飼い主を待ちわびて 福島の被災ペットたち

 福島市郊外の倉庫に犬たちの鳴き声がこだまする。東京電力福島第1原発から20Km圏内の警戒区域やその周辺で、福島県と環境省などが保護したペットのシェルターだ。ここでの3月末時点での収容数は犬と猫を合わせて約180匹。約6割は飼い主が判明しながら、避難生活などで引き取れないケースだという。

 施設は昨年4月に福島県動物救護本部が設置。職員やボランティアが毎日、餌やりや掃除のほか、犬の散歩、健康状態のチェックをする。

 福島県はこれまでに約千匹の犬や猫を保護。飼い主が不明な場合は、一定の飼育条件などを満たせば新たな飼い主に引き渡している。

 震災で心身に傷を抱えたペットは、飼い主が現れるのを待ちわびている。

 警戒区域内で保護され、放射線量の測定を受ける犬。異常がなかったため、福島市の収容施設に移送された=3月17日、福島県南相馬市

 警戒区域内の福島県富岡町で保護された猫。保護活動では防護服を着用する=3月17日、福島県南相馬市

 施設内に並ぶ犬のケージ。福島県は保護したペットの特徴や捕獲場所などをホームページで公開し、飼い主や新たな引き取り手を探している=3月19日、福島市

 置き去りにされ、無人の町をあてもなく徘徊していたペットたち。施設に保護され病気や飢えの心配はなくなったが、小さなケージの中でストレスから下痢を起こしたり、自分の尾をかんだりする犬もいるという。
 ストレスを軽減するため、ボランティアらが施設周辺を毎日10分ほど散歩させる。犬たちもうれしそうにはしゃぐ=3月19日、福島市

 スタッフの女性らに長く伸びた爪を切ってもらう保護された犬。毎日のケージ清掃など衛生管理は徹底されている=3月19日、福島市

 再会した愛犬「コウ」を抱き寄せる荒岡ワカさん(78)。約1年ぶりに福島県いわき市の仮設住宅で一緒に暮らせることになった。
 荒岡さんは昨年3月23日、同県大熊町の自宅にコウを残したまま避難した。8月に一時帰宅した家族が見つけた時は、やせこけて歩行もままならなかった。すぐに施設に預け、健康の回復を待った。
 「自分のペットのようにいたわってくれた」と職員に向かって何度もお礼の言葉を口にしていた荒岡さんは、「いつか大熊町の家に帰って一緒に散歩したい」と話した=3月19日、福島市

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