社説:住民訴訟つぶし 議会に自重を求めたい
毎日新聞 2012年04月21日 02時30分
裁判で地方自治体首長による公金支出が違法とされた後、議会が首長への賠償請求を放棄する議決をするのは許されるのか。
その是非が争われた住民訴訟の上告審判決があった。最高裁は5件中4件を差し戻した。
最高裁は「議決は議会の裁量権に基本的に委ねられている」との考えを示した。一方で、「裁量権の範囲の逸脱や乱用が認められれば、議決は違法で無効」とも述べた。議会が無批判に違法な支出に目をつぶる議決をするのは許されない。そう警鐘を鳴らしたと受け止めるべきだ。
争われたのは、神戸市と大阪府大東市の公金支出をめぐる訴訟だ。
神戸市の補助金をめぐる住民訴訟の経緯はこうだ。
市が約20の外郭団体に派遣した市職員の給与に補助金を支出した。市民がその違法性を訴え、市長に約79億円を返還させるよう市を相手に訴えた。「市は職員を外郭団体に天下りさせ、補助金で高給を維持している」という主張だった。
神戸地裁は08年、市長と外郭団体に48億円を請求するよう市に命じた。ところが、控訴審に入った09年、市は「市長個人や団体が支払える金額ではない」として、請求権放棄を議会に提案し、可決されたのだ。
同年11月の大阪高裁判決は「議決は市の違法行為を放置するに等しい。住民訴訟制度を無にする」と厳しく指摘し、議決を認めず、請求すべき額も55億円に増やした。