1 フランス大統領選挙
22日にフランス大統領選の第一回投票があり、即日開票の結果、社会党のフランソワ・オランド前第一書記(57)が首位、現職の保守系、国民運動連合(UMP)のニコラ・サルコジ氏(57)が二位となりました。
今回の大統領選挙の結果次第では、仏独関係に変化が見られるかもしれず、下手をするとEU(特にユーロ)の今後にも多大な影響を与えかねません。
そのため全世界が注目しているわけですが、それは中国も同じです。こう書くと今やEU諸国は中国の大事な貿易相手国なのだから当然だろうと思われかもしれませんが、『環球網』を見ると如何にも中国独特の心配事が提起されておりました。
2 チベット問題
それはチベット問題で(「法总统竞选打出中国牌 萨科齐称关注西藏问题」「法媒猜测中国希望萨科齐连任 称奥朗德被指太反华」参照)、何でもオランド候補に至っては、ダライ・ラマを「尊敬を集める宗教的指導者」と称し、ノーベル賞も受賞しており、彼には既に政治的色彩はないのだから、彼と会見することに何の問題があるかと述べたそうです。
しかし、あの『環球網』が自分に優位な意見を展開しないはずがなく、北京師範大学の張勝軍副院長の「今回の大統領選挙は、総じてフランスの対中国政策を変えることはできず、中国のフランスの間に大きな利益の衝突はないのだから、欧州の債務危機の解決のためにも中国に協力を求めてくる」という意見を紹介しております。
それ以外にもフランスのネット上での評論を引用して、サルコジもかつては中国とことを構えたことがあったが(2008年のチベット騒動など)、その後は北京に対し譲歩し、ダライ・ラマと会見を行わなかったではないかと述べています。
3 中国の自信
何にしろ、これらの記事の背景にあるのは、今や経済大国となった中国の自信で、オランドも人権問題や、人民元問題では今でこそ、威勢の良い発言を行っているが、いざ大統領になると、中国の経済力を当てにせざるを得ず、中国に譲歩すると見ているわけです。
確かに、2008年のチベット騒動を受けて、フランスでは4月に北京オリンピックの聖火に対する妨害が起こりましたし、ダライ・ラマがパリの名誉市民にもなりました。そしてサルコジは12月にはEU議長国としても面子もあったのでしょうが、中国が激しく反発することが予想される中で、ダライ・ラマと会見しております(胡錦涛訪仏)。
ところが、2010年の胡錦涛国家主席が中国を訪問した時は原子力発電の技術協力、EUの対中国武器輸出禁輸解禁の支持まで約束したり、気候変動や為替問題についても中国に対し協調姿勢を示すサービスぶりでした。
実際、オランド候補が大統領に就任した場合、ドイツとの関係が悪化し、欧州債務危機が再燃する可能性が高まると私は思っておりますので、中国の資金を無視することはかなり難しいと考えます(中国の欧州外交)。
4 自己主張の必要性
そういう意味でも中国側の主張は、全くおかしなことを言っているわけではありませんが、果たしてこうした行動がどれだけ世界各国の支持を得ることができるかというと疑問で、表向きはともかく、内心は皆かなり異論があるかと思います。
ただ、こうした傍若無人な振る舞いをしているのは、中国だけではないというのも現実で、「世界の警察官」きどりのアメリカも、考えようによっては何様だとなるわけです。
そうしたことを考えると、もしかすると他国の顔色ばかりうかがっている日本の行動の方が、世界基準から見ればおかしいのかもしれません。
日本はこのままで良いと考える方もいるようですが(人それぞれ意見は違って当たり前だと思っているので、別にそういう意見を排斥するつもりはありませんが)、国が存在するのは、自国民を守るためというのが大前提だと思っているので、国が行う外交は自国民の利益確保のために行われるべきだと考えます。
そういう意味で、何があっても自国が正しいと言い切る中国の態度は、ある意味首尾一貫してところがあり、好きにはなれませんが、それはそれで理解できないわけではありません。
それより、悪いことをしているわけでもないのに、自信がなく、どこかおどおどしているような日本の外交姿勢の方が、私は好きになれませんし、理解もできません。
話題の記事をみる - livedoor トップページ
中国ニュースをウォッチし、日本との関係を中心に考察。