東日本大震災のがれきの広域処理をめぐり、「大阪湾広域臨海環境整備センター」(大阪湾フェニックスセンター)の対応に注目が集まる。兵庫県内の自治体ががれきを受け入れた場合、焼却後の灰の多くがフェニックスの神戸沖埋立処分場に運び込まれる可能性が高い。関西広域連合(連合長・井戸敏三兵庫県知事)は迅速な対応を求めるが、フェニックスは「実現にはハードルがある」と慎重な姿勢を崩していない。
関西広域連合は3月25日、国より厳しいがれきの受け入れ基準を取りまとめた。だが、基準は陸での埋め立てを想定したものだった。放射性セシウムが水に溶けやすいため、国は広域処理では水と接しない埋め立て方法を紹介している。
では、神戸沖での受け入れは不可能なのか。国は全国一律の基準ではなく、処分場ごとに可否を調べる方針だ。このため関西広域連合は3月27日、フェニックス側に対し、国の評価を受けた上で受け入れを検討するよう文書で要請。井戸知事は「協力していただかないと、焼却灰を持って行く場所がない」とし、早期の対応を促している。
しかし、フェニックス側は「放射性物質を含んだ廃棄物の受け入れ基準がない」などとして慎重な姿勢だ。神戸沖では有害物質を廃棄物処理法の基準値以下にし、水を処分場の外海に流す。同処理法は放射性物質の基準を定めておらず、「処理方法が分からない」という。
陸地化した部分への受け入れはどうか。神戸沖では全体の2〜3割は廃棄物が積み重なって陸地化している。国もこの可能性に言及するが、フェニックス側は「陸地化した部分も、積み上げる廃棄物の重みで沈んでいる。雨の影響もあり、水との接触は避けられない」とする。
フェニックス側は「検討が必要で、個別評価に至るには時間がかかる」とする。関西広域連合と協議は続けるが、6月下旬の定例理事会まで、個別評価を受けるかどうか結論は出せないという。
広域処理の鍵を握る関西広域連合とフェニックス。両者の足並みの乱れが、県内各市町の対応に影を落とす。
(災害特報班・上田勇紀)
【大阪湾広域臨海環境整備センター(大阪湾フェニックスセンター)】 兵庫など近畿2府4県と168自治体などが出資し、ごみの焼却灰などを受け入れる。神戸、尼崎、大阪、泉大津沖に埋め立て場があり、神戸沖では2001年から受け入れを始めた。最高意思決定機関は大阪府知事が委員長の管理委員会。その下に理事会(17人)があり、兵庫県副知事が理事長を務める。
【特集】東日本大震災
(2012/04/23 08:00)
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