東京電力の全原発が停止した。北海道電力の一基も五月に止まる。原発のない夏へと向かいつつある。尻込みなどせず、電力の需給体質を改善し、原発なしの暮らしに向かう挑戦の夏にしたい。
世界最大の東電柏崎刈羽原発(新潟県)が停止した。「トラブル隠し」の発覚による二〇〇三年四月以来のことである。
その時は短期間の停止で済んだ。だが今は、停止した原発の再稼働そのものが難しい状況だ。
柏崎刈羽原発も全七基のうち、1、7号機が、再開の条件になる安全評価(ストレステスト)の一次評価を提出済みだ。しかし、福島第一原発事故収束のめどは立っていない。事故原因は国会などが調査中だ。
柏崎市で震度6強を記録した〇七年の新潟県中越沖地震では、所内の変圧器が火災を起こし、黒煙を上げる事態になった。提出の一次評価には、計二百三十九カ所もの誤りが見つかった。国民の東電と柏崎刈羽原発への不信は、とりわけ強い。
「原発なし」でこの夏を乗り切るしかないことは、東電も恐らく承知のはずである。
電力不足の不安は募る。東電は、ガス火力や揚水発電の増強で、昨年並みの供給力にめどを付けたという。危機回避のかぎを握るのは節電だ。昨年の夏は企業、市民を挙げての努力が実り、東電管内でピーク時に約一千万キロワット、原発十基分の節電を成し遂げた。
企業にとって、節電はそのまま利益に変わる。多くの企業が節電体制を継続するはずである。
この夏の電力危機を、エネルギー需給体質改善の契機ととらえたい。これまでは膨らみ続ける電力需要に合わせ、巨額の費用をつぎ込んで原発を造り続け、供給量を増やしてきた。それが私たちの経済と暮らしにとって、本当によいことだったのか。立ち止まってともに考え直すチャンスにしたい。
もちろん、やみくもに減らせばいいというわけではない。病院や福祉施設への安定供給、企業の海外脱出回避、原発依存度が高い関西電力管内の救済策などを織り込んだ賢い電気の使い方を、供給側と消費者側が知恵を出し合って考えたい。
電力側には一層の企業努力を求めたい。火力代替でかさむエネルギーコストを、すんなり値上げに転嫁するような消費者不在の姿勢を改め、不自然に高い燃料輸入価格の是正に動くなど、消費者への誠意を見せてほしい。
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