2012年1月 2012年2月 2012年3月

島津氏への恐怖感あおるだけ 〜市議選出馬で変な雑誌登場〜(4月23日掲載)
■ 周南市議会選挙はいま一つ盛り上がらないと思っていたら、島津前市長の出馬表明でにわかに話題になってきた。話題の提供ではこと欠かない御仁ではある。熱狂的ファンを持つ島津氏だけに注目度は高い。市長が落選して市議会に出る例は多くはない。下関市の亀田元市長は住民監査請求で一審で敗訴し、腹を立てて市議会議員になった。山口市は合志氏が県会議員から市長になり、再び県会議員に戻った。
■ 島津氏出馬で一番あせっているのが島津市政を支えてきた市議会議員たちだ。島津氏落選で危機感を持っていただけに、追い討ちをかけるような出馬に、公然と不満を言う立候補予定者も出てきた。お頭とかついできた人が自分のライバルになったわけだから、心中穏やかでないのは当然だろう。
■ そんな中、何人もの知人から「変なものが送られてきた」と知らせが入った。東京の方の雑誌で何とかタイムスとやらで、新周南新聞社が岡田幹矢氏の傘下だと書かれているというのだ。そのコピーもあちこちから送られてきた。何でも岡田氏が周南市を牛耳るボスで、我が社も、西京銀行もみんな岡田氏の傘下にあるとあった。馬鹿々々しいにもほどがあるが、最近、第二弾が発行されたようだ。
■ 熱狂的な島津氏ファンあたりが仕掛けたのだろうか。もしそうならひいきの引き倒しとはこのことだ。こうした怪文書的なものは、地方ではなじまない。マイナスになってもプラスになることはない。ましてや一市民の岡田氏をいくら攻撃しても、大勢に影響することはない。むしろ島津氏を批判するとこんなことまでされるのかと、恐怖感をあおるだけだ。
■ 島津氏の後援会の中で「日刊新周南の不買運動をしよう」と声が上がっているのはよく承知している。事実、何人かは購読を断ってきた。これも我が社の宿命だ。昔から権力者には厳しく書いてきた。そのつど熱心な応援者からはボロクソに言われてきた。それは下松市でも光市でも同様だ。権力を握ったその瞬間から厳しい目で見ることにしているが、熱心な応援者にはたまらないことだろう。
■ しかし、市長に就任した時点で、その存在はそれまでとは明らかに違う。その背中には市民の生活が関わっている。いくら親しい存在でもおかしなことを許すことはできない。
■ その付録のような形で今回の怪文書騒ぎが起こっている。島津氏を本気で応援する人なら、ただちにこんなことを止めさせないと、島津氏には極めて不利な状況になる。せっかく市議会議員選挙に出ようとしているのだから、もっと応援できるよう、彼の市長時代の功績を強調するような雑誌を作らせることだ。狭い地域だ、これが続くと市議会議員選挙も危うくなるかも。(中島 進)

税金の無駄遣いを許さない 〜「平成維新の会」が発足、参加者を募る〜(4月18日掲載)
■ 市民オンブズマンが登場したのはいつごろだったか。全国各地で不正な税金の支出に住民監査請求を起こすなど、行政側、政治家には厄介な人たちが出てきた。共産党など既成政党が文句を言ってもなかなかマスコミは取り上げることはなかったが、市民オンブズマンと言えば、それなりに報道してくれた。中には自称・市民オンブズマンという人間も出てきたりで、最近は少しその取り扱いには慎重になってきた。
■ しかし、今回設立された「平成維新の会」は純粋な市民の感覚を持った団体だ。先日、設立の会に呼ばれて周防大島町に出向いた。発起人の一人、小原勇さんは普通の島の住人だった。しかし学校統合の問題で柳居俊学県会議長に相談に行ったら、ひどい反応で、県庁が進める統合にひたすら協力するだけの姿勢に疑問を持ったという。誰のための県会議員か、素朴な疑問の中で、柳居議長が、毎年自身の顔写真入のカレンダーを島の全戸に配布しているのを知った。
■ それが政務調査費を使っているのを知った小原さんは住民監査請求を起こすことにした。問題が大きくなって柳居議長は数百万円を返金、勘違いしていたと釈明した。警察にも告発して送検されたが、検察は不起訴として処理、いまだに検察審査会で審議されている。
■ 取り調べた警察官もあまりにも公金の使い方がひどいと送検したが、一般県民の感覚は総じてそうだろう。そうした運動を通じて知り合った岩国で市民オンブズマンとして活動している水谷寿延さんや、小原さんと監査請求などを起こした周南市の武本幸男さんなどとともに「平成維新の会」を作った。島の長老格の黒田壇豊さんが会長だ。
■ 発会式には岩国や周防大島の住民たちを中心に50人が集まった。農業をしている人や、会社をリタイアして地域で奉仕活動をしている純朴な人たちばかりだった。みんな小原さんたちが掲げる「正義を希求しよう」の掛け声に賛同した人たちだ。あまりにも何でもまあまあで収める山口県政にも怒りは向いている。税金の使い方を徹底的にチェックしようと、会は盛り上がっている。
■ 税金を選挙に向けた活動の一つに使って「たいした問題ではない」「返したからいいだろう」と抗弁する政治家に「公務員は公金横領したら返しても懲戒免職だ」と小原さんたちは憤る。ごく普通の感覚だ。県の監査委員は監査請求に対して問題ないと結論を出した。公金の不正支出を厳重に管理、監査するのが建前だが、確かにこれまで監査委員が行政の支出に厳しく勧告を出した話を聞いたことがない。
■ 同会は形骸化した監査委員制度にも注目している。行政側は自分に都合のよさそうな人を監査委員に選ぶ。こうした市民オンブズマンのような活動で一番注意しなければならないのが、色に染まることだ。一切の政党などから距離を置かないと市民の共感を得られない。小原さんたちは会則にそのあたりをしっかり明記して、相当気を遣っている。税金の使い方を厳しく見ていこうというこの会が県全域に広がれば、必ず山口県はよみがえる、そんな楽しい会だった。(中島 進)

最高齢批判を超える市政運営を 〜世代交代ができるか〜(4月12日掲載)
■ 下松市は県議選でも昨年、無投票だった。地方政治に無関心な人が多いのかどうかわからないが、井川市長が無投票で再選された。東京新聞がこんな地方の選挙を取り上げていた。全国最高齢の市長候補に、対抗馬が出てこないことに関心を持ったようだ。民意の低さを面白がったのか、どう受け止めてよいのかわからない記事だった。
■ 市政運営には必ず不満を持つ人が出てくる。そこで初めていろんな論議が生まれる。それが民主主義のいいところだ。これが正解と断言できることは少ないが、税金の使い方をチェックし、効率的な運用をするためにも、対立軸があることで精査する機会が生まれる。
■ 下松市は、最近では珍しく人口を増やしてきた。井川市長が果敢にインフラ整備に取り組み、道路網を構築してきたのは確かだ。お陰で商業の集積地として、周南市や光市の落ち込みようとは対照的だ。今まで対立軸にいた県会議員までが、応援の檄文を贈るまで力を見せつけている。
■ だからといって問題がないわけではない。強引にねじ伏せる議会運営など、反発も少なからずある。市政に関わる組織も旧態依然と指摘する声もある。今後の課題がないわけではない。勝ち負けはあるにせよ、やはり対抗馬が出て、井川市長とは違う意見を発信する人がいてもいい。それで切磋琢磨して、より良い市政運営になる。今さら言っても遅い話だが。
■ 選挙も終わってとやかく言うのもなんだが、日本最高齢の市長が引き続き市政を担うことが素晴らしいことかどうかは、今後の施策にかかっている。あらゆる組織が老朽化していないか。井川市長の周囲はどうしても高齢者が多い。様々な会の運営が硬直化していないか。最高齢それそのものが悪いわけではない。とり巻きを大切にするあまり、お年寄りばかりの組織になることが、一番の弊害だ。
■ 市長は日本最高齢だが、市民団体は日本で最高に活動的な組織運営をしている、日本でも珍しく30代、40代の人たちがさまざまな団体のトップで活躍できる、そんな市にすることが、年齢への批判を跳ね返す基本ではないか。すべての組織をこの際、見直して、役所内部でも抜てき人事などが見られるようだと、拍手喝采だ。最高齢批判を超える市長再選劇を期待する。(中島 進)

外部委員の立場が不明確 〜税金の無駄遣いは誰が弁償すべきか?〜(4月9日掲載)
■ 周南市の島津前市長の市議選立候補が確実視されて、なんだかきな臭い話が横行してきた。前市長が招いた防災行政無線工事問題は市議会の百条委員会が開かれ、一定の結論が出され、その取り扱いは次の市長の裁量にゆだねられることになった。新市長は新たに外部委員による検証会を作り、再度調査して、市と日本無線双方に問題があったと報告した。
■ この外部委員の検証会は法的な拘束力を持たない。あくまで最後の決断は市長がすることになった。市長はその後の内部検証を経て「島津前市長に倫理的に問題があった」と発表。結局、数人の担当職員を口頭注意とすることで幕引きした。と思っていたら、この報告を市広報で全戸に配布することにし、これに対し、島津氏が選挙妨害だ、などの理由で配布差し止めの仮処分申請をした。
■ やっぱりか、と思ったのは私一人ではないだろう。島津氏側からすれば、外部委員の検証会や、その後の内部検証も法的な裏づけはなく、百条委の結論を広報に掲載するのとはわけが違うから名誉棄損だと訴える根拠になり得る。権力者側の広報は慎重でなくてはならないのは言うまでもない。そもそも外部委員に調査を委託した理由がよくわからない。地方自治法に基づいて調査権限も付与された百条委の調査では足りなかったのか。その結論を受けて、どう対処するのかが問題だったはずだ。報道機関が自己責任の中で報じるのとは本質的に違う。
■ 我が社が「天の声はどこから?」と報じたことから防災無線工事に関する疑惑が出てきた。奇妙な入札方法に何か問題があるのでは、と疑問を投げかけた。その時点では日本無線が落札するなど予想もできなかった。結果、日本無線が落札、問題が大きく表面化した。もし三菱電機が落札していればこんなことになっていなかったかもしれない。
■ 全国で当たり前のように施工されている防災無線工事だが、周南市では多くのお金と人出を費やしながら姿を見ることがなかった。これらはすべて市民の血税から支出されている。税金の無駄遣いを絶対許さないという視点から、この問題は論じるべきだ。責任を誰が取るのか、誰がその無駄に使われた税金を弁償すべきなのか。箱物行政で失敗しても、行政は誰も責任を取ることがない。今回は明らかな無駄遣いだ。誰かが責任を取るべき事案だ。百条委の結論から前市長や、日本無線、そして当時の担当者にどんな責任があるのか。それは司法によってしか明確にはできないだろう。監査請求をすべき事案だ。監査委員は何をしているのか。(中島 進)

今の政党では消費税増税は嫌! 〜基軸をはっきりした政党に〜(4月3日掲載)
■ 消費税増税に政治生命をかけるとまで言った野田内閣に、国会は右往左往している。正直、消費税を上げるべきかどうか、国の財政すべてを承知していないので、はっきりこうすべきだという意見は持ち合わせていない。本当に財源が枯渇しているのか、将来国家財政が破たんするのか、私にはわからない。ほとんどの国民が実際のところはわからないだろう。
■ 我が国は長い間、自民党に国政をゆだねていた。多くの国民が、社会党や共産党より自民党にゆだねているほうが、安心だと思っていたからだ。中身は一部しかわからないが、どの政党にゆだねるのが安心かが、選ぶ基準でもあった。悪い政治家も多かったが、それでも国を裏切ることはしないだろうと信じていた。
■ 長期政権の中、自民党は金属疲労して、次々と新党も結成されるようになった。ついに自民党は宿敵社会党と手を結んだ。そのころから政党に対して国民は懐疑的になった。政権を維持するためならなんでもするのだと、政党不信は一気に高まった。公明党と自民党はもともと相容れないはずなのに、今では兄弟のようだ。旧来の神社仏閣をことさらに大事にする自民党と、創価学会が母体の公明党が手を結ぶことに随分驚いた。
■ 今では無党派層が5割を超えた。あの自民党が10%台の支持しかない。ますます連立する以外、政権を維持できなくなり、どことでも手を組む自民党というイメージになった。民主党も、中身は旧自民党と旧社会党などの連立政党だ。政党が信用されない以上、どんな政策を打ち出そうが、信じられることはない。野田総理はまじめで国家のことを本気で考えていそうな人だ。しかし、民主党が掲げた公約を守らないから、彼の言うことも信じてもらえない。
■ 自由主義か、社会主義かの時代は終わり、次の再編は何を基軸にすべきか、思想家らしい政治家が求められている。小さな政府か、大きな政府か、高福祉高負担か、低福祉低負担か、政党の基軸が問われている。主義が負ければ潔く野に下る覚悟がないと、すべてばらまき政党になる。自民党と民主党の違いを述べよと聞かれて、ちゃんと答えられる国民はごく少数だろう。まずは政治家が自分の思想信条を確かめ直すことが肝要だろう。就活の一つと思っている何とかチルドレンたちも踏ん張りどころだ。消費税増税を受け入れるには、今の政党では嫌だ。(中島 進)