君嶋さん(左)らが山から1日がかりで収穫したものの、すべて廃棄処分となる乾燥用のシイタケ=矢板市で
|
|
「自分で作り、自分で捨てる。ばかみたいだよ」。矢板市下太田にある「君嶋きのこ園」の君嶋治さん(61)は連日、施設栽培した原木生シイタケと、所有する山で原木栽培した乾燥用のシイタケを一日平均四百キログラム、収穫しては、廃棄している。
矢板市は二月、那須塩原市とともに県内で最も早く、国から露地、施設栽培ともに原木生シイタケの出荷停止の指示を受けた。昨年十一月、県から出荷自粛の要請を受けた原木栽培の乾シイタケに続き、生産者にとっては非情な宣告だった。
シイタケの生産を始めて三十七年。「出荷できなくても収穫をしなければ、原木や山がだめになってしまう」。不毛な作業に加え、収穫したシイタケを東電への賠償用に記録写真に収めるむなしさ。「俺らに過失はない」と声を震わせる。
未使用の原木も大量に処分。これまでは、那須地区や地元の原木を使っていたが、今年は初めて佐野市産を取り入れた。五里霧中の今も、安心で安全なシイタケを作るために努力を惜しまない。
当面は東電からの賠償に頼るしかない。それでも、不安は尽きない。「仮に出荷停止が解除されても、消費者はどう思うだろう」。広がる風評被害。市場価格は「3・11」以前の水準に戻るのか。
「食べ物は健康面で重要だが、消費者には市場に出てきた食品は安全だと考えてほしい」と君嶋さん。信念があるからこそ、再び自慢のシイタケが店頭に並ぶ日まで、苦しくとも歩みを進める。
この記事を印刷する