では逆に100万キロワット級原発と同じ電力量を太陽光発電でまかなうには、どれくらい設備が必要か。原発の稼働率を点検による休止などを勘案して7割とすると、1年間の発電電力量は365日×24時間×100万キロワット×0.7=約61億キロワット時になる。これは浮島の発電量の約830倍。つまり浮島級のメガソーラーを830個つくって、ようやく原子力発電所1基と同じ電力量を生み出せる計算になる。そのために必要な敷地面積は11ヘクタール×830=9130ヘクタールで、山手線の内側の面積の1.3倍だ。
場所 | 川崎市川崎区 |
---|---|
最大出力 | 7000キロワット |
年間の推定発電電力量 | 約740万キロワット時 |
年間の二酸化炭素排出削減量 | 約3100トン |
敷地面積 | 約11ヘクタール |
投資額はどうか。太陽光パネルの価格が大きく値下がりした現状では、出力1キロワット当たりの初期投資額は30万円程度とされる。この中にはパネルのほか架台や直流を交流に変換するパワーコンディショナーの設備コスト、そして工事費を含めているが、用地の費用は除外した。その前提で電卓をたたくと、浮島級メガソーラーに必要な初期投資は21億円。それを830個つくるには約1兆7000億円が必要になる。
加えてメガソーラーをたくさんつくろうとすると、どうしても電力の幹線網から離れた辺ぴな場所にもつくることになり、グリッド(基幹網)につなぎ込むための送電線敷設コストが膨れあがるので、おそらく1.7兆円でもすまないだろう。近年は安全規制の強化などで原発の建設コストが膨張し、フィンランドのオルキルオト原発3号機の建設費は1.5兆円に達したという。「とんでもない事態。もはや原発は経済的にもペイしない」という声が多いが、とんでもなくコストがかかるのは太陽光も同じというのが現状だ。
むろん原発は燃料費やバックエンドのコストがかかり、一度事故を起こしたときの賠償コストや社会的負担が膨れあがるのは福島の事故が示した通りだ。一方で太陽光発電のほうはランニングコストはほぼゼロ、技術革新やラーニングカーブ(学習曲線)によるさらなるコストダウンも期待できる。だが、現時点では「太陽光が非常に競争力のある電源」とはとても言えないのが実態。FITのような再生エネの保護の仕組みがなくなっても、一人立ちして競争できるだけのエネルギーに脱皮するかどうか、その答えはまだ出ていない。
(編集委員 西條都夫)
太陽光発電、東京電力、FIT、メガソーラー、メガソーラー発電所、再生可能エネルギー
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