風知草:枝野幸男の弁明=山田孝男
毎日新聞 2012年04月23日 東京朝刊
枝野幸男経済産業相(47)は迷っているのか。先週末、会ってみた。取材を終えて最も印象に残ったのは「私はロベスピエールになりたくないのです」という一言だった。
マクシミリアン・ロベスピエール(1758〜94)はフランス革命の指導者である。恐怖政治の代名詞でもある。理想に忠実な弁護士だった。政権を掌握するなり急進的な改革へ突き進み、政敵を次々処刑し、最後は自分が処刑された。
枝野は、定期検査中の原発の再稼働を一切認めない選択は無理な急進的改革だと考える。直進を急げば混乱を広げ、かえって理想(脱原発)から遠ざかると見る。以下、漸進主義を掲げる枝野の弁明である。
−−発言の修正が続くのは働きかけがあるから?
「いや、(働きかけは)ないですね。(私は)基本的に脱原発ですが、すべての原発をこのまま止め続けた場合、無理な節電と電気代値上げは避けられず、中小企業倒産、雇用不安の連鎖で社会が混乱する。そうなると定着しかけた脱原発の機運もしぼんで(原発)依存体質が完全に復活してしまい、手がつけられなくなる。ボクはそれを一番恐れているんです」
−−中期の改革ビジョンを示すべきだと思うが。
「政治論としてはその通りですが、いいかげんなものを出せば揚げ足をとられる。簡単に出せるもんじゃない」