自民・林氏:次期総裁、日銀出身者以外も「選択肢」-インタビュー
4月23日(ブルームバーグ):自民党の林芳正政調会長代理は、来年4月で任期切れとなる日本銀行の白川方明総裁の後任には、デフレの長期化よりも低金利下での景気の過熱や物価上昇に警戒感を抱く傾向のある「インフレファイター」色の強い人物は望ましくないとの見解を表明した。日銀出身者以外から選ぶことも「重要な選択肢」との認識も示した。
林氏は20日のブルームバーグ・ニュースとのインタビューで、次期日銀総裁に求められる人物像について「個人的な見解だが、インフレファイター・バイアスが強いのか、弱いのかが大事な判断基準」と指摘した。
日銀出身者についても「排除はしない」と述べたものの、速水優、福井俊彦、白川各氏と3代続いた日銀出身の総裁の下での金融政策運営については「それで物価が安定しているならいいが、結果が出ていない」と苦言を呈した。
福井前総裁の後任が国会同意人事にかかった2008年は当時の福田康夫政権が元財務事務次官の武藤敏郎副総裁(当時)、続いて田波耕治元大蔵事務次官を提示したが野党だった民主党などの反対で否決。総裁ポストが一時空席になる事態となったが、この時はいったん副総裁に就任していた白川氏を総裁に昇格させることで決着した。
林氏は当時の民主党の対応に関して「政局一色で官僚主導からの脱却、旧大蔵省だからだめだという理屈だったが、われわれはそういうばかげたことをやるつもりはない。日銀だから大蔵省だからと言って排除するのは幼稚な考え方だ」と批判した。
日銀の独立性と総裁人事の在り方については「日銀の外から入っていくという方がより独立性の正当性を強めるという意味ではいいのかもしれない」とも指摘した。
日銀審議委員日銀審議委員は本来6人だが、4月4日に任期が満了した中村清次、亀崎英敏両氏の後任が決まらず、空席となっている。野田佳彦政権が国会に提示したBNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストを審議委員に充てる人事案は参院で自民党など野党各党の反対で否決された。
林氏は自民党が河野氏起用に反対した理由について「河野さんは非常に立派なエコノミストだが、財政とか構造改革が主な専門で金融政策を論じるメンバーとしてどうかというのが主な理由だった」と語った。空席となっている2人の審議委員候補に求められる人物像については「デフレから脱却するために金融政策が果たす役割の重要性に重きを置く人」と指摘。必要なら追加の金融緩和も「大胆にやる」考えを持つ人が望ましいとの見解を示した。
物価目標2%林氏は1961年1月生まれの51歳。三井物産勤務などを経て95年の参院選山口選挙区で初当選。現在3期目。政策通として知られ、自民党政権下では内閣府副大臣、防衛相、経済財政担当相などを歴任した。東京大学法学部、ハーバード大学ケネディ行政大学院を卒業しており、英語にも堪能な国際派。国内メディアは石原伸晃幹事長、石破茂前政調会長らと共に、自民党の将来の総裁候補と位置付けている。
自民党は9日に発表した次期衆院選マニフェスト(政権公約)の原案「日本の再起のための政策」で、2%の物価上昇を目指す政府・日銀による協定(アコード)の締結など「大胆な金融緩和、有効需要創出策の総動員によるデフレ・円高脱却」を経済政策の一つの柱に掲げている。
日銀法改正同党はさらに、林氏も出席した4日の財務金融部会で日銀法改正問題に関して本格的な議論を開始。公表された改正案原案は、政府が物価変動率の目標を定めて日銀に指示し、著しく目標を達成できなかった場合は衆参両院の同意を得て、正副総裁や審議委員を解任できるようにする規定も盛り込んでいる。
日銀が27日に開く金融政策決定会合について林氏は「スイート・サプライズ、いい意味で期待を裏切る」金融緩和に踏み込むよう求めた。具体的には基金の上積み、残存期間の長い長期国債も買い入れ対象に加えることなどを挙げ、市場が「1やると思っていたら2をやる」ような大胆な対応が必要との認識を示した。
記事に関するエディターへの問い合わせ先:東京 大久保 義人 Yoshito Okubo yokubo1@bloomberg.net香港 Peter Hirschberg phirschberg@bloomberg.net
更新日時: 2012/04/23 09:50 JST