Updated: Tokyo  2012/04/22 01:32  |  New York  2012/04/21 12:32  |  London  2012/04/21 17:32
 

「重慶モデル」否定、貧富の格差拡大に悩む中国にも損失か

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  4月20日(ブルームバーグ):中国の中央部に位置する重慶市の自宅近くの路上で1足2元(約25円)の靴磨きを受けながら、ワン・ユンチンさんは同市共産党委員会書記を解任された薄熙来氏に感謝して当然だと話す。

元農民で母親でもある41歳のワンさんは、「生活が確実に良くなった」と言う。薄氏が進めた公共住宅事業で建てられた居住区の一角に住むワンさんは、同市を走る路面電車を清掃するという仕事を得たが、それに伴う福利厚生も受けている。「自分自身のすみかを持てて、大家の都合で出ていかなければならなくなることを心配する必要もない」と語る。

重慶市の人口は2900万人。カリフォルニアを除けば米国のどの州よりも多い人々が住む。その市のトップとして薄氏が推し進めた経済モデルの恩恵にあずかっている1人がワンさんだ。重慶市は中国の1級行政区としては最も高い成長率を記録。薄氏はこうした高度成長と、そのブームに置き去りにされた数百万人の農村部からの移住者が流入するのを阻止する対策とのバランスを保つことを目指した。

薄氏(62)の夫人は今や殺人の疑いで捜査対象となっている。薄氏の失脚は、海外投資家を歓迎し士気を高揚させるプログラムと巨額の公共事業を組み合わせるといういわゆる「重慶モデル」に影を落としている。

シンガポール国立大学東アジア研究所の薄智躍上級研究員は、「薄熙来氏が政治的に力を失ったことで、重慶モデルの悪者扱いが始まっている。その長所は無視されている。薄氏失脚は重慶市にとって大きな損失だし、ある意味では中国全体にとってもそうだ。重慶モデルは国全体を統治するやり方も示唆していた」と述べる。

格差

総額1兆元の借り入れを基に進む重慶市のプロジェクトを今率いるのは薄氏が去った後に同市の役職に就いた新たな指導者らだ。低家賃の公共住宅の建設や植林活動を積極的に手掛けた薄氏は、中国の経済的成功を一般市民にも感じさせようと毛沢東時代の精神復活を呼び掛けるキャンペーンを展開した。

中国の経済成長率は過去30年間の平均で年10.2%。この間、膨大な数の農民が都市に流れ込んだ。薄研究員によれば、ジニ係数で測る所得格差は、社会不安につながりかねない危険な水準を突破している。

ロンドンの情報提供会社揚子江ビジネス・サービシズのマネジングディレクター、チャン・ティンティン氏は、薄氏の経済運営は重慶市民に中国の別の都市と違う感覚を与えていたと指摘、「街角の人々はハッピーで、指導者のことを良く言っている」と述べる。「貧富の格差が拡大し、大半の人々がそれを不快に思っているときに薄氏は市民の支持を勝ち取った。薄氏が重慶市でしたことは、国の治め方について中央政府に重要な教訓をもたらした。不和が拡大するときにどうやって国民の支持を得るかということだ」との分析だ。

原題:Bo Ouster Undermines Model Crafted to Bridge China’sWealth Gap(抜粋)

記事に関する記者への問い合わせ先:北京 Kevin Hamlin khamlin@bloomberg.net

記事についてのエディターへの問い合わせ先:Paul Panckhurst ppanckhurst@bloomberg.net

更新日時: 2012/04/20 15:28 JST

 
 
 
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