秋田県内のクマ牧場の飼養状況等に関する質問書

　秋田県には、八幡平クマ牧場、阿仁クマ牧場という2つのクマ牧場があります。
　今年の5月、会員から八幡平クマ牧場に関する情報が寄せられました。ALIVEでは、10月末に現地調査を行い、その結果を踏まえ、秋田県へ以下質問書を提出しました。

観光客が投げ入れたパンを激しく奪い合う。	力の弱いクマは満足に餌を食べることもできずに痩せ細っている。

秋田県内のクマ牧場の飼養状況等に関する公開質問書

2011年11月15日

秋田県知事　佐竹敬久　様
所轄：生活環境部生活衛生課　御中

　当会は、全国規模の動物保護団体として、1991年以降、ＷＳＰＡ（世界動物保護協会）と共に、全国のクマ牧場の実態調査を行い、劣悪なクマの飼養環境の改善などを要望してまいりました。

　 現在、国内には８つのクマ牧場がありますが、そのうちの２つ（八幡平クマ牧場・阿仁クマ牧場）が秋田県に存在しています。中でも、八幡平クマ牧場については、クマの健康や福祉、衛生面などに大きな問題があり、施設も老朽化し観光客などへの人的被害も懸念されることから、複数回にわたり、貴県に指導・改善の要望を出してきた経緯があります。

　 2011年5月、会員からの八幡平クマ牧場に関する情報提供を受けておりましたが、10月末に当会が独自に行った現地調査の結果を踏まえ、以下の点について質問をさせていただきます。

１．クマの給餌について

　八幡平クマ牧場・阿仁クマ牧場においては、いずれの施設も観光客による「餌やり」を有料で行っております。クマが餌を欲しがって様々なポーズをとって人にアピールすることが、観光客を満足させる一因となっているからです。特に、八幡平クマ牧場においては、「餌やり」を行うことにより、クマ同士の激しい喧嘩が引き起こされます。一つのパンのかけらを巡って、雌雄を問わず攻撃性が発揮され、悲惨とも言える「餌の奪い合い」が起きています。なかには、極度に削痩した個体が複数見られることから、日常の給餌内容・頻度が十分ではないことが考えられます。
　八幡平クマ牧場、阿仁クマ牧場が、それぞれ、どのような内容の餌を、どのくらいの量及び回数で、どのような方法によって与えているのかをお知らせください。

２．クマの飼養環境について

　八幡平クマ牧場には、３つのコンクリート・ピットがある他、老朽化した狭い檻が６ヶ所に設置され、その中にクマが高密度で閉じ込められています。多くのクマに常同行動が見られる他、喧嘩や威嚇による外傷を負ったクマが複数頭確認されました。施設内の環境状態は劣悪であり、檻の床は常に水溜まりができて、悪臭が漂っている状態です。 また、ピットにも檻にも雨風をしのげるスペースは一切無く、常時吹きさらしの状態になっています。飼育下のクマの福祉につながるような環境エンリッチメントは、全く存在していません。
　八幡平クマ牧場では、日常的にどのような清掃および消毒を行っているのか、お知らせください。

３．クマの繁殖について

　八幡平クマ牧場では、雌雄混在で飼養されており、交尾行動が確認されています。十分に繁殖できる年齢と思われるクマも存在しているにもかかわらず子グマが見当たらないのは、妊娠出産が不可能な環境であること、また出産しても子グマが生育することが不可能であること等の事態であることが推測されます。繁殖行為について飼養主がどのような認識をもち、どの程度状況を把握しているのかをお知らせください。
　阿仁クマ牧場においては、繁殖制限が行われているものと推定されますが、どのような繁殖制限措置を講じているのか、お知らせください。

４．他自治体から導入されたツキノワグマについて

　八幡平クマ牧場には、最近導入されたと思われる、ツキノワグマが二頭、檻飼養されています。看板には、「愛知県豊田市から母子３頭寄贈」と書かれていましたが、母グマは見当たりませんでした。
　 いつ、どのような経緯で、これらのツキノワグマたちが、豊田市から運ばれて飼養されるようになったのか、事実確認をお願いいたします。

５．冬季閉園中のクマの飼養状況について

　八幡平クマ牧場・阿仁クマ牧場、共に、冬季は閉園になっております。この間のクマの世話等はどのように行っているのか、冬眠をさせる場合にあっては、どのよう方法で行っているのかを、お知らせください。

６．クマの個体識別の実施について

　 八幡平クマ牧場のクマたちには、個体識別措置（マイクロチップ等）が行われているのかどうか、またもし行われていない場合にはその理由と対策をお知らせください。
　 阿仁クマ牧場のクマたちについては、耳標がある個体とない個体がいますが、個体識別をどのように行っているのかをお知らせください。

７．特定動物飼養施設の立入調査の実施について

　 「特定飼養施設の点検を定期的に行うこと」は、動物の愛護および管理に関する法律の施行規則第20条においても定められていますが、八幡平クマ牧場のように長年にわたって問題となってきた施設については、行政側も立ち入りの回数を増やし、精度の高い監視を継続していく必要があるはずです。
　 八幡平クマ牧場は、施設が老朽化しているだけでなく、檻については、観光客とクマとの接触の危険性が高く、いつ事故が起きても不思議ではない構造になっています。特に「餌やり」の際には、クマたちが檻の鉄棒の間から手や顔を出し、きわめて危険な状態です。
　 この10年以内に、八幡平クマ牧場・阿仁クマ牧場には、どのぐらいの回数立入調査を行っているか、またその指導内容について、お知らせください。

８．行政の指導について

　 2003年12月に、当会及びＷＳＰAのメンバーが貴県を訪れ、八幡平クマ牧場については縮小・閉園の方向を確認しておりますが、その後行政としてどのように指導されてきているのか、その経緯をお知らせください。

　 以上、ご多忙中のところ申し訳ございませんが、ご回答いただけますよう、お願い申し上げます。

⇒　秋田県内のクマ牧場に関する質問書と回答

＜こちらもごらんください＞

●定山渓クマ牧場に関する要望書（2011.8）

●日本のクマ牧場の実態調査レポート

●日本のクマ牧場を実態を指摘したＷＳＰＡのキャンペーンビデオ

●中国のクマ施設（胆汁搾取）の実態を指摘したＷＳＰＡのキャンペーンビデオ

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