社説

東日本大震災 被災鉄道の復旧/JR対沿線の問題ではない

 東日本大震災で被災したJR山田線、気仙沼線などの復旧をめぐるJRと沿線自治体の協議がかみ合わない。
 協議は、路線ごとの復興調整会議が主な舞台。東北運輸局が事務局の立場で関わっている。
 協議は初めから復旧財源が問題となり、「鉄路での復旧」を求める沿線側と、バス高速輸送システム(BRT)での仮復旧を優先し「鉄路は確約できない」とするJRが対立、決着は見通せない。
 国はJR線の復旧に際し「黒字企業に財政支援は行わない」との大原則を掲げた。議論が「国費投入なし」から始まれば、反発を招くと分かっていても、JRは沿線自治体に「ゼロ回答」を突き付けざるを得まい。
 しかし、問われているのは国土の均衡の回復ではないか。本来、国が主体的に取り組むべき交通インフラ整備がテーマだ。
 「費用対効果」など公共投資に関する効率論を盾に、国が一歩引いた立ち位置で応じようというなら誤りだ。
 JRが示したプランによれば、気仙沼線の場合、BRT専用路線として使用されるのは全線の6割程度。志津川(宮城県南三陸町)、本吉(気仙沼市)周辺では、仮設住宅や医療施設へのアクセスを念頭に、一般道の走行を想定する。
 だが、専用路線に色分けされた志津川−歌津間などでは、トンネルや高架が甚大な被害を受けており、復旧には鉄路並みの費用が必要となりかねない。交通渋滞が慢性化している気仙沼市南部の市街地も同様だ。
 現在行われている暫定的なバス輸送では、柳津(登米市)−気仙沼間の所要時間は2時間。かつて気仙沼線の快速は、仙台−気仙沼間を2時間で結んでいた。専用路線が十分に整備されなければ、不便は解消しない。
 沿線の市街地では、各自治体の復興計画との調整も求められる。JRは「段階的な専用路線の整備」を言うが、BRTでの仮復旧を目指すにしても、被害の甚大な沿線で定時性を確保するのは容易ではない。
 山田線、大船渡線の問題は、より根源的だ。
 第三セクターの三陸鉄道が重視するのは「縦貫性」だ。大船渡から釜石、宮古を結び、陸中海岸を久慈まで貫くから、観光資源としての価値が生じる。
 釜石−宮古間がバス運行となれば、路線の性格そのものが変わる。岩手県など出資者の反発は当然だ。
 国には、自らが鉄路再建を担い、JRが経営を受け持つ「上下分離方式」のような、大きなアイデアを示してほしい。三鉄の南北リアス線は、復旧への歩みを進めている。JRと沿線が対立して、交通基盤の回復を遅れさせることは避けたい。
 解決への道筋を開くのは、国の関与と責任だ。協議の枠組みも、必要ならば変えていく柔軟性が求められる。
 JRに自助努力を求めた大原則が、沿線とJRの対立の根本的要因となっているなら、国が原則を見直すべきだろう。

2012年04月21日土曜日

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