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  残念な山田 作者:きらと
1
 針葉樹が枝を伸ばして太陽を遮る中で、イネ科植物が生え茂り視界を覆っている。
 草を掻き分けて荒い息を吐きながら男達が駆けていた。前日の夜に降った雨で地面はぬかるんでおり、戦闘靴が泥を跳ね上げる。
 男達は迷彩戦闘服に弾納や水筒、救急品袋、銃剣を着けた弾帯とサスペンダーを見にまとい背納や携帯無線機を背負っている。一見精強な兵士に見えるが実体は追われる者だ。
 背後から死の恐怖と共に迫り来る敵兵。普通と違うのは、追跡者の服装が中世の騎士物語や絵画から抜け出てきた様な服装をしている事だ。革製の鎧に剣や槍、弓にクロスボウを所持しており、中には魔法使いとおぼしき服装に杖を持った者までいる。
 おとぎ話ではない。文化レベルどころか世界が違う。以前、捕虜になった者を見つけた時には男性器と首を切断され死んでいた。国際法も適用されない世界。捕まれば拷問を伴う尋問が待っている。
 降り注ぐ矢弾と魔法の攻撃で露出した肌には傷が出来ている。顔に塗っていたドーランは落ちており、表情は固い。額の汗を拭う余裕すらない。時折、止まって銃を放ち敵を足止めして先を急ぐ。
 味方のヘリコプターが収容してくれる地点まで約20㎞。2時間少しで向かわねば成らない。
(こんな筈では無かった!)
 内心で毒付く少年の名前は山田太郎。高校を卒業して2ヵ月も経っていない。

 太郎は平成6年、関東地方某県に生まれた。
 自己投影のできるヒーローの活躍が出来るアニメとゲームが好きで、空想ばかりして過ごしていた。
 趣味はネット小説の執筆。素人の小説は文章の技巧よりも勢いで書き上げる物だ。読者もそれなりに着いたある日。
「何だと!」
 感想欄を見て頭に血が昇った。
『あなたの作品は自衛隊の考証が不十分で、呼称や用語、武器の使用などに問題がある』
 今まで称賛しか受けた事の無い太郎には、落ち着いて受け止める事が出来なかった。自分の全存在を否定されたような気がした。
(僕は最高なんだ! 僕の作品を理解できないやつに用は無い!)
 相手は現職の自衛官だったが、ネット上で事の真偽が分かる訳も無い。自分の書いたネット小説に感想で突っ込みを入れてきた自衛官にマンセー信者を使って排除する事にした。
『自衛官かなんだか知らないが、素人の小説にリアリティーを求めないで下さい』
『専門用語使われても一般には分かりにくいだけです』
(僕を舐めるなよ!)
 相手は、擁護意見に辟易して去っていった。それを勝利と感じたのは若さゆえの傲慢と言える。称賛の感想しか来ない為、文章の向上もない。
 そんな少年が、ミリタリーオタクを経て自衛隊に入ったのは自然な流れだった。
「来月から自衛隊に入ります。国防の為、がんばります!」
 威勢の良い事を活動報告に書いた。読者から応援のメッセージが書き込まれる。
 駐屯地では隊員が並び、新隊員が拍手で出迎えられる。
(これから自衛官としての人生が始まる!)
 意気揚々と入隊するが、3日目には辞めたくなり活動報告に愚痴を漏らした。それに対して応援の書き込みがあったが、例の自衛官からは甘えるなと書き込みがあり即座に消した。
 1ヶ月目、すでに虚勢を張る意地も無い。
「山田あぁぁっ!」
 班長の拳骨が降り下ろされる。頭は鉄帽を被っており痛くはないが精神的に堪える。
 所詮はオタクであり根性が座っていなかった。物覚えが悪いのに、課業終了後に教範も開かず体力錬成もしない。周囲の目は厳しかった。
「給料貰っているんだろ。自衛隊は学校とは違うんだ!」
 新隊員前期教育課程で班長に殴られ同室の班員に相手にされず、太郎は孤独のうちに心を蝕み依願退職する。

 中途退職した太郎は自信を喪失していた。家でごろごろしている太郎が家族には目障りだった。
「早く仕事探して家を出ていきなさいよ」
 両親にも叱責され求職に出かけるが就職先も無く、一日をぼんやりと遊んで過ごす。
「ああ、今日はゲームの発売日だな」
 成人向けPCソフトを買いに出かけたその日、太郎の人生は分岐点を迎えた。 
「山田太郎君。平成22年4月1日、陸上自衛隊入隊。4月30日付で依願退職」
 秋葉原にあるファーストフード店でハンバーガーを貪っていた太郎に、隣に腰掛けていた男性が話しかけてきた。年の頃は30代半ば、服装はパリッとした背広を着ておりおかしい所は無い。
(何だこいつ?)
 胡散臭げに不信感を隠そうともしない太郎の視線に怯む事無く男性は続ける。
「君は国防を志し、軍事に興味があった。そうだね」
 堪らず太郎は尋ねた。
「貴方は誰ですか」
 男性は口元に笑みを浮かべ名刺を差し出した。
「君を勧誘に来た」
『有限会社アニマルコマンドー 人事部長田中一郎』
 受け取った名刺には、いかにも偽名臭い名前が載っていた。
「勧誘?」
 田中と名乗る男性は事業を説明した。
「我が社は政府の表沙汰に出来ない仕事を請け負っている」
 実体は傭兵の人材派遣会社に近い。
「政治とは自国の現実的利益追求にある。その為に道徳心は入らない。必用なのは言われた事を忠実に実行する人間だ」
 若年層の書いた小説では、傭兵団の様な組織が現代も存在している描写がある。企業化されたPMCでは、小火器程度ならともかく、大規模な戦闘車輛・航空機・艦艇と言った機材を保持出来ない。自国に武装勢力を抱えるなど、まともな国なら許さないからだ。PMCの提供は人材派遣、輸送業務、武器整備、技術育成などだ。その為に輸送機を保有している企業も中にはある。世界的に名の知れたEO社の場合、戦闘車輛・攻撃ヘリコプターは現地政府からの貸与されていた。
 アニマルコマンドーの場合は民間企業の体裁を持っているが、日本政府が経営本体となって国益の為に活動している。その為、一般のPMCでは保有できない機材を装備していた。
「不正規特殊作戦……ですか」
 傭兵が行うのは汚れ仕事と相場が決まっている。傭兵は中世に発展し、市民軍の誕生で勢力を減らした。近代軍事史としてはコンゴ動乱で一躍注目を浴びるが、ビアフラ紛争で限界に達した。以後も様々な形で戦争に参加しているが大規模な戦争は、リビア内戦まで存在しなかった。厳密に言えば、リビア内戦で傭兵と報道された兵士達は、ジンバブエや周辺部族からカダフィー支持の元に送られた義勇兵とも捉えられ、傭兵と言う呼称は政権を批判する情報操作による悪印象とも考えられる。正に『傭兵に正義はない。悪名のみが歴史に刻まれる』と言う見本だ。
「危険手当は勿論出る。万が一死亡すれば、政府の機密費から家族に遺族年金が出る」
 義を見てせざるは勇なきなり――
 FPSゲームの様な活躍が出来る。英雄願望が実現できる機会だ。このまま人生を燻らせるよりは、冒険してみたいと言う気持ちもあった。
(このまま家に居ても、仕事を探せと親に怒られる毎日だ)
 拳を握り締める太郎。心は決まった。
「やります! 僕を雇ってください」
 田中は笑みを深めると書類を差し出した。
「ここに署名と捺印を」
 それが悪魔との契約だった――

 2週間の準備期間で身辺整理を済ませた。両親は太郎に期待もせず、再就職先を詮索しなかった。その反応に太郎は一抹の寂しさを感じ、反発を覚えた。
(親なんてこんな物か)
 自立して欲しいと言う親心を理解しようとせず、太郎は負の感情を抱いて家を出た。
 集合場所である合同庁舎の前にマイクロバスが停車している。集まった男達の前に立ち、名簿を持った係員が名前を読み上げる。
「秋山洋一」
「はい」
「伊賀智」
「はい!」
 点呼を終えるとバスに乗り込んでいく。太郎も衣納一つを抱えて並んでいる。
「あれ、山田じゃないか」
 声をかけられて太郎は振り返る。色の白い肥満体系の男性が居た。
「伊集院じゃないか」
 伊集院忠信。高校の同級生で、太郎とは趣味が合いアニメのDVDをよく貸してもらった。就職に失敗して家に引き篭もっていたと聞いている。
「山田も田中さんに声をかけられたのか?」
「ああ。モックで飯を食っている時にな」
 車列を組んでバスは走り出す。窓は黒いシールが貼られており外の景色は分からない。
 数時間が経ち、バスの揺れで目を醒ますとどこかの畦道を走っていた。前の席に座っていた男が囁き田中が頷く。
「よし。もう窓を開けて良いぞ」
 引率してきた田中が後ろの座席を振り返り口を開いた。
 新鮮な空気を求めて起きている者は窓を開けた。
「あれ……」
 太郎の口から間抜けな声が洩れた。視界の先には赤い月が空に浮かんでおり、空には翼竜が飛んでいる。
 答えを求めて田中に視線が集中する。
「異世界へようこそ。まず最初に言っておく。ここは地球ではない」
 田中の笑みに、自衛隊へ入隊して宣誓を書いた後、穏和な態度から強面へと豹変させた班長達を思い出させた。
(ああ、またか)
 状況の説明は宿営地に着いたら始まった。
「ここはエルステッド王国。300年にわたる魔法文明の歴史で科学技術の進歩は停滞している」
 現在、農奴解放を唱えるゲリラが貴族や商人を襲い治安が低下が激しい。本格的ゲリラの鎮圧を経験していない王国軍には負担の大きい敵だった。
 日本はエルステッド王国に地下資源採掘で利益を得ている。代わりに軍事援助を提供していた。
「本気で叛乱を潰すなら自衛隊を派遣すれば良い。だが政府としては現状維持が望ましい」
 市民団体や近隣諸国から批難を浴びる恐れもない。しかし日本政府としては本格的介入の意思は無い。
 エルステッド王国が叛乱鎮圧に国力を割かれ、隣国と睨み合っていれば日本が付け入る隙はある。
「諸官の使命はゲリラの都市部流入を阻止し、王国から敵を一掃する事にある」
 近代軍事史を紐解けば分かることだが、第二次世界大戦以降、低級度紛争や内戦が世界各地で起きた。ベトナム、ローデシア、アンゴラ、アフガニスタン、イラクetc。その過程で生み出されたCOIN作戦の進化が地球にはある。王国軍に軍事指導を行う傍らで、実戦経験の蓄積も行う。日本としては旨味がある。
 敵の装備とは技術レベルで1世紀以上の開きがある。脅威は限られていた。
「地球と違い地雷の心配をしなくても良い」
 この種の戦場に付き物が即席爆弾や地雷だ。それが無いだけでも行動の選択が広がる。
 日本政府とエルステッド王国との協定で、日本から送られたアニマルコマンドーが叛乱鎮圧に加わっている。この世界の戦争では刀剣類と魔法を使う。一方アニマルコマンドーは、重火器を装備し機械化されておりヘリボン作戦などでゲリラを追跡する。
「貴族とはもめ事を起こすな。基本的に任務以外で、宿営地の外に出る事は許されない」
 自分達は異邦人だ。些細な事でも、文化の違いで外交問題に発展するかもしれない。この国での日本人の立場を理解する。
 荷物を隊舎の居室に置き着替えると、早速訓練が始まる。
 自衛隊の様に基本教練はしない。即戦力投入が求められるため武器の使用と戦闘訓練に入る。
「銃は無敵ではない。自分の武器を過信するな」
 簡単な小火器の操作を教わった。
「これは64式7.62㎜小銃。自衛隊でも使っている物だ」
 与えられた武器は64式小銃。
(M4カービンとは言わないが、せめて89式小銃が欲しかったな)
 太郎の様にがっかりしている者も多い。それでも銃には変わらない。
「相手は甲冑だって着ているんだ。大口径の威力がある銃の方が安心出来るだろう」
 そう説明を受けた。
 もっとも、89式小銃の初速なら十分甲冑を打ち抜ける。使いこなせなければ宝の持ち腐れ。戦死や敵に鹵獲される事を考えれば、現職自衛官に行き渡っていない89式小銃を太郎達に与える訳もない。
 太郎にとっては復習だが、ニートや引きこもりの連中には初めて触る実銃だった。興奮の声が端々に上がる。
「本物の銃だ!」
「早く撃ちたいな」
 分解結合などの説明はなく、射撃予習を飛ばしていきなり射撃訓練に入った。
 射場は宿営地の外、森の一部が切り開かれて整備されていた。標的は木製の人型。弾痕の位置が布製の的よりもはっきりと分かる。
「撃て!」
 指揮官の号令で引金にかけた指に力を加える。
 弾ける様な銃声が響く。減装薬だがそれでも肩に重い衝撃が来る。
(7.62㎜でこれだ。バレットライフルを子供が扱うのは嘘だな)
 ライトノベルやアニメで、成人もしていない若年層が銃を振り回す描写がある。美少女と兵器の組み合わせは絶大な人気を誇るジャンルだ。
(現実には無理だな)
 太郎も女子供が銃を扱うネット小説を書いていた。思春期特有な妄想で稚拙で幼稚な事に気付いた。恥ずかしさで顔が暑くなってくる。
(帰ったら小説を削除しよう)
 日が暮れる頃、飽きるほどの弾を消費してガスのこびりついた銃を武器係に渡す。洗浄や手入れ、武器の管理は個人ではなく担当者が別にいた。
(自衛隊と違って楽だな)
 夕食は温食で満足できる代物だった。太郎は希望を胸に抱き眠りに付く。

 初陣の機会は直ぐに訪れた。今回の任務は敵勢力圏の農村をエルステッド軍と共同で捜索する事だ。
 ゲリラは農村部を解放区として拠点にしている。ここは戦場で敵は遠慮をしない。自分が死にたくなければ相手を殺せ。子供でも理解できる論理だ。
 村に近付くに連れて、戦場の騒音が聞こえてくる。特徴的な機関砲の射撃音。対戦車ヘリコプターが攻撃を行っている様だ。
 村の見渡せる穀物庫を王国軍が接収し指揮所を開いていた。そこに向かった。
『ピクシー3からトレボー。ナマコ台より車両部隊接近を確認。数は6輛』
「トレボー了解。それは日本人の連中だ」
 エルステッド軍は日本から貸与された無線機を装備している。発電機や電池は買い切りで製造技術はない。配備されているのは今の所、精鋭を集めた国王親衛隊だけだ。
「日本人か。良く来てくれた」
 小隊長にエルステッド軍の指揮官が状況説明をする。
「捜索していたら、奴等いきなり襲って来やがったんだ。どこに潜んでいたのか、かなりの人数が居るし応援を頼ませて貰った」
 親衛隊は近衛騎士団を前身としており、指揮官は生粋の貴族の集まりと言えた。しかし家柄を鼻にかけたり傭兵と侮っている様子は無かった。
「空からの支援で村に釘付けて周囲は固めている」
 戻って来た小隊長が班長達に集合命令を出す。アニマルコマンドーは傭兵となっているが指揮官は自衛隊からの出向組だ。中2病みたいに、いきなり突っ走る事はない。
「さて、早速だが仕事だ」
 待機してる部下達に視線を向ける。刹那的な人生を生きる消耗品だ。
「彼らに給料分の仕事をして貰う」
 細かい指示が出され、各班ごとに動く。
 灼熱の太陽が露出した皮膚を焼き、体から水分を奪う。植物には楽園だが、この世界の環境に慣れていない太郎達にはきつかった。日本製ピックアップ・トラックの荷台で疲労の色を浮かべ太郎は揺られていた。荒地の移動では、幾ら日本製と言えど「乗り心地が良い」とは言い難い。
(目的地はまだか……)
 太郎達の身分は金で掻き集めた傭兵。当然錬度もまちまちだ。戦闘技能はどうなのかと問われれば、少なくともライトノベルの様に主人公無双が出来るとは言えない。たとえ特殊部隊出身でも、スーパーマンではないと言う事実を知るべきだ。当然、太郎も例外ではない。
 班長は陸自から出向してきたベテランの2曹で、半年前からエルステッド王国で活動していると言う。太郎達新任者の教育を担当する助教の一人だ。太郎は班長を一瞥し、思考に戻る。
(全ては虚構か)
 創作物の様に皆が気の合う仲間だなんて事はない。対人関係の苦手な者はどこに行こうが変わらない。
 農村が近付いた。日本と違い1軒辺りの敷地面積が広く、家屋も大きい。
「下車」
 班長の指示で下車を始めた瞬間、先頭車両が爆発した。地面に這いつくばり周囲を観察する。
「あそこだ」
 発言者の指差す方向に注目する。杖を構えた魔導師が家屋の窓に見えた。
 続けて矢弾が降り注ぐ。面制圧効果を重視し命中精度は求められていない。太郎の傍らにも数発が突き刺さり肝を冷やす。
「痛っ!」
 負傷者の悲鳴が聞こえる。防具は鉄帽しかなく無力だった。
 熟練した弓兵の射撃速度は頭を抑えるには十分だった。
(このまま殺られるのか)
 味方の危機を救う者がいた。ヘリコプターが翼をはためかせ駆けつけてきた。
「コブラだ」
 歓声が沸き起こる。上空から襲いかかるAH-1S対戦車ヘリコプター。邪魔をする者を排除する強い意志が銃弾となり、熱いシャワーの様に降り注ぐ。20㎜機関砲の弾丸は当たらなくても、近くを走るだけでかまいたちの様に皮膚を切り裂く。当然、被弾時の損害は半端無い。
「凄いな」
 太郎は感嘆として言葉を漏らした。他の者も初めて見る威力に圧倒されていた。
 味方が草を刈り取る様に次々とやられる光景。ゲリラの士気を砕くには十分だった。戦場では勢いが全てを決める。
「良し、前進するぞ。前方の家屋まで前へ!」
 他の班も走って行く様子が見えた。
 アニマルコマンドーが攻撃に転じ、敵は浮き足立った。照門に照星を合わせ逃亡する背中に銃弾を撃ち込み倒す。躊躇は微塵も無い。初めての殺人は勝利と言う甘美な物であった。
(このまま勝てる!)
 アドレナリンが分泌し精神は高揚する。太郎は初陣での勝利を確信した。
「うわっ」
 一陣の風が吹き荒れた。安っぽい悲鳴を上げて地面に叩きつけられる。
 砂埃に目を細めた視界に影が写った。鋭い牙に固い皮膚、大きな翼を持った生物――高空から降りて来た飛竜だ。
「ド、ドラゴン!」
 ゲリラにとって虎の子の戦力だ。しかし、こちらには対戦車ヘリコプターの支援が有った。AH-1が飛竜に向かう。
 ドラゴンを見た瞬間、太郎の体に震えが走った。死を覚悟させられる。目を閉じて開ければ全て夢だった。そんな事を考えて現実逃避しそうになる。
 咆哮をあげて飛来するドラゴン。尿道が緩み股間が濡れていく。
 地上にいた者から忘れられていた上空支援のAH-1が動いた。20㎜機関砲が吠えドラゴンを横殴りに撃つ。吹き飛ばされる姿を想像するだろうが、破壊力は高く人だと肉片へと変えてしまう。
 ドラゴンは羽をもぎ取られ体を寸断された。搭乗員も消し飛んだ。これで終わりではない。寸断された上半身が体液と臓物を撒き散らしながら慣性飛行で落下してくる。正に肉弾だ。たまたま進路上にいた隊員の頭部に食らい付き、数名を巻き込みながら家屋へと突っ込んで行った。損害は頭部を噛み砕かれた者が即死、圧迫死や重軽傷数名が出た。
「何て化け物だ……」
 肉の繊維と血が通りにぶち蒔けられており鼻を突く臭いが出ている。太郎が込み上げてくる嘔吐感を抑える為、空を仰ぎ見るとAH-1が補給の為、引き揚げていく。
「お前ら、ぼさっとするな。尻を上げろ」
 班長は路肩に吐いている隊員に指示を出す。戦場で立ち止まる事は死に繋がる。
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