秋田県内のクマ牧場の飼養状況等に
関する質問書に対する秋田県の回答

　秋田県の八幡平クマ牧場と阿仁クマ牧場で飼育されているクマの飼養状況等に関して、ALIVEが送付した質問書に対する秋田県からの回答が寄せられました。

秋田県内のクマ牧場の飼養状況等に関する
公開質問書について（回答）

生衛−８７６
平成２３年１２月１日

NPO法人地球生物会議　御中

秋田県生活環境部生活衛生課長

１．クマの給餌について

【八幡平熊牧場】
・病院給食の残食とリンゴ等を１日おきに餌場で与えている。1頭当たり残食１０kg、リンゴ２kgを給餌している。（開設当初から継続）
・リンゴが入手できない期間は、野菜を同量与えている。

【阿仁熊牧場】
・主に給餌しているのは牛用の圧片（ドウモロコシ）飼料でカロリー計算等に基づき1頭当たり３kg／日として、１日１回２５０kg（８３頭分）を放牧場に散布し給餌している。そのほか、おやつ及び誘導用餌としてオリエンタル熊用ペレットを与えている。

２．クマの飼養環境について

【八幡平熊牧場】
・開場期間（５月から１１初旬）は１日１回、高圧水洗を行っている。閉場期間は１日おきに水洗を行っている。消毒は塩化ベンザルコニウム製剤を使用し、月に1回行っている。

【阿仁熊牧場】
・開場期間は1日４回（午前２回、午後２回）の高圧水洗。閉場期間（通常の冬眠中）は１日２回の水洗を行っている。消毒は冬眠期間中に塩素系消毒薬をジョウロで散布している。

３．クマの繁殖について

【八幡平熊牧場】
・現在の飼養主は繁殖制限の必要性は認識しているが、営業面から子熊の誕生を望んでおり、閉場期間に産室を作るなどの措置を行っているが、近親交配等による影響もあり、この２年間、新たな子熊の誕生はない。
・当該熊牧場は都市計画法に基づき昭和６２年７月に鹿角市の許可を受け開設され、開設当初の飼養頭数は北海道から導入した４８頭（ヒグマ４１頭、コディアック種７頭）であったが、繁殖制限等を行わなかったため、平成７年には１２０頭以上に増加した。
　 平成９年４月１日、秋田県動物の愛護及び管理に関する条例を施行し、危害防止の観点から特定動物を許可制として規制し、主として逸走防止等について指導してきた。その後、動物の愛護及び管理に関する法律の改正に伴い、同法に基づく規制並びに繁殖制限による適正飼養等を一貫して飼養者に対して指導してきた結果、年々自然減少し、平成２３年５月１１日時の調査では４０頭（ヒグマ２８頭、コディアック６頭、ツキノワグマ６頭）となっている。

【阿仁熊牧場】
・雌雄隔離による繁殖制限群と繁殖可能群とに分けて管理している。
・毎年、北海道大学等の協力を得、熊の高齢化等による自然減と選別した健康個体による計画繁殖により、個体数が増加しないよう調整している。

４．他自治体から導入されたツキノワグマについて

【八幡平熊牧場】
・平成２２年１０月２６日、愛知県豊田市からツキノワグマ３頭（母１頭、子２頭）を有害駆除目的で捕獲したが、豊田市には放獣する場所がなく、全国の動物園、熊牧場からも引き取り依頼を断られたため、八幡平熊牧場に受け入れ要請があった。
・飼養者は獣舎に余裕があることから、熊牧場は受け入れを受諾。
・同年１０月２８日、豊田市から当該施設に移送されたことから、動物管理センターが同年１０月２９日に移送された導入個体を確認した。
・受け入れた熊は、子熊は活発であったが、母熊は痩せていて、食欲もなかった。母熊は同年１２月末に獣舎内で死亡した。
・現在も当該施設には他自治体等から同様の引き取り依頼があるが県動物管理センターの指導に従い、すべて断っている。

※本事案については、県動物管理センターで１０月２７日に探知した情報に基づき、事実確認後、同センターから当該施設経営者に対し、安易な受け入れをしないよう指導した。
　同日、県生活衛生課から豊田市及び愛知県の鳥獣担当者に対して、当該熊牧場に関しては、長年の指導により頭数削減に取り組んできたこと、将来、経営難等による飼養管理上の問題が懸念されること等を説明し、同熊牧場に対する引き取り要請を撤回するよう申し入れたが、拒否された経緯がある。
　なお、有害駆除対象動物として捕獲した特定動物である熊を安易に生存させ、県外の展示動物施設に引き取りを求めるケースが増加していることから、動愛法を所管する部局として非常に危惧している旨、環境省動物愛護管理室担当官に情報提供した。

５．冬季閉園中のクマの飼養状況について

【八幡平熊牧場】
・事業を引き継ぐ以前から冬眠させていない。飼養者は、冬眠前に十分な体力を持たせるなどの措置をとっていないため、健全な冬眠はできないと考えている。
・冬季閉園中の給餌を含めた飼養管理については、閉園時と同様の飼養管理をしている。

【阿仁熊牧場】
・獣舎に４、５頭毎に入れ１週間絶食（駆虫効果を期待）させる。大量の排便を確認後、冬眠用のワラを入れ、冬眠させる。

６．クマの個体識別の実施について

【八幡平熊牧場】
・マイクロチップを装着できる獣医師が見つからないため、写真による識別を行っている。

【阿仁熊牧場】
・北海道大学の協力でマイクロチップによる個体識別を実施している。マイクロチップ導入以前の識別法である入れ墨、写真による組み合わせ識別も可能となっている。

７．特定動物飼養施設の立ち入り調査の実施について

【八幡平熊牧場】

【阿仁熊牧場】

８．行政の指導について

【八幡平熊牧場】
・八幡平熊牧場に対しては繁殖制限による飼養頭数の削減（適正管理可能な頭数の検討を含む）と野生保護個体の安易な導入を行わないことなどを指導している。
・平成２３年６月７日に実施した立入り調査時において、平成２５年１２月の許可更新時期に合わせ、今後の経営方針（施設の大規模修繕、廃止など）について検討するよう指導している。

以上

⇒　秋田県内のクマ牧場に関する質問書と回答

＜こちらもごらんください＞

●定山渓クマ牧場に関する要望書（2011.8）

●日本のクマ牧場の実態調査レポート

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