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ドコモのガラケーは、技術立国日本の救世主?

2012年04月24日 12:12

大関暁夫

先日、通信業界の内情に詳しい方から興味深いお話をうかがいました。それは、「ドコモはなぜ、iPhoneを取り扱わないのか」と言うことに関する、私が知らなかったある事情についてです。

氏いわく、「ドコモがiPhoneを取り扱わない理由は、メディアが騒いでいるように、確かにアップル側の条件の厳しさもあるでしょう。ただ業界トップで官業的色合いの濃い企業なればこそ、それ以上に重要な問題があると思いますよ」。

「ドコモはもともと電電公社から生まれたれっきとした“官業”なわけです。すなわち、政府の意向というものを良いにつけ悪いにつけ、受けざる負えない。昨秋のauのアップル配下入りにより、今のスマホ全盛時代におけるiPhone人気は、利用者の歓迎一辺倒ムードとは別に日本国として考えた場合、総務省あたりには通信機器を介して米国企業が国内の無線通信伝達網を支配するというリスクも感じているわけです」。

「もちろん、だからと言って国がiPhoneを入れちゃダメだとドコモに言うわけじゃない。ドコモは恐らく政府総務省の考え方を理解しながら、それとは別の独自の考え方もあって非iPhone路線を歩んでいるのかなと。それは、日本を代表する技術系企業ドコモの日本のモノづくり技術のプライドという問題に大きくかかわっているように思います。そのキッカケとなっているのが、ドコモの機器製造部門として最大の提携先である富士通の次世代スーパーコンピュータ「京」の処理速度世界一奪還でしょう」。

「これは通信行政とは直接はかかわらない文科省の所轄になるわけですが、「京」の開発は国策でもあり、これが世界一であることは技術立国日本の証なのです。「京」は今後のドコモと富士通が共同開発するメイド・イン・ジャパンの携帯電話サービスの、ネクストステージにおいても大きな役割を果たすと言われています」。

「見かけ上は民間のものでありながら国の財産でもある通信インフラというものを扱う携帯ビジネスは、「京」の実力を世界に示す格好の場であり、ドコモのビジネスは結局のところ日の丸携帯ビジネスなんです。業界トップで官業から生まれたドコモは当然国策を担う使命感を生まれながらにして組織文化に持っているわけですから、携帯開発がこのような国の威信をかけた技術開発と密接な関係にある以上、易々とアメちゃんの軍門に下るわけにはいかないと思いますよ」。

なるほど、「京」と通信ビジネスのかかわりの話は以前にも少し耳にしたことがありましたが、この話はなかなかおもしろいと思いました。日本独自スタイルを貫き発展をしてきた携帯電話は、昨今“ガラケー”などとやや侮蔑的に呼ばれ時代遅れの産物的に思われつつあるのですが、実は技術立国日本、モノづくり日本の将来に向けた展望を開く救世主になるかもしれないという側面ももっていそうだからです。

これとは別に耳にする話では、ドコモのLTE高速通信「Xi(クロッシィ)」のサービス開始と相前後したアップル社の動きのこと。ジョブズCEOの死によって、アップルは以前にも増してドコモのLTE通信網への関心を高めており、両社間の折衝テーブルではドコモのiPhone導入に向けた販売ノルマ等のハードルを下げ、むしろアップル・サイドからラブコールを送っているともとれそうな立場逆転現象的展開が見られていると言われています。

販売ノルマ等のハードル低下によるビジネス・チャンスの拡大と、国策企業的感覚での日の丸携帯ビジネスのあるべきの狭間で、ドコモは悩み続けていくのでしょうか。私が聞いた話がすべて事実であるか否かは分かりませんが、そんな裏話の存在可能性も含めて今後のスマホ戦争を見ることは、単なる携帯販売ビジネスのシェア争いとして見るよりも数倍おもしろいのではないかと思っています。

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