新学習指導要領実施で2012年度から中学校で必修になった武道をめぐり、兵庫県内の各校などが安全対策や場所の確保に苦慮している。県教育委員会のまとめでは、県内公立中の6割以上が柔道を実施予定だが、頭部強打による重大事故の危険性も指摘される中、体育館の床や壁にマットを設置するなど、独自の対策を講じる学校も目立つ。
県教委によると2月現在、柔道を予定する公立中は56%。剣道や相撲などと併せて柔道を実施する学校を含めると67%に上った=グラフ。
一方、自校に武道場を備える中学は約6割。部活動などで使用するため既に整備していた学校が多いが、必修化に備え急きょ整備した例もある。
柔道を選択する三田市は10年度、全8校に武道場を設置。事業費約2億8千万円のうち、8割強を国の交付金で賄った。市教委は「体育館に畳を敷くことも検討したが、実験では畳の準備に手間取り、十分な授業時間が確保できなかった」とする。
12校中6校が武道場を持つ宝塚市では12年度、さらに4校で整備を予定したが、結局見送った。市教委は「安全面を考えれば全校に武道場を設けたいが、財政的に難しい」。体育館や空き教室に畳を敷いて柔道を行う。
校外施設での実施も。淡路市の2中学校は、徒歩数分で行ける市立の武道施設などを使用する。
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柔道を中心に、各教委や学校は安全対策に腐心している。
県教委は5月、指導教員らを対象に、専門医による講習会を開催。各市町でも、独自に講習会を開いている。
神戸市は柔道を予定しない6校を含め、全82校に「投げ込みマット」(縦横2メートル、厚さ10センチ)を4枚用意。主に柔道の投げ技練習に使用する。
芦屋市では全校の柔道場にウレタン入り畳を敷き、壁面には衝撃を吸収するガードマットを張った。「特に女子は軽いけがでも心配」と市教委。尼崎市では、頭を守る防具「ヘッドキャップ」を導入する学校もある。
神河町などは「柔道は安全性の確保が難しい」として剣道を選択。柔道を実施する相生市教委は「投げ技は極力控え、受け身や寝技を中心に指導する」としている。
県教委体育保健課は「教員が専門知識を身に付けて慎重に指導するなど、安全性を徹底したい」としている。(本田純一)
【中学の武道必修化】
多様なスポーツを経験する目的で、2012年度から中学1、2年の体育で武道(柔道か剣道、相撲)が必修に。3年は選択制。地域事情でなぎなたなども可能で、伊丹市が実施。柔道では基本動作や礼儀を学び、試合で投げ技などもできるようにする。授業時間は1年間に10時間程度。投げ技などで頭を揺さぶられ「加速損傷」になる事故が懸念されている。
(2012/04/22 08:20)
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