富山のニュース 【4月20日01時45分更新】

点検技術の継承に懸念 富山県内、水力発電止められず

水力発電で使う水車や発電機の分解、組み立ての訓練をする作業員=2010年10月、富山市の北陸電力上滝発電所
 福島第1原発事故を受けた北陸電力や関西電力の原発停止で、富山県内の水力発電所が フル稼働となり、発電を中止して行う大型水車などの分解・点検や発電所周辺の工事がで きない状態が続いている。夏場の電力不足も指摘される中、作業を開始する見通しは立っ ておらず、特に大型水車の分解・点検には専門技術が必要とされることから、関係者の間 では技術の継承を懸念する声も出始めている。

 北陸電力は昨年夏に3カ月程度をかけ、富山市の有峰第一〜第三(出力40万5千キロ ワット)と和田川第二(同12万キロワット)の水力発電所で、大型水車や発電機の分解 ・点検、変圧器の補修などを行う予定だった。しかし、電力供給が逼(ひっ)迫(ぱく) したため、いずれも2013年度以降に先送りした。大型水車などの分解・点検は10年 から15年に一度の作業だが、北電は「火力だけに頼るわけにいかず、緊急性がなければ 大型の水力発電は止められない」(地域広報部)と説明する。

 一方、関西電力は昨年1月、黒部川第二など管内20カ所の水力発電所で、10年をか けて大型水車や発電機などを交換する設備更新を実施すると発表した。しかし、黒部川第 二発電所は作業に着手できない状態が続き、放水路の付け替え工事などを進めている新黒 部川第二発電所でも、停電を伴う工事は取りやめている。

 関電北陸支社は「関西の電力事情は北陸より深刻で、1ワットでも多く送らなければな らない。富山の水力発電所でも当面は停電を伴う作業はできない」(総務・広報グループ )としている。

 こうした状況に、大型水車などの分解・点検を担ってきた県内企業からは技術の継承に 懸念が出ている。北電や関電の大型水車などの分解・点検に実績がある「でんそく」(富 山市)の櫻井賤男社長は「経験がものを言う仕事であり、このままでは若手の育成もでき ない。水力発電所の設備は壊れるとさらにコストがかかるため、本来は点検することが望 ましい」と指摘している。

 北陸の水力発電 北陸電力は北陸三県を中心に128カ所、富山県内に72カ所の水力 発電所を持っている。水力発電の割合は全国の10電力会社でトップで、2010年度の 発電電力量62億キロワット時のうち35.6億キロワット時を県内で発電している。関 西電力北陸支社は富山県を中心に36カ所の水力発電所で年間約70億キロワット時を発 電し、すべて関西に送っている。両社以外では、富山県、金沢市のほか電源開発(東京) などが水力発電所を持っている。


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