美しすぎる市議　居住実態めぐり当選無効

新座市選挙管理委員会の当選無効決定について記者会見する立川明日香市議（共同）

　埼玉県新座市の“美しすぎる市議”が２０日、当選を取り消された。同市選挙管理委員会はこの日、今年２月１９日投開票の市議選で初当選したタレントの立川明日香市議（２７）について、届け出ていた市内の住所には、公選法が定める「３カ月以上の居住実態」が認められなかったとして、当選を無効にした。立川市議は昨年９月に都内から同市へ転入。しかし、電気や水道、ガスの使用状況や家族の証言などから、居住実態がないと判断された。同市議は県選管に審査を申し立てる意向。

　立川市議はこの日、市選管の決定を受け、新座市役所で会見した。「混乱している。今後のことは弁護士と相談する。市の決定には疑問がある。県選管に申し立てます」と、市選管と争う姿勢を示した。ただ、当選前の居住状況については明言せず「今後、市民の皆さんに説明する機会を設けたい」と話すにとどめた。立川市議は県選管に審査を申し立てることができる。さらに、県選管も当選無効と判断した場合も、高等裁判所への申し立てが可能だ。

　立川市議は昨年９月２０日に東京都練馬区から新座市内に転居。しかし電力の利用が少なく、水道は今年２月１日まで、使用量がゼロだった。都市ガスは当選後に契約していた。練馬に住む夫や義理の両親も「当選直後まで練馬で一緒に住んでいた」と証言。告示日前日の３カ月前からの居住実態がないと判断された。新座市の住民が立川市議の当選の効力について、選挙後に異議を申し出たため、市が調査していた。

　同じ党派のある市議は「立川さんはタレントの収入だけでは選挙活動ができず、借金をしていた。離婚調停中で、夫にも頼れない。新座の家ではお風呂にも入らず、食事も作らないで、光熱費を切り詰めていた。プライベートの事情を考えてほしい」と訴えた。３歳の娘の養育権を得るために、政治家として自立する必要があるという。

　立川市議は養護施設で育った経歴から、「社会的弱者を救いたい」と考え、昨年に政治団体「立川あすか街づくりの会」を設立。モデル活動と並行し、前住所の練馬に近い新座市議選に出馬した。立候補３２人中５番目の２０６７票を集めて初当選。その後、化粧品会社のテレビＣＭに出演するなど、「現役モデル市議」として話題になった。ちなみに市議の報酬は、月額４０万円（税込み）。

　市役所を訪ねた６８歳女性は「彼女に投票した人は、残念に感じると思う。身を引いた方がいい」。２０歳女性は「議員がどこに住もうが問題はないと思う」と話すなど、市民の間でも賛否両論があった。

　◆市区長村議員選の被選挙権　公職選挙法で規定されており、同選挙権があり満２５歳以上であること。選挙権の要件には、引き続き３カ月以上その市区長村内に住所のある日本国民とあり、これは被選挙権にも適用される。つまり、告示日前日の３カ月前からその市区町村に生活実態があることが必要。

　◆埼玉県内で当選議員の居住実態が問われた過去の例　今回が３度目で、当選無効の決定は初めて。１９９１年８月４日の旧岡部町議選、０７年８月２６日の杉戸町議選の後、当選議員の居住実態がないという住民の異議申し立てがあった。旧岡部町では町と県、杉戸町では町が申し立てを棄却。議員の居住実態を認め、被選挙権はあると判断した。

　◆立川明日香（たちかわ・あすか）本名・半沢優子。１９８５年（昭６０）３月３０日、東京生まれ。両親の顔を知らず、３歳まで乳児院、１８歳まで養護施設で育つ。国際短大（東京）進学後、米テネシー州の大学に１年間留学。０５年の帰国後にスカウトされ、芸能活動を始める。０８年に結婚し、女児を出産。１０年に宅地建物取引主任者の資格を取り、不動産会社で勤めた後、再び現在の芸能事務所にスカウトされた。身長１６２センチ、Ｂ７８－Ｗ５８－Ｈ８５センチ。血液型Ｏ。

　［2012年4月21日10時2分　紙面から］