北朝鮮が発射するミサイルもしくは人工衛星を発射した場合、一段目のブースターは発射地点の舞水端発射場から650km(秋田沖130km)、二段目は3,600km(銚子沖2,500キロ)に落下すると、北朝鮮は通告してきました。米国の保守系シンクタンクとして知られるヘリテージ財団は今年3月にワシントンで記者会見を開き、ミサイルならば米本土に到着する時間が33分とみなし、この間に迎撃に備えなくてはならないと警告しています。
迎撃については、米太平洋司令官が「オバマ大統領の許可があれば、いつでも迎撃の準備が出来ている」と語っていました。2月26日、ハワイ真珠湾で米国のABC放送とのインタビューに応じたカーチン司令官は「もし北朝鮮がミサイルを発射すれば、米軍は駆逐艦、イージス巡洋艦、レーザー、ミサイル防御システム、地上発射迎撃ミサイルなど5つのシステムで対応する」と語っていました。
テポドン2号が発射されれば、米国は①高度30~40kmの上昇段階ではボーイング航空機に搭載したレーザー(ABL)で打ち落とす②大気圏を突破する高度100kmの中間段階ではイージス艦隊に装着された迎撃ミサイルSM―3(射程距離3百km)で迎撃する。仮に失敗した場合は、③地上からのパトリオット(PAC3)(射程距離15km)で迎撃することになっています。パトリオットは目標物に一定距離まで近づくと弾頭に装着された近接電波送信管が作動し、目標物を破壊します。また、大気圏外から進入する長距離ミサイルには地上発射型中間段階防御ミサイル(GMD=射程距離2,500km)で打ち落とす作戦のようです。
パトリック・オライル国防省ミサイル防御局長は先月(2月25日)下院軍事委員会の戦略軍縮委員会が主幹するミサイル防御体制(MD)聴聞会に出席し、「制限的で、初歩的であるが、北朝鮮がミサイルを発射した場合、アラスカで応戦するシナリオを基に3度迎撃実験を行ない、成功した」と証言していました。
米国は2004、2005年と二度続けて失敗した後、2006年9月に仮想の敵ミサイルを大気圏外で迎撃することに初めて成功しました。翌年の10月にもアラスカで南太平洋に発射された標的のミサイルを打ち落とすことに成功しました。また同年11月にはイージス艦級巡洋艦から迎撃ミサイルを発射し、標的ミサイルを2基同時に打ち落としたこともあります。さらに1か月後の12月にはF-16戦闘機からの空対空ミサイルによる大陸弾道弾ミサイルの迎撃実験にも成功しています。
オライル局長によると、米国は相当数のミサイルを保有しており、これらを同時に発射すれば、迎撃の可能性はそれだけ高くなると語っていましたが、ミサイル1基に対して5基の迎撃ミサイルを同時発射するようです。アラスカ基地には100基の戦略迎撃ミサイルが配置されてあります。
しかし、チャールズ・マッキャリー国防省作戦実験評価局長はミサイル防御体制(MD)前出の聴聞会での書面回答の中で短距離や中距離ミサイルを対象にしたイージス艦と最終段階のTHAAD迎撃実験では目標物を探知、追跡迎撃するうえで「能力」を見せたとしながらも、テポドン2号のような大陸弾道ミサイル(ICBM)を対象とした「地上発射型中間段階防御(GMD)迎撃にはまだ時間がかかると述べていました。
米国はレーガン政権の1980年代からMD計画を続けてきました。これまでに1千億ドルという莫大な予算をつぎ込んできました。
一方、北朝鮮がミサイルあるいは人工衛星にどれだけの予算をつぎ込んできたかは不明ですが、韓国航空宇宙研究院によると、発射推進体(ロケット)開発だけに500億円かかります。これに衛星制作費が約13億円程度ですが、宇宙センターの建設費に300億円の費用が必要です。
打ち落とされれば、北朝鮮が、逆に迎撃に失敗すれば、米国が大損します。