今国会で注目したい一つに、年金一元化の法案がある。民間のサラリーマンが加入する厚生年金と公務員などの共済年金を統合し、「官民格差」を是正しようというものだ。
公務員の共済年金は、厚生年金より保険料率が低く、給付は手厚い。その仕組みは公費によって支えられている。
公務員優遇をこれからも続ける理由は見当たらない。細部の詰めを急ぎ、この国会で成立させるよう求める。
「社会保障と税の一体改革」の関連法案として提出されている。共済年金を2015年10月に廃止し、厚生年金に一本化する。
保険料率は段階的に引き上げ、18年9月に公務員の共済年金と厚生年金をそろえる。公務員共済の独自の上乗せ給付である「職域加算」や、民間より広く遺族年金を給付する「転給」という仕組みはなくす。
07年に自公政権が提出した法案と、ほぼ同じ内容だ。当時は民主党が反対し、廃案になった。今回の法案が成立しても、保険料率の統一には何年もかかる。先延ばしするときではない。野党の理解を得られるよう政府や民主党はしっかり経緯を説明すべきだ。
論点となる一つは、公務員共済の「追加費用」と呼ばれる仕組みだ。共済年金ができる前、恩給制度だったころのOBに年金給付するため公費を投入している。法案では27%削減することになっている。さらに削る余地はないか、見極める必要がある。
もう一つは、年金の積立金の扱いだ。公務員共済の約45兆円のうち、厚生年金に統合するのは約24兆円にとどまる。残りは、既に給付が決まっている職域加算などに使う。官民格差の温存にならないか、詰めなくてはならない。
今回の法案では積み残した問題もある。廃止する職域加算に代わる新たな制度の在り方だ。政府、党内の考え方がまとまらず、盛り込まなかった。設けるとしても税金を使うべきではないとする意見の一方で、公務員労組からの反発がある。政府は今後、別の法案を出すとしている。
看板の掛け替えでは、官民格差が残る。民間の上乗せの仕組みである企業年金は、持たない会社も多い。公務員のために新たな制度をつくるとしても、不公平感のないものにする必要がある。
将来的には、自営業者などが加入する国民年金を含めた一本化が課題になる。最初の一歩として着実に進めたい。