ビタミンE解説

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A.ビタミンEとは?
ビタミンEは脂溶性のビタミンで、天然にはα-、β-、γ-、δ-トコフェロールと、α-、β-、γ-、δ-トコトリエノールの8種類が存在します (15) 。その中でも、α-トコフェロールが最も生理活性が強く、生体内のトコフェロールの90%を占めています (9) 。ビタミンEは細胞膜や脂質に豊富に存在し、それ自体が酸化されることによって、多価不飽和脂肪酸の酸化を防止します (15) 。食品では、植物油 (コーン、大豆、サフラワー油) や小麦胚芽、種実類などに多く含まれます (4) 。


B.ビタミンEの供給源になる食品

主な食品のビタミンE含有量は以下の通りです。 (可食部100 gあたり)


Tr (trace)・・・微量。含まれてはいるが、成分の記載限度に達していないもの。

C.ビタミンEの特性 (単位・化学的安定性)
ビタミンEは有機溶媒には溶けますが、水には溶けません (16) 。空気中での酸化は、光、熱、アルカリによって促進されます (18) 。近年の成分表ではビタミンE効力 (IU) に代えて、ビタミンEとしてα-,β-,γ-,δ-トコフェロール重量 (mg) の成分値が示されています (6) 。なお、mg×1.5でIUに変換することができます (15) 。


D.ビタミンEの吸収や働き
摂取したビタミンEは、胆汁酸などによってミセル化された後に小腸から吸収されます。小腸で吸収されたビタミンEは、キロミクロンに取り込まれてリンパ管を通り、肝臓に運ばれます。肝臓では、ビタミンE同族体 (類似の化合物) のうち、α-トコフェロールが優先的に輸送タンパク質に結合し、他のビタミンE同族体は肝細胞内で代謝されます。α-トコフェロールは、輸送タンパク質に結合することで肝細胞内を輸送され、今度はVLDLに取り込まれて血流中に移行し、LDLに変換されて各組織に運搬されます (1) 。生体内でのビタミンEの代謝は以下の通りです (1) (18) 。



ビタミンEは生体膜に存在し、生体膜や血中リポタンパク質に多く含まれる不飽和脂肪酸の酸化を防ぐ働きをしています (17) 。

E.ビタミンE不足の問題
ビタミンE不足はどのようにして起こるのか?
無β-リポタンパク血症の患者や、長期に渡って脂質吸収障害があった場合は、ビタミンEの吸収が減少するため、血漿中のビタミンE濃度が異常に低い値になります (15) 。
また、未熟児では、多価不飽和脂肪酸を多く含み鉄を添加された食事によって、血漿中のビタミンE濃度が低下する溶血性貧血が起こることが確認されています (9) (15) 。


ビタミンE不足の判断基準
ビタミンEの血清濃度は、総脂肪とコレステロール濃度に関係があります。そのため、血清ビタミンE濃度の評価は、脂質濃度を踏まえて評価する必要があります (18) 。

ビタミンEが不足すると、どのような症状が起こるのか?
ビタミンEが不足すると、神経や筋障害の症状がみられることがあります (15) 。しかし、ヒトではほとんどみられません (16) 。

F.ビタミンE過剰摂取のリスク
通常、一般的な食事内容でビタミンEを過剰摂取することはほとんど考えられません。ただし、最近の報告において、サプリメントとして過剰摂取すると死亡率が高まるとの報告も出され、過剰摂取に対する警鐘となっています (1) 。

G.ビタミンEはどのぐらい摂取すればよいか?
各年齢別のビタミンEの食事摂取基準 (日本人の食事摂取基準2010年版) は以下の通りです (1) 。


H.ビタミンE摂取状況
平成21年の国民健康・栄養調査では、通常の食品から男性で平均6.8 mgα-TE、女性は平均6.4 mgα-TE摂取しています。また、補助食品から男性は平均1.2 mgα-TE、女性は平均2.1 mgα-TE摂取しています (14) 。
*α-TEはα-トコフェロール当量の略です。

I.栄養機能食品としての関連情報
ビタミンEは、栄養機能食品として表示許可されています。
・上限値は150 mg、下限値は2.4 mgです。
・ビタミンEの栄養機能表示
「ビタミンEは、抗酸化作用により、体内の脂質を酸化から守り、細胞の健康維持を助ける栄養素です。」
・注意喚起表示
「本品は、多量摂取により疾病が治癒したり、より健康が増進するものではありません。1日の摂取目安量を守ってください。」

栄養機能食品の表示に関する基準の詳細については、こちらの資料を参照してください。→資料1資料2

参考文献

1.日本人の食事摂取基準 2010年版:第一出版
2.栄養学総論:三共出版株式会社
3.ビタミンハンドブック (1)  脂溶性ビタミン:化学同人
4.専門領域の最新情報 最新栄養学:建帛社
5.FOOD CHEMISTRY THIRD  EDITION:Owen R.Fennema
6.五訂増補日本食品標準成分表:文部科学省科学技術・学術審議会資源調査分科会
8.DIETARY REFERENCE INTAKE
9.薬理書 第9版:廣川書店
11.Q&A 保健機能食品制度の手引き:新日本法規
15.ビタミンの事典:朝倉書店
16.生化学辞典 第4版:東京化学同人
17.ヒューマン・ニュートリション第10版:医歯薬出版
18.食品機能性の化学:食品機能性の化学編集委員会
14.平成21年国民健康・栄養調査報告