韓国政府は自由貿易協定(FTA)の関税引き下げ・撤廃品目に対する価格モニタリングを実施しているが、市中では調査対象となる特定ブランドの価格だけを引き下げ、それ以外の商品は値下げしないケースが多いことが分かった。輸入業者は政府の圧力を避けるために、そうした対応を取っているとみられる。
公正取引委員会は20日、モニタリング対象品目のうち、値段が下がった13品目から2品目をサンプル調査したところ、政府が調査した特定商品だけを値下げし、残りは価格が据え置かれていることが判明したことを明らかにした。
例えば、ジュースの場合、モニタリング対象の「ウェルチ」ブランドの輸入原液の関税が45-54%引き下げられ、原価が8.6%低下したことから、メーカーの農心は相応の値下げを行った。しかし、同じ米国産の原液を使用しながら、モニタリング対象に含まれなかったコカ・コーラの果汁飲料「ミニッツメイド」やソウル牛乳の「朝にはジュース」などは、価格に変動がなかった。
また、ビールの場合は、モニタリング対象となったミラーの「ジェニュイン・ドラフト」(355ミリリットル・6本)の価格は37%値下がりしたが、これは公取委がモニタリングを実施した特定の小売店での販売分に限られる。本紙がソウル市江南地区の百貨店に問い合わせた結果、ジェニュイン・ドラフトは缶入りが値下げされたものの、瓶は355ミリリットル入りが2400ウォン(約172円)で、FTA発効前と差がなかった。また、ハイネケン(オランダ)、ヒューガルデン(ベルギー)、ギネス(アイルランド)など欧州の代表的なビールも価格に変化はなかった。公取委関係者は「全ての輸入ビールの出荷価格に当面は値下げ計画はないと聞いている」と説明した。
モニタリング対象品目の価格が値下がりしたのは、公取委が流通過程に不公正な行為があった場合、それを指摘、処罰すると警告したためだ。欧州製のアイロン、電気ひげそりなどの価格は、昨年7月の欧州連合(EU)とのFTA発効から1年近くたっても変化がなかったが、警告を受け、最近になって値下がりした。
経済正義実践市民連合(経実連)の関係者は「輸出業者が政府の圧力を避けるため、形式的に対処し、FTAによる利益を最大限吸収している。監視を徹底しなければならない」と指摘した。
これについて、公取委は「副作用を考慮し、モニタリング対象品目を随時変えながら発表する。消費者に最大限利益がもたらされる方向で、モニタリング制度を運用したい」と説明した。
これに先立ち、公取委は関税の即時撤廃、引き下げの対象となり、市民生活と密接な関係がある23品目を選び、今月12日にうち17品目の価格を調査した結果、13品目の価格がFTA発効後に2.9-37%値下がりしたと発表していた。