BSオンライントップ > BSコラム > みんなのうた コラム「発掘プロジェクト」(by 鈴木由美子)

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minna_50_logo.jpg今回は、昨年1月より視聴者の皆さんに『みんなのうた』ホームページで呼びかけている「発掘プロジェクト」に関して、担当の廣岡篤哉チーフ・プロデューサーにお話をうかがいました。「発掘プロジェクト」は、『みんなのうた』の放送開始から50年を迎えた2011年に始まった、「NHKから放送用マスターが失われてしまった作品で、みなさんのお宅に録音、録画したものがあれば、 情報をお寄せください」という呼びかけです。1960年代から70年代にかけては、現在のようにアーカイブス化をする習慣がなく、放送用のビデオテープも高価だったため、再利用のために消去されていたのです。昨年の1月の時点で約1300曲中、500曲ほど失われていました。
しかし、この1年あまりの間に、皆さんの熱心な情報提供のおかげで、続々と発掘されています。

―「発掘プロジェクト」を立ち上げたいきさつをお聞かせください。

廣岡:まず、このプロジェクトの言い出しっぺは誰だったか、ということなのですが、僕からも、制作の現場であるNHKエンタープライズからも自然発生的に出た希望だったと思います。僕のことで言うならば、『みんなのうた』の担当になったときにまずやりたかったことのひとつが、自分が子どものころに聞いていた『みんなのうた』をもう一度見ることでした。職務意識よりはむしろ、自分の欲望といった方が正直なところです。

―それはおもしろいですね。私も45周年の番組をお手伝いしたとき、見たいものがいくつもあったのですが、映像が残っていなくて残念だったのを覚えています。今のように録音や録画の機材があるお宅もあまりなかったですよね。

廣岡:なぜか子どものころから自分の家にはオープンリールやらカセットテープレコーダーのたぐいがあり、たぶん父親が自分の語学の勉強のためにと思って買ったのでしょうが、それを使って小学校に上がったくらいから、ずいぶん熱心にいろんなテレビの音を録音していました。その中の重要な録音ソースのひとつが特撮ヒーローものと『みんなのうた』でした。気に入った曲はノートに歌詞を書き写したりしていたので、当時好きだった曲はいまでもそらで歌えます。最初は外付けマイクですからノイズとか入りまくりで、そのうちラジカセでラジオの放送をとればノイズが入らない、と知ったときの喜びといったら! 途中に中断もありましたが、なんだかんだで中学3年生くらいまでは録音を続けてたんじゃないかなと思います。

―それは、もうすごいことですね。カセットテープが出てラジオから直接録音できるというのは、もう画期的なことでしたからね。

廣岡:そうですね。とはいえ、これはあくまで個人的な趣味と思っていたので、NHKに入局したあと、実際に自分が担当になるとは思っていませんでした。いくつかの偶発的な事情の末に、たまたま自分が担当になることが決まったとき、これは何かの巡り合わせだ、と思いましたが、同時にあまりに多くの曲が失われていることにショックを受けました。あまりに過去の曲数が増えてしまったために、制作体制にそういう過去のものを管理できるようなゆとりがないとか、映像資産で商売をする、という商売っ気がまったくなかった、この放送局の体質というものも関係あるかもしれません。とやかく言ってもしょうがないのですが、やはり50年という節目を経過したことでもあるし、人がやってきた、過去の仕事に対してリスペクトを払うことは、これから物を作っていくためにも絶対に役に立つ、と思ったので、とにかくできることから始めようと。
NHK全体としても「NHKアーカイブス」を中心に過去の番組を発掘しようという呼びかけをしているのですが、それを『みんなのうた』独自の活動としても位置づけようと思いました。
昔、「ビデオギャラリー」という番組で、やはり「天下御免」というドラマを、主演の山口崇さんがご自分で録っておられた、という話を思い出し、自分だってせっせと録音していたじゃないか、ならば絶対にファンも多い番組だし、ある程度の録音や、うまくすれば映像も集まるに違いない、と思っていました。

―「天下御免」は私もテレビ50年のときにドラマの歴史を振り返るという番組で、8ミリで放送中の番組を撮影したという映像を使いました。それだけが唯一残っているものでしたね。テレビ50年のときも、ご家庭で収録されている貴重なものをお寄せください、というような呼びかけがありましたね。『みんなのうた』では昨年の1月1日にホームページのリニューアルと同時に呼びかけましたね。

廣岡:ちょうど当時、『みんなのうた』のホームページも、ごく簡単なものしかなかったので、楽曲についてのデータベースも整理して、公開できると、いろんな方に喜んでいただけるし、情報も集めやすくなるだろう、と。いろいろな部署からもサポートしていただけるポジティブな動きがあり、2011年のお正月特番をきっかけにいろいろと立ち上げることになりました。実際のところ、現場はお正月特番を作りながら、ホームページの大改修を進めていたので大変だったと思います。

―その後の反響はいかがですか?

廣岡:普通のリクエストフォームと間違えて自分の聴きたい曲のタイトルを送ってこられる方も少しはありましたが、基本的には趣旨に賛同していただける方から続々と情報が寄せられてきました。多かったのは、ビデオにせよ、音声テープにせよ、大量に保存している方からの大口の情報です。たぶん、その方たちは『みんなのうた』ファンとして、以前から熱心に番組を応援してくれていた方々といえるでしょう。特定のアーティストのファンの方からも、逆に専門に特化した情報、というのが寄せられるケースもありました。全般的に、皆さんの中でも、自分だけでコレクションするよりは、ファン全体でこれを資産として共有したい、という意識が高いんだと思います。

―それは、うれしいことですね。『みんなのうた』の番組そのもののファンの方が多いのでしょうね。現在、どのくらいの情報が寄せられているのですか?

廣岡:情報の件数で言うと、現在500件弱のメールが届いています。新発見の音源・映像については、音声が195件、映像が76件寄せられています。60年代末のものの音声に関しては相当発見され、状況が改善できました。また、70年代の映像作品についても、まだまだですが、貴重なものが次々に見つかっています。ここから先が大変だと思いますので、今回のような放送をすることで、さらにいろんな方に関心を持っていただければ、と思っています。すべての情報に対して、テープやビデオを送っていただいていると、処理しきれないので、保存されているメディアの状況などから、新発見のものや、現在こちらにある素材の状況を改善できそうな素材に限定して、お預かりしてコピーをとらせていただいています。さらに、試聴・試写して、「そのまま放送に耐える」か、「資料としては貴重だけど放送での視聴にはきびしい」か、などを考えながら、「発掘済み」として認定するかどうかを複数のスタッフで判断しています。スタッフは全員日常業務を抱えながらの並行作業なので、ちょっと時間はかかりますが、長い目で見守っていただければと思います。

―地道で大変な作業ですね。でも、これまで見ることができなかったり聞けなかったりした歌が、また見られるようになるのはうれしいことです。先月の「愛されて50年♪みんなのうたリクエスト大全集」(NHK-FMにて2月放送)でも発掘された楽曲を紹介していましたが、とても新鮮でした。廣岡CPにとって、これはという楽曲や映像がありましたか?

廣岡:自分が知っていた作品の範囲では、アニメ作品の相当数は前から保管されていたりしたのですが、新発見ものの中では、「ラッパと少年」(1969)の心象風景の表現はすばらしいと思います。楽曲も沁(し)みてきますが、音に細かく反応しながらも、慌ただしくならない映像の間の感覚がすばらしいです。「イナレオタ ~さかだちのうた~」(1969)のリズミカルな表現も、この時代の技術でもとてもテンポよく音楽とのシンクロで曲のユーモアを引き出していますね。「ながいなさんとはやいなさん」(1974)は見た記憶がなかったのですが、いま新作であってもおかしくないと思うくらいに鮮烈です。
また、今回の発掘では、実写の映像がたくさん見つかっているのが非常にうれしいです。「ボクたち大阪の子どもやでェ」(1976)は路地裏のハンドベースでバントするせこいシーンとか(笑)、すごくよく覚えてました。お下げの女の子の後ろ姿も、ちょっとありがちな日常の風景として、心に残ってるんですよね。それから、昔はそれほどとも思わなかったですが、改めて聞くと「気球にのって」(1977)は曲がすばらしいですね。「シンドバッドの船」(1977)も大塚博堂さんの声が曲のスケールにマッチして大好きでした。いま作り手として見ると、実写ものの一部はスケール感がそれなりなので、たぶん予算の制約とかもあったんじゃないかと思います(笑)。だから後に残そうという思想が薄めだったんじゃないかと。それでも、こうして見ると少年ドラマのシーンをつないだ形の「巣立つ日まで」(1977)も感慨深いですし、「ともだちはいいもんだ」(1977)「ビューティフル・ネーム」(1979)「大空から見れば」(1978)なども、時代を作ったうたですよね。だから、やはり保存はおろそかにしちゃいかんです、はい。

―お話をうかがっていると、全部見たくなります。わくわくしてきました。
そういう方のために3月16日から「みんなのうた発掘スペシャル」という番組が放送されています。視聴者の皆さんからの反応はいかがですか?

廣岡:今回は、「じっくり曲に集中できてよかった」という声をいただいたのがうれしかったです。特にうれしかったのは、ツイッターで3か月の赤ちゃんが録画を見て激しく反応している、という情報があったことです。なつかしい、という声も聞きましたが、初めて聴いた曲でも、そのクオリティーが時代の傾向とともに伝わっていると思います。ある人は児童合唱団の曲が好きだし、ある人はフォーク・ポップス寄りの曲の方が盛り上がったりしますが、それはただ時代だけのものでなく、それを超えて個人に訴えかけているメッセージのレヴェルの話だと思いますので。

―この他にやってみたいものはありますか?

廣岡:「ラジオで発掘特番」をやりたいです。音声だけ発掘されて、かなりいい音質でお聞かせできるものが、映像よりもむしろたくさんあります。リクエストを中心にすると、既に有名な曲が多くなって、発掘曲はどうしてもマイナーな位置づけになってしまいます。リクエストが少ないのは聞く機会がなかったからであって、曲のクオリティーが低いわけではありません。そして、フルサイズでかけたいです。

―是非、聞きたいですね。今日はありがとうございました。

 

☆みんなのうた「発掘スペシャル」今後の放送予定
2012年3月23日(金)(22日深夜)
【総合】午前2:05~
2012年3月26日(月)(25日深夜)
【総合】午前2:10~
詳細はこちら

『みんなのうた』の放送予定は以下の通りです。
総合テレビ 月~金 午前10時55分~ 月~土 午後1時55分~
教育テレビ 月~金 午後0時45分~ 月~木 午後7時50分~

再放送のリクエストや感想は番組ホームページで募集しています。
※詳細は、番組ホームページをご参照ください。



●廣岡篤哉チーフプロデューサー プロフィール
1987年入局。主に子ども番組を中心に「まんがで読む枕草子」、「まんが日本史」、「週刊こどもニュース」、「ストレッチマン」、「天才てれびくん」シリーズ、「天才ビットくん」などを担当。現在「みんなのうた」「ビットワールド」の制作統括。

鈴木由美子(すずき・ゆみこ)

フリー・ディレクター。「ふるさと日本のことば」「アナウンサーにQ」「スタジオパークからこんにちは」他多数の番組を担当。 みんなのうたは「今日は一日みんなのうた三昧」「グラスホッパー物語」「リスに恋した少年」などに参加。「ありがとう!グラスホッパー」「ピースフル!」キャスティング ディレクターもつとめる。

鈴木由美子(すずき・ゆみこ)

投稿時間:12:00 | カテゴリ:みんなのうた

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