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2012年4月23日(月)付

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個人情報保護―国境を超えた連携へ

スマートフォンや交流サイト(SNS)の普及、利用者の情報を一括管理するクラウドビジネスの拡大など、情報通信の急速な変化が個人情報保護への新たな対応を迫っている。米国と欧[記事全文]

大学改革―授業と入試を一体で

もっと、大学生に勉強させよう。文部科学相の諮問機関の中央教育審議会が、そんな議論をしている。日本の大学生は1日平均で、4時間半しか勉強しないという調査がある。十数年前に[記事全文]

個人情報保護―国境を超えた連携へ

 スマートフォンや交流サイト(SNS)の普及、利用者の情報を一括管理するクラウドビジネスの拡大など、情報通信の急速な変化が個人情報保護への新たな対応を迫っている。

 米国と欧州連合(EU)はプライバシー保護とネットビジネスの振興で協力し合う共同声明を出した。日本はこの問題で立ち遅れている。いまや国境を超えた連携なしに個人情報は守れない。そんな時代にふさわしい態勢をつくる必要がある。

 ネット企業は、高い広告料が得られる手法の開発でしのぎを削っている。近年は利用者の生活に合わせてタイムリーな広告を送るため、個人の好みや生活パターンを把握する技術の発達が著しい。

 収集の対象はネット通販での購買履歴から、全地球測位システム(GPS)の位置情報で得られる行動パターン、メールアドレス帳が示す人脈や交友関係などへと際限なく広がる。

 多様な情報を組み合わせて長期間にわたり分析すれば、利用者本人が知る以上の情報がネット企業などに蓄積される。利用者の知られたくない実像をあぶり出したり、虚像を生み出したりすることも可能だ。しかも、情報を管理する場所は往々にして国外である。

 米グーグルが60に及ぶサービスでバラバラに集めていた個人情報を統合して管理し始めたことに、各国が一斉に反発したのもこのような事情からだ。もっと不透明な形で情報を集めている企業も少なくない。

 EUはSNSの米フェイスブックが脱退者の情報を保存している疑いが拭えないため、その削除を求める「ネット上で忘れられる権利」を打ち出した。米オバマ政権は消費者プライバシー権利章典に「ネットで追跡されない権利」を掲げた。

 欧米では行政からの独立性の高い第三者機関が専門的な見地からこの問題を扱い、国際交渉も担っている。

 日本は03年に個人情報保護法を定めたが、対応は省庁ごとの縦割りだ。専門性にも機動性にも欠ける。独立した保護機関を持たないと、技術進歩やグローバル化から取り残され、日本企業の国際展開にとっても不利になる恐れがある。

 国会に提出された共通番号制(マイナンバー)法案には、第三者機関の創設が盛り込まれている。ただ、対象は共通番号を扱う役所や企業などだ。

 言論・報道の自由などとの両立を図りながら、欧米並みの保護機関へとどう拡充していくのか、議論を深める時だ。

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大学改革―授業と入試を一体で

 もっと、大学生に勉強させよう。文部科学相の諮問機関の中央教育審議会が、そんな議論をしている。

 日本の大学生は1日平均で、4時間半しか勉強しないという調査がある。十数年前に比べれば、これでも増えたといわれるが、国の想定する大学生の勉強時間は8時間なので、まだ相当に短い。

 こつこつと講義、授業に出ているが、予習や復習など自習の時間が少ないそうだ。

 こうしてはどうか、と中教審はいう。前もって課題を与えて予習させ、議論や意見の発表をさせる。一方通行の授業を改めて、自ら学び、考える力をつけさせる――。

 これなら学生の意欲も高まるだろう。ただ、実現していくには、入試のあり方も一体的に見直す必要がある。

 いまの大学生の半分近くは、面接や小論文で選考する方式や推薦で入学している。

 決して悪いことではないが、一般的な学力試験がないぶん、高校時代に勉強する習慣を身につけずに大学に入る人が増えたのは確かだ。

 現に最近の約15年間に、いわゆる標準的な学力の高校生の勉強時間は、ほぼ半減しているというデータもある。これでは最低限の基礎学力すら身につかないだろう。

 だからといって、いまさら詰め込み式、暗記型の勉強に戻せというのではない。大学での授業に対応できる程度の学力の有無を、知識の量よりも思考力を測ることで見極める。そんな入試制度に改善することが求められている。

 たとえば、小中学校の全国学力調査や国際学力テストPISA(ピザ)では、グラフの読み解きや、討論を読んで主張の欠点を問うような問題が出される。

 こうした設問に答えるには、細部にわたる知識の量よりも、考える力、論理を組み立てる構想力などが要る。

 今回の大学改革がめざす授業も、これに沿うものといえる。当然、入試も同じような志向性が求められるはずだ。

 かつて、大学生は「大学に入ったら勉強は終わり」と、よくいわれた。仕事に必要な知識は就職してから学ぶのが一般的だった。

 しかし、経済のグローバル化や長引く不況で、多くの企業が創意工夫のできる自立した人材を求めるようになっている。そしてこれからは、他国の優れた若者と就職活動を競う機会も増える。

 大学改革は待ったなしだ。

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