連載 中小企業に効くクスリ(1)

IT人材不足に中小企業が対処する方法

エフィジェント
赤秀 有為

2005/6/28


中小企業がIT化を進めるうえで大きな障壁となるのが、「IT化を推進する人材の不足」だ。こうした人材を確保・配置する際の基本的な考え方とは?(→記事要約<Page 3>へ)

 中小企業庁より公表された「中小企業におけるIT利活用に関する実態調査」にて、IT導入における問題点として下記3つが上位に挙げられた。やや古いデータ(2003年12月)だが、現在でもそれほど状況は変わっていないと思う。

問題点 当問題点を抱えている
中小企業割合
1.対応する専門のIT人材不足 36.5%
2.情報セキュリティ対策 32.8%
3.IT投資に見合う効果がみえない 30.7%
表1 中小企業におけるIT化の問題点(出所:中小企業におけるIT利活用に関する実態調査報告書 三菱総合研究所/中小企業庁)

 最も中小企業を悩ませている「IT人材不足」だが、今回はこれのソリューション(ポイント)を解説する。

- アウトソース先の“経験”“スキル”は自社に残らない

 IT化を進める人材を調達する方法としては、大別して以下の2つの方法がある。

  1. ITに詳しい人材を社員として雇用する(インソース)
  2. 外部の業者(ITサービスプロバイダ)と契約する(アウトソース)

 中小企業の場合、「欲しい人材が簡単に雇用できない」「人材育成に時間と資金を割くことが難しい」などの問題もある。しかし、その前提として“IT化に必要なのは、どのような人材か”という定義なしには、人材確保や育成はおろか、中長期的に会社が存続・発展していくために最適な人的フォーメーションを築くことは難しい。人材の確保・配置にも戦略は必要なのである。

 インソーサー(以下、社員)とアウトソース先それぞれの人材を活用するに当たって、経営的観点から自社に異なる作用を及ぼす傾向がある。これはさまざまなところで語り尽くされている感があるが、人材の確保・配置を考えるうえでは重要なことであるためポイントを絞って解説する。

社員 アウトソース先
作業経験・スキル 自社に蓄積される。 自社に蓄積されない。
作業成果 創造的付加価値を期待できる(※昇進・愛社精神などのモチベーションより、能動的に取り組む)。 創造的付加価値を期待できない(※派手なミスを避け、保守的に取り組む)。
雇用リスク(コスト) 余剰人員を抱えた場合でも雇用し続けなければならない。 余剰人員を抱えた場合には契約を解除可能である。
表2 社員とアウトソース先の違い

 アウトソース先を活用するうえでの重要なポイントは下記の2点である。

  1. 作業経験・スキルは自社に残らない
  2. 作業成果に創造的付加価値を期待できない
- 必要な人材の洗い出し

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 人材の確保・配置を考えるに当たって、どの作業にどんな人材が必要かを洗い出す必要がある。

 IT化の作業は、ITライフサイクルに沿って「企画→設計・開発→運用・保守」といった工程がある。

 一方、会社の業務機能は、企業ごとに異なるだろうが、販売やマーケティングといったようなものがある。そして、各機能を補完・補強する目的で、電子メールを導入したり、Webサイトを立ち上げたりといったIT化が図られているはずだ。

 図1は、機能と工程を軸にしたマトリクス上にIT化された(される)システムやツールをマッピングしたイメージである。

※複数事業を展開されている企業は必要な人材をモレなく可視化させるうえでは適切な軸(機能あるいは事業)の選択が不可欠である。

図1 機能/工程に対するIT化マッピングイメージ

 この企業を例にすると、下記のような人材が洗い出されてくるだろう。

  IT動向を見据えながら今後導入する「新規ITシステム・ツールの企画担当者」
  より売れる仕組みに向けて改善点を考える「Webショッピング企画担当者」
  上記改善点を的確に具現化する「Webショッピング設計・開発担当者」
    …etc.

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index
連載:中小企業に効くクスリ(1)
 IT人材不足に中小企業が対処する方法
Page 1
アウトソース先の“経験”“スキル”は自社に残らない
必要な人材の洗い出し
  Page 2
大切なのは上流工程
 −ポイント1:社員をコア・上流工程作業に配置
社内ITスタッフに求めるべきは、ITスキルではない
 −ポイント2:社員を支援するコンサルタントの活用
  Page 3
外部業者との付き合い方
−ポイント3:標準化の進むIT作業でアウトソース先確保
−ポイント4:アウトソース先の定期的モニタリング


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