2012年4月19日木曜日

上杉隆氏とのインタビュー

Deutsche Welle
Im Gespräch „Die Lüge hat System“
ドイッチェ・ヴェレ(ドイツ国際放送)
「嘘のシステム」日本のジャーナリスト上杉隆氏とのインタビュー

原文はこちら:http://www.dw.de/dw/article/0,,15888808,00.html

上杉隆氏は日本では有名なジャーナリストだ。彼は福島原発をもつ東電を敵に回している。彼は現在ドイツ各地を講演し、日本の情報隠蔽政策について報告している。

ドイッチェ・ヴェレ:もう1年以上前のことですが、上杉さんが日本の放送局TBSの番組で、福島第一原発の3号機から放射能が出ていると話したら降板になったということですが、どうしてそういうことになったのですか?

上杉隆:2011年3月11日の私が担当していたテレビ番組で(訳注:その番組が2011年3月11日に行われたわけはないが、そう記事には書いてある)私は東電に、情報の隠蔽はやめて、住民に真実を告げるよう要求しました。そのあとで上司に呼びつけられ、首だ、と伝えられました。私は何度もその理由を聞きました。というのも、契約がちょうど2週間前に更新されたばかりだったからです。しかし上司は、上役からの指示だ、としか言いませんでした。その上役からは2週間後に手紙が届き、単に契約が終了したに過ぎない、と告げてきました。私の番組もそのほかの番組も終了になり、その番組で働いていた28人のチームのメンバーも解雇されました。

DW:それがどのように東電とつながっているとお考えですか?

上杉:私にわかり始めてきたことは、東電に対し批判的な意見を持っている人は、誰でもマスメディアから締め出しを食う、ということです。それは私だけでなくほかのジャーナリストも経験していることです。それもここ50年以来ずっとそうであるようです。電力会社はマスコミと接待に対し莫大な予算を持っています。日本の記者クラブもそこから甘い蜜を吸っています。東電の社長はジャーナリストを夫婦連れで中国など、接待旅行に招待します。そして招待されたジャーナリストたちは豪華なホテルに泊まり、高級レストランで食事をします。東電に少しでも批判的なことをいえば、このクラブから締め出されるという罰を受けるのです。

DW:地震学者の石橋克彦氏は1997年にすでに地震による原発事故のことを警告しています。電力会社はそれに対し、日本の原発はどれも完全に耐地震設計で安全だといっていました。経産省は原子力ロビーとずっとこの見解を分け合ってきたわけですが、今日ではそれはどうでしょうか?

上杉:まったく変わっていません。そして石橋氏だけでなく、ほかにも警告していた人たちはいたのです。しかし、記者クラブは常に、そのような警告が日本のマスコミに出ることを防いできました。解雇されたのはジャーナリストだけではありません。たとえば前の福島県知事、佐藤栄佐久氏も、ジェネラル・エレクトリック社の報告を知ってから原発の調査を始めました。2日後に彼は汚職疑惑で逮捕されました。それも、検事は賄賂の金が流れたとは一度として言っていないのに、です。起訴内容は無形の賄賂、ということになっています。それでも佐藤氏は有罪となり辞職しなければなりませんでした。あとの裁判で彼は無罪を言い渡されましたが、このことは日本のマスメディアでは報道されませんでした。


日本の検閲

DW:批判的な専門家たちは、フクシマでは、東電による安全対策に欠陥があったと判断しています。上杉さんは、一般に言われているとおり津波と停電が原因ではなく、地震だけで炉心溶融と水素爆発が起こり、もしかしたら3号機の原子炉は完全に爆発したのではないかとも考えていらっしゃいます。これについては、どの程度自由に調査したり報道したりできるのでしょうか?

上杉:1つだけ例を挙げます。フクシマの3号機の爆発の写真ですが、これは、おそらくヨーロッパではかなり知られている写真だと思います。しかし日本ではそうではないのです。事故から1年経った今でも、これはマスメディアにはまだ許可されていないのです。いまだに日本政府もマスコミも、あそこでは爆発などなかった、と主張しているのです。この写真を公に見せてしまえば、矛盾が明らかになってしまうからです。

DW:原子力発電にかかわる費用や危険を国が請け負ってきたからこそ、原子力による電気は日本では、安く、東電など電力会社にとっては有利なものだったわけですが、それは日本ではどれだけ知られているのでしょうか?

上杉:日本人の1%以下しか、そのことを知っていないのではないかと思います。そしてその人たちですら、フクシマの事故があって、インターネットで調べて初めて、その事実を知ったという人がほとんどだと思います。私は42歳ですが、私も学校で習いました。原子力はクリーンで安全で安い、その他のエネルギー源は危険で高い、と。こうした公式の意見は今日でも変わっていないと思います。洗脳のようなものです。ツイッターで最新のニュースを手に入れました。政府は、事故のあった大飯原発を再稼動させることに決定したということです。日本人のほとんどはそれに対し、質問もしないのです。

DW:補償問題はどうなっていますか?

上杉:ここでもマスコミ、学界、政治と経済の深いつながりがはっきり見られます。福島のゴルフ場経営者が、放射能の測定値が高いので裁判所に損害賠償を求めて訴えた件がありましたが、原発から飛び散った放射能は東電のものではない、という理由で仮処分請求が却下されました。ほかの裁判所も、この判決を基準に判決を行っています。
これまで、少なくとも12万人の人間が被曝し、6人がなくなり、10人が怪我をし、そして60人が行方不明となっています。これは、日本のマスメディアでは報道されない、政府が発表した数字です。そして政治的にも司法的にも、誰または何がそれぞれ原因または原因を引き起こした責任者なのか、ということを調べるための、なんの調査も行われません。

健康リスクは仕方なく受け入れる

上杉:いわき市のあるお母さんが話してくれたことですが、政府は子供たちにバッジを配布し、それをまたあとで回収しました。このバッジは、子供たちがどれだけの放射能を被曝したか測定するために配られることになったのです。それで、そのお母さんが、自分の子供の測定結果を聞こうとしたら、これは個人データであり、データ保護の理由から知らせられない、という理由で教えてもらえなかったというのです。

DW:それで上杉さんは、ご自身の体験からどのような結論を出されますか?

上杉:真実を見ず、読者や視聴者のことを考えない日本にいるたくさんのジャーナリストにプロテストする意味で、私はジャーナリストという職業を、返上しました。私は彼らと同じ職業名を使うことを恥じます。現在私は自由報道協会というNGOの組織の代表を務め、記者会見を行い、批判的な専門家を招待して話を聞いたりしています。
自由になる時間の半分を、私は福島で過ごし、自分のガイガーカウンターで測定し、団体や医者や教師などの個人に、危険が迫った時のことをテーマに情報活動を行っています。信じられないかもしれませんが、本当です。福島県では、放射能という言葉はほとんど耳にしないのです。ほとんどの人が、まったく普通の日常であるかのように暮らしているのです。これを、私は変えたいと思っています。

インタビュー:ウルリケ・マスト=キルシュニング
インタビューの通訳:クリハラマサミ氏
記事翻訳:無限遠点



原発「コントロール下になど、なにもない」

日本のジャーナリストの暴露で、ドイツの原発批判者が恐れていたことが確実となった。フクシマをめぐる状況は、日本の政府官庁が認めているのよりずっと劇的だ。

日本政府は、フクシマに関する情報をどうも出し渋っている。ナガイジュンコ氏は何か月も前からこのような印象を持ってきた。それで彼女はインターネットで、日本語の情報サービスを始めた。ドイツに住み始め長いこの78歳の女性が今夜ベルリンで聞き知ったことはしかし、想像以上だった。「こんなにひどいとは知りませんでした、そんなに情報が出されていないということは、本当にショックです」。

いくつものNGOのグループの協力と、プロテスタント教会の招きで、日本全国で著名度の高い、かつてニュースキャスターも務めた上杉隆氏がドイツを訪れ、日本政府官庁が原子力事故とその影響をどう扱っているか、報告している。上杉氏は中でも、フクシマでの放射能測定値が不正操作されていることを取り上げた。「表面の土をまず掘り返して両側に積み上げ、それから測定地点を何度も水で洗い流します。」それからガイガーカウンターのスイッチを入れるのだそうだ。そうすれば計測器はほとんどなんの数値も出しはしない。

不正な情報が優勢

避難区域の一部をまた解放するという日本政府の決定を、物理学者のセバスティアン・プフルグバイル氏は現実の放射線量の高さから、無責任だと見ている。「これは軽率としか言いようがない。そういう人たちは、まずチェルノブイリの立ち入り禁止区域に入って、そこが25年後どうなっているか見て来るべきです」とドイツの放射線防護協会の会長であるプフルグバイル氏は批判する。ウクライナでも汚染された地域を洗浄し、表面の土を削り取ろうとした。しかしこのような企ては不可能だとわかり、やがて中止となった。

フクシマでは津波が残した瓦礫だけでも、大問題だ。「大変な量なのです。これを今、全国にばらまいて各県でそれを焼却させようとしていますが、それはまた、ゴミから放射能を取り出すことになってしまうので、危険です」。プフルグバイル氏の目にはことに、愛国心に訴えてこの事故を乗り切ろうとする日本政府の戦略があまりに馬鹿げて映る。彼はつい最近訪れた日本から、美人コンテストの写真を持ち帰った。農林水産省の主催で、フクシマ産の食品だけを食べる女子学生が表彰されたという。

原子力ロビーの団結

上杉隆氏は、政治、原子力産業、マスコミのしぶとい癒着を訴えている。ポストを失った政治家は、東電から別の役職を与えられる。東電は日本で3つの原子力発電所を抱えているが、そのうちの1つが今や停止となった福島第一だ。このシステムは互いにいい顔をしあい、依存しあっていて、見抜くのが極めて難しい、と彼は語る。公共の機関による原子炉事故の過小評価、情報隠蔽などを批判する者は、日本のエリートが作り上げたシステムからただちに締め出しを食う、というのだ(詳しくは上杉氏とのインタビューを参照)。

しかし日本の政府だけではなく、国際機関であるIAEAやWHOなども放射能被曝による健康被害を過小評価している。チェルノブイリの原子力発電所の事故では、公にはたった50人しか死亡したことになっていない。「私たちはしかし、まったく別の見解と経験を持っています」と語るのはIPPNW(核戦争防止国際医師会議)のスポークスマン、アンゲリカ・ヴィルメン氏だ。「流産、奇形児出産、新生児における遺伝子疾患、そして大量のガン発生率がありました」。全体としてどれだけ影響があったかということは、25年経った今やっとその概要が掴め始めたのが現状で、その影響で苦しんでいる人、あるいはすでにそれが原因で亡くなった人たちは、100万人に上るのではないか、と彼女は話す。

大飯原発の反対運動

日本では現在、合計で54基ある原発のうち、15基が事故が原因で停止されている。その他は、今、1基を除いて点検中だ。操業中の原発がまもなく1基もなくなる、という原発反対者の希望はしかし、どうやら満たされないことになりそうだ。日本政府は、大飯原発を再稼動させることを決定した。ただし、福井県知事の了解を得なければいけない、と上杉隆氏が説明してくれた。

ベルリンでの講演中も、彼はツイッターで更に情報を入手した。この政府の決定に反対して、東京の首相官邸前などにおよそ6万人が集まったという。「しかし日本のマスメディアはこのような抗議運動を報道しないのです」と上杉氏は嘆く。

それでも反対運動は高まっている、と彼は語る。それはIPPNWのスポークスマンも裏書している。「そのことは、かなり保守的カラーの強い日本のセクションでも感じられます」と。日本では、これまで核兵器の健康被害についてだけで、平和利用の核の影響についてはタッチしようとしなかったが、それが変わってきたという。

もっとひどくなる可能性

フクシマで大気に放出された大量の放射性物質はこれまで、その80%が海に落ち、人の住む場所に直接降り注ぎはしなかった。しかし、それはこれから悪化するかもしれない。ドイツの専門家プフルグバイル氏が心配するのは、海に流出される、放射能で汚染された大量の水だけではない。

4号機の原子炉がどうなっていくかが今後の鍵である。「1500もの使い済み燃料棒が保存され、冷却し続けなければいけない冷却プールがあります」。冷却が停止することになれば、これらの燃料棒が自己破壊を起こすだろう、と彼は言う。「そんなことになれば巨大な量の放射能が放出します。日本の専門家、つまり公の機関が、半径250キロまでの地域を避難しなければいけないことになるという予測を立てました。そうなれば東京も含まれます」。900万人もの住民を抱える日本の首都の避難など、まったく解決しようのない問題だ、と考えるのは放射線防護の専門家プフルグバイル氏だけではない。

ナガイジュンコ氏と彼女と一緒に仕事をする5人の日本女性はまたまもなくインターネットで情報を流すことになるだろう。この夜、彼女たちが得た情報は、なるべく早く、日本語のウェブサイトで公開するつもりだ。

ウルリケ・マスト=キルシュニング
編集:ミリアム・ゲールケ
記事翻訳:無限遠点

1 コメント:

  1. 今の日本では上杉隆が酷い嘘つきであることがバレつつありますが。
    http://togetter.com/t/%E4%B8%8A%E6%9D%89%E9%9A%86

    3号機の爆発の写真が許可されていない? じゃあこれは何?
    http://www.asahi.com/photonews/gallery/fukushimagenpatsu/

    主催者発表であっても6万人も集まればいくら日本でもマスコミの記事になりますよ。
    http://www.asahi.com/national/update/0919/TKY201109190278.html

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