(重賞回顧)2004年第129回天皇賞・春~優勝馬:イングランディーレ~
「どうせ捕まってしまうのだろう」
イングランディーレの大逃げを見ながら
そんな事を考えていた。
近2走は名古屋、船橋の交流重賞でも取りこぼしていた馬である。
芝コースでネオユニヴァーズやザッツザプレンティなどのG1馬や
前年の有馬記念2着馬リンカーンなどを相手にしているのである。
逃げ切るなどということはあるまい。
そのイングランディーレの手綱を取る横山典弘騎手以外の
ジョッキー達も同じことを考えていたのだろうか?
イングランディーレとの差はなかなか詰まらない。
2周目の3コーナーに差し掛かる。
坂がイングランディーレを待ち構える。
この坂で脚が上がるに違いない。
イングランディーレの逃げをノンビリと見ていた私が
異変に気がついたのは坂の下りでの事だった。
馬上の騎手達の手が激しく動く。
しかしイングランディーレはマイペースを維持したまま坂を下り、
4コーナーから直線へ。
他の人馬たちはもっと早く
イングランディーレを捕まえに行かなければならなかったのだ。
明らかに仕掛けが遅れてしまった。
その異変に気がついたダミアン・オリヴァー騎手のゼンノロブロイ、
四位洋文騎手のシルクフェイマス、
後藤浩輝騎手のチャクラが懸命に前を追い、
イングランディーとの差を詰めようと試みる。
だがイングランディーレの脚色は最後まで衰えなかった。
ゴール板を過ぎて左手を突き上げた横山典弘騎手。
ターフビジョンに写ったその姿には白い歯が見えている。
まさに「してやったり」の表情だ。
一方で他の騎手たちの心境はどうだったのだろう?
イングランディーレを軽く見過ぎたことへの後悔の気持ちだったのか?
それとも自分の馬でどうやって3200メートルを乗り切るかに必死で、
イングランディーレの事を考える余裕もなかったのか?
落胆?不可解さ?それとも怒り?
レース後の場内は奇妙な空気に包まれたのを覚えている。
天皇賞・春における「3200メートル」という距離に
疑問を抱く声が上がり始めたのはこの頃からだったかもしれない。
表彰式前、芝コースではいつも通り、
口取り撮影が行われる。
その最中、
一部のファンからこんなヤジが飛んだのを記憶している。
「(イングランディーレの関係者が)それしかいない筈はないだろう!!」
確かに普段のG1レースよりも口取りに顔を出した関係者の数は少なかった。
顔を出しにくい立場だった人もいたに違いない。
そんなヤジと口取りの様子がレース後の雰囲気を象徴していた。
もちろんそんな中でも横山典弘騎手だけは満面の笑みを浮かべていたのだが。
2004年5月2日(日)
京都11R
第129回天皇賞・春(G1)
京都・芝3200メートル
1着3枠 6番イングランディーレ(58・横山典弘) 3分18秒4
2着8枠16番ゼンノロブロイ(58・D.オリヴァー) 7
3着4枠 8番シルクフェイマス(58・四位洋文) 1 3/4
4着5枠 9番チャクラ(58・後藤浩輝) 1/2
5着1枠 2番ナリタセンチュリー(58・吉田稔) 1 1/4
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