無言電話9回で逮捕 ストーカー規制法の落とし穴
【政治・経済】
長崎の事件後、摘発強化
「2人は2年ほど前に交際を始めたが、その後破局。中村は諦めきれず、昨年10月14日から11月28日までの1カ月半の間に無言電話を9回かけたのです。脅しや暴力などはないものの、女性が恐怖を感じたため、警察は早めの対応として逮捕。逮捕前、犯人に警告はしなかったようです」(捜査事情通)
昨年12月に長崎県西海市でストーカー男が元恋人の母と祖母を殺害する事件が起きて以来、警察はこの種の犯罪に厳しくなっている。今月は14日に千葉でアルバイト男性(25)が、12日には都内の会社員(36)が女性に脅迫メールを送った容疑で逮捕された。このほか東京や福岡、滋賀、群馬などでストーカー男が逮捕されている。弁護士の山口宏氏が言う。
「市民の安全を守りたいという警察の意欲は評価できますが、生きづらい世の中になったものです。栃木の事件では警告なしに逮捕したそうですが、以前は再三の注意のあと警告、それでも悪質なら逮捕という手順でした。それが、ここにきて厳格化したわけです。もともとストーカー規制法は女性などが不安を覚える行為を連続して行ったときに適用されます。電話で復縁を迫るのは女性が拒絶した場合に逮捕されますが、無言電話や待ち伏せ、見張り、進路妨害などは女性が明確に拒絶しなくても逮捕される可能性がある。弁護士同伴で話し合いに行ってもダメ。2人そろって捕まりかねません。また、“オレの気持ちを彼女に伝えてくれ”と友人に何度も電話をかけさせたりしたら、友人ともども摘発されるかもしれません」
捕まらずに復縁を迫ったり、求愛する方法はないのか。
「法律の適用を受けない手紙を使うか、女性の友人に気持ちを伝えてもらうくらいしかないでしょう。男性が自分の母親や妹みたいな女性を同伴すれば女性の不安が和らぐかもしれませんが、それとて絶対に逮捕されないという保証はありません」(山口宏氏=前出)
ますます逮捕者が増えそうだ。