福岡地検捜査関係情報漏洩事件
そごう破綻事件
ダイエー経営危機事件
山形大学他入試ミス事件
青森巨額横領事件
ヤクルト巨額損失事件
マルハ「タコ脱税」事件
郵便局「渡切費」不正流用事件
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8.情報ソース

プライスウォーターハウスクーパース 2003年度グローバル経済犯罪サーベイ調査
50カ国3600社のインタビュー(日本の会社は423社)
経済犯罪は重大な脅威: 37%の回答者は過去2年間に重大な経済犯罪を報告
組織規模が大きいほど被害に陥りやすくなる: 従業員数が多い組織ほど経済犯罪の被害確立が高まる
安全な業種はない: どの業種でも30%以上の回答者が不正被害にあっている
資産着服が最も広く報告された手口: これはまた検出の最も容易な犯罪でもあり、犯罪遭遇した回答者の60%がこの種の手口を経験したと報告
1社あたり平均被害損失額:2,199,930米ドル
直接的な財務被害額よりも、評判、ブランドイメージ、スタッフのモラールに与える影響の方がより重大でありうる
回答者の1/3は取締役会が経済犯罪の予防/対応に最終的な責任を負うと報告: しかし取締役会にリスクマネジメントの教育訓練を提供しているのは1/4強に過ぎない
有形のリスクマネジメント施策は明らかな成果を生み出している: 不正被害にあった組織では、従業員スクリーニングから意識向上策まで実践的な不正対策を講じているが、被害にあっていない組織では企業倫理規則等の消極的な施策にとどまっている
犯罪被害者の3/4は、被害額の20%以下を回収できたにとどまる: 経済犯罪に対して保険をかけているのは回答者の半分に過ぎないが、このグループは経済犯罪に遭遇したときにより多くの回収額を得ている
将来の最重要懸念は資産着服とサイバー犯罪である
平成15年6月27日 経済産業省 「リスク管理・内部統制に関する研究会」報告書
1.内部統制の必要性
(1)我が国企業を取り巻く状況の変化
(2)内部統制の重要性の増大
(3)内部統制に係る指針の策定
2.我が国企業の不祥事分析
(1)リスクの識別等における問題  企業価値に影響を与える広範なリスクを識別できていない・・・ 
(2)行動規範に関する問題  法令遵守を含む行動規範等が確立されていない、あるいは、行動規範が存在したとしても、経営者自らによる率先垂範と従業員への周知徹底が不足している。 
(3)職務権限に関する問題  職務権限に関し、範囲が明確でない、あるいは、適正な牽制が機能していない。・・・ 
(4)通常の業務上の経路以外の情報伝達における問題  ・・・下位の担当者が企業活動に関し問題意識を持っている場合でも、管理者との関わり等が障害となり、通常の報告経路ではその問題意識を伝達できず、問題意識を経営者まで伝えることができない。・・・
(5)事故発生後の対応(いわゆるクライシスマネジメント)に関する問題  企業価値に大きな影響を与える事故が発生した場合の対応のあり方が、事前に明確になっていない。・・・
(6)内部監査に関する問題  必要な専門性を有し、通常の業務執行部門から独立した内部監査機能が存在しない。・・・
3.リスクマネジメントと一体となって機能する内部統制の指針のポイント
(1)リスクに対応した内部統制の構築・運用
(2)健全な内部統制環境の構築・運用
(3)円滑な情報伝達の構築・運用
(4)業務執行部門におけるコントロールとモニタリングの適切な構築・運用
(5)業務執行部門から独立したモニタリング(内部監査)の確立
 
4.指針の活用
(1)我が国企業への周知徹底と内部統制に対する取組の向上
(2)内部統制に対する取組状況の市場への開示
(3)公認会計士監査等での内部統制の評価における活用
(4)司法上の判断等における内部統制の評価
公認不正調査人協会
2004 Report to the Nation
この調査は508件、総額761百万ドルの職業上の不正をカバーしている。
職業上の不正によって組織は莫大な損害を被っている。
我々のデータはSO法の監査委員会による内密の通報機能設置を強力に支持する。
内密の通報機能は不正損失を大きく減じる
SO法は社員からの内密の通報機能を支持するが、我々のデータはこうしたプログラムが更に顧客や仕入先といった第三者情報ソースをもサポートすべきことを物語っている。
不正検出のためにはより洗練された内部統制が必須である。
小規模事業はより大きな割合で職業上の不正の被害に遭遇している。
職業上の不正による損害額は実行者の地位の高低によって決定される。
ほとんどの職業上の不正実行者は初犯である。
最も効果対費用の高い不正対策は不正予防である。
2002 Report to the Nation結論
職業上の不正は組織にとって重大問題
小規模事業ほど職業上の不正に対して脆弱である
最も頻繁に不誠実な従業員のターゲットとされる資産は現金預金
職業上の不正はほとんどの場合継続的に実行される
最も重大な損害を与える不正は教育があり中高年の男性執行経営者によるもの
内部統制は職業上の不正に対する抑止力となる
職場の雰囲気が組織の不正発生率に影響する
職業上の不正発見の最有効手段は内部告発や苦情−組織にはホットライン等の仕組み確立を勧奨される
監査やその他の不正防止策は職業上の不正のコスト削減に有効である
従業員教育は職業上の不正防止のための重要な視点
Record level of fraud cases, says - KPMG’s Fraud Barometer (KPMG News 28 July 2003)
More fraud cases recorded in first half of 2003, than the whole of 2002
VAT phone and electronic payment fraud on the increase
Total value of fraud reaches £216m (Jan-June 2003)
KPMG 1998 U.S. Fraud Survey
ほとんどの不正は従業員からの告知か内部統制によって検出されている
貧弱な内部統制と経営陣による内部統制オーバーライドが2大不正発生原因
最重要の不正の兆候は個人の財務的圧力(回答者の66%)
組織の不正に対する対応は1994年当時から変化してきている(より多数が不正調査を実施、より少数が即時解雇、より少数が政府機関への不正を実行)
不正防止策としてほとんどの組織で企業行動規範を確立している、また新規採用にあたってのレファレンスチェックを実施している

 

 

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最終更新日 : 2007/02/02