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「引きこもり」するオトナたち
【第98回】 2012年2月23日
著者・コラム紹介バックナンバー
池上正樹 [ジャーナリスト]

成績優秀なのに仕事ができない
“大人の発達障害”に向く仕事、向かない仕事

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 ちょうど2年前、当コラムで「成績優秀なのに仕事ができない“大人の発達障害”」について取り上げたところ、2月22日までに約280万アクセスもの大きな反響があった。

 当時、インタビューさせていただいた医師の星野仁彦・福島学院大学福祉学部教授(医学博士)に再び、お話を伺う機会があったので、改めて“大人の発達障害”について紹介したい。

「5年先まで予約がいっぱい」
“大人の発達障害”増加も専門医不足

 やるべきことを先延ばしにする。約束が守れない。時間に遅れる。人の話が聞けない。相手の気持ちを考えずに一方的に話す。物事の優先順位がわからない。後先考えずに行動する。場の空気が読めない。キレやすい。落ち着きがない。片づけられない…。もしそうだとしたら、その原因は“大人の発達障害”にあるのではないか。

 星野医師が2011年4月に出版した『発達障害に気づかない大人たち<職場編>』(祥伝社新書)では、社会へ出たとたん、仕事や人間関係などがうまくいかなくなる人たちのことをそう紹介する。

 “大人の発達障害”で多いのは、ADHD(注意欠陥・多動性障害)と、アスペルガー症候群を含むPDD(広汎性発達障害)。その中には、「両方が合併している混合型がかなりの割合を占める」と星野医師は指摘する。

 新しい動きとして2013年には、米国精神医学会の「DSM」(精神障害の診断と統計の手引き)が「Ⅳ」から「Ⅴ」に改訂され、ADHDとアスペルガーの合併診断が可能になったという。

 ところが、日本には「大人の発達障害」の専門医は、まだ数が少ない。

 自らも当事者である星野医師は、福島県郡山市の星ヶ丘病院に勤務。星野医師の受診を受けるには、「大人のADHDに関しては、5年先まで予約が埋まっている状態」だ。

成績優秀なのに家事や仕事ができず
挫折してしまう大人たち

 外来で診療に訪れるのは、成人の20歳代から50歳代までと幅広い。初診時の平均年齢は、30歳代だ。

 最高齢は、85歳の女性。都内で英語教師や翻訳の仕事をしていたが、ずっと自己不全感を持ち続けていた。

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池上正樹 [ジャーナリスト]

1962年生まれ。大学卒業後、通信社の勤務を経て、フリーに。新聞、月刊誌、週刊誌で、「心の問題」「住環境」などの社会問題をテーマに執筆。1997年から「ひきこもり」を巡る取材を始める。著書は、『ドキュメント ひきこもり~「長期化」と「高年齢化」の実態~』(宝島社新書)、『「引きこもり」生還記』(小学館文庫)など。2011年6月には最新刊『ふたたび、ここから~東日本大震災、石巻の人たちの50日間~』(ポプラ社)を上梓。


「引きこもり」するオトナたち

「会社に行けない」「働けない」――家に引きこもる大人たちが増加し続けている。彼らはなぜ「引きこもり」するようになってしまったのか。理由とそうさせた社会的背景、そして苦悩を追う。

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